日立グループの中国ビジネスが本格的に立ち上がろうとしている。日立ソリューションズは2013年までに中国全土15か所の拠点を順次開設する予定で、日立システムズは広州と大連で地場有力SIerと組んだデータセンター(DC)の基盤整備を急ピッチで進める。ともに日立製作所本体と密接に連携しながら総合力を発揮。中国におけるITソリューション事業の拡大を推し進める。(安藤章司)
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大連創盛科技 謝銀茂 総経理 |
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日立ソリューションズ 中国法人 張若皓 総経理 |
日立製作所は、日立本体の両翼として、大規模システム構築(SI)を得意とする日立ソリューションズと、データセンター(DC)運営や保守サービスを強みとする日立システムズを従えるかたちで、中国におけるITソリューション事業を拡大する。日立ソリューションズは2011年10月1日、中国法人を約120人体制で立ち上げた。北京に本社を置き、年内をめどに上海と広州に営業拠点を開設。2年後までに「中国内陸部を含めた営業・サポートや開発センターなどおよそ15か所の拠点づくりを目指す」(日立ソリューションズ中国法人の張若皓総経理)と、攻めの姿勢を明確に示す。
日立システムズは、11年6月に中国地場有力SIerの広東華智科技と組んでDCをベースとしたBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を開始したのに続き、2012年11月をめどに同じく地場有力SIerの大連創盛科技と合弁で大型DCを大連に開設する予定だ。DC運営を強みとする日立システムズは、このノウハウを広東華智や大連創盛に提供し、広州や大連をBPOやクラウド/SaaSの中国における一大拠点にしていく。
大連のDCは、12年11月までの第一期工事でラック換算で約2000ラックを収容できる規模を誇る。DC用に確保するめどがついている4万m2余りの敷地をフルに使えば「将来的にラック換算で最大1万ラックを収容できる」(大連創盛科技の謝銀茂総経理)と、日本国内でも例の少ない巨大DC基地構想を描く。日立システムズは、地場有力SIerにDC運営ノウハウを提供するスキームを横展開していく考えを示しており、広州や大連以外の地域への進出も視野に入れる。また、地場SIerと提携することで、中国政府や自治体をはじめとする外資単独では難しい公共セクターの案件獲得にも力を入れる。
業種カットでみると、日立ソリューションズは製造や流通・サービス、日立システムズは中堅・中小企業や自治体に強いなどの特徴があることから、グループ会社独自の地場ビジネスも伸ばしていく。
日立グループの最大の強みは、社会インフラ分野である。重電部門をもつ日立グループは、この分野だけみればライバルのIBMやヒューレット・パッカードを大きくリードしている。これまではインフラのハードウェア部分には強くとも、より上流のコンサルティングやITソリューションの分野で思うように中国でビジネスを伸ばしてこれなかった。日立製作所は、信頼性の高いシステムに支えられたスマートコミュニティを前面に押し出しつつ、中国やASEAN、インドなどの成長国でのビジネス拡大を戦略的に推し進める。
中国では、スマートコミュニティプロジェクトとして、環境配慮型の天津エコシティ、知識集約型の広州ナレッジシティ、資源循環・低炭素都市づくりが大連で進められるなど、次世代の都市整備が活発に行われている。日立グループでは、日立本体を軸に、SIサービスの日立ソリューションズ、DCサービスの日立システムズを両翼と位置づけ、大型プロジェクトの受注増を狙う。日立製作所の2011年3月期の情報・通信システム事業の売上高は1兆6520億円で、うち海外売上高比率は24%。これを2015年には売上高2兆3000億円、海外売上高比率35%の目標を掲げており、これを実現するためには欧米市場だけでなく、中国・アジア成長国でのITソリューションビジネスの拡大が欠かせない。

日立ソリューションズと日立システムズの役割分担(イメージ)
表層深層
日立製作所は、国内情報サービスの成熟と、アジア成長国の情報サービス市場の拡大を受けて、グループ主要SIerの再編を急ピッチで進めてきた。今回、中国ITソリューション事業で、日立製作所の両翼を担う日立ソリューションズと日立システムズは、もともと4社あった主力SIerが2社に統合されて誕生した会社だ。両社の単純合算ベースの年商は6000億円規模となる。
リソースを集約したことで規模のメリットを得やすくなり、国内はもとより海外ビジネスを推進する体力も格段に強まった。日立ソリューションズ中国法人に対する日本側の期待は予想以上に大きく、「どのITソリューションから中国へ展開するのか、優先順位をつけるだけで手一杯なほど」と、中国法人に対する日本側のカウンターパートナーを務める丸岡祥二・日立ソリューションズ中国ビジネス推進部長はうれしい悲鳴をあげている。
日本側からは“これは中国で売れないか”“今度、あれを中文化したい”と商材拡充の話が矢継ぎ早に寄せられる。「直近の中国法人の社員数はまだ約120人に過ぎないが、ここに日本側の1万3000人余りの社員の思いが押し寄せている」(同)と、グローバル進出に物怖じするどころか、むしろ過熱気味でさえある。中国法人では向こう5年で500~600人に人員を増やすイメージを描いており、日本側のビジネスに対する情熱を中国側のスタッフに着実に伝えていければ、成長可能性はより一層、高まりそうだ。(安藤章司)