ネットワーク機器の販売に強いディストリビュータであるネットワールドの森田晶一社長が、2012年度(12年12月期)の重点施策について語った。そのなかで、シスコシステムズ(シスコ、平井康文社長)製品の販売に重点を置くことを明言。「今年はシスコの年にする!」と宣言し、シスコ関連製品の売り上げを、まずは早期に10億円に到達させる計画を示した。需要が高まりそうな製品を他社よりも先に揃え、先行メリットを獲得することに長けるネットワールドが、シスコに着目した理由を聞いた。(取材・文/木村剛士)
「VAD」こそが理想像
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| 森田晶一社長 |
ネットワールドは1990年設立のディストリビュータで、昨年度(2011年12月期)の売上高は464億円。シネックスインフォテック、ソフトバンクBB、ダイワボウ情報システム(DIS)に並ぶIT製品の大手卸販売会社だ。2000年に仮想化ソフトのヴイエムウェアと国内販売代理店契約を結ぶなど、伸びそうな分野の製品を他社に先んじて揃えるというように、マーチャンダイジングにすぐれている。昨年度の業績は、「仮想化関連製品の販売が引き続き好調で、注力分野のストレージ関連事業が前年に比べて50%伸びたことなどが貢献し、全体的に計画値を上回る実績を上げることができた」(森田社長)という。
一昨年に設立20周年の節目を迎えたネットワールド。森田社長が次の10年で成し遂げたいのは「VAD(Value Added Distributer)」になることだという。製品を右から左へ流すだけではなく、メーカーから調達した製品に自社オリジナルのサービスを加えて、リセラーに再販するビジネスモデルを構築しようとしている。短納期や低価格だけではない価値をリセラーに提供することによって、他のディストリビュータとの差異化を図るのが森田社長の考えだ。ネットワールドはとくに技術サポート力を付加価値と位置づけている。売れ筋商品を一歩先に見つけて技術を習得し、それをリセラーに提供する──。それがネットワールドが描くディストリビュータの姿である。
その同社が、2012年、拡販に最も力を入れようとしているのがシスコの製品だ。11年9月13日、ネットワールドは、「バリューアッド・ディストリビュータ」というシスコの販売代理店契約を結んだ。ネットワールドは、シスコのサーバー「Cisco Unified Computing System(Cisco UCS)」と、ネットワークスイッチ「Cisco Nexusファミリー」の国内販売を手がけることにした。
「次元が違う」シスコ製品
森田社長は、シスコと手を組んだ理由について「シスコに声をかけてもらい、半年かけてシスコの技術を学ばせてもらった。『このテクノロジーはすごい』と驚き、次元が違うと感じた。今後需要が高まるデータセンターのシステム構築案件で、かなりの競争力がある。高価なネットワークスイッチを売っているだけのメーカーだと思っていたが、そうじゃなかった(笑)」と話し、シスコの技術力を称賛する。
今回の契約で、ネットワールドは主に三つの用途でシスコ製品を提案していこうと考えている。一つはデータセンターだ。大規模なデータセンターを構築する際の主要ハードウェアとして、サーバーでは「Cisco UCS」、ネットワークスイッチでは「Cisco Nexusファミリー」を売り込む。二つ目はSMB(中堅・中小企業)。「Cisco UCS」は「他メーカーのサーバーに比べても遜色ない力がある」と森田社長はみており、3年ほど前から本格的に始めたサーバービジネスで、SMB向けサーバーとして「Cisco UCS」を前面に押し出す。
そして三つ目が、「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」。仮想デスクトップと呼ばれるソリューションを構成する製品として「Cisco UCS」を採用した。ネットワールドが2月7日に発表した「Atlantis ILIO Diskless VDI」というVDIソリューションを動作させるサーバーとして「Cisco UCSサーバー」を選んだのだ。「シスコ拡張メモリテクノロジー」というシスコの技術力で、クライアント/サーバー型システムのようなパフォーマンスを実現できることなどが決め手となった。
森田社長は、シスコ製品の販売目標について、「社内で存在感を示すためには、このくらいの規模を早期に達成しなければならない」としたうえで、売上高10億円の突破を掲げた。「この1~2年のビジネスではなく、10年先までの成長を考えた時に、シスコとのパートナーシップは重要だと考えている。今年は早期に立ち上げるために極めて大切な年。2012年はシスコの年にする」と、力強く語った。
新本社で検証環境を整備
ネットワールドは、2011年12月に本社を移転した。新オフィス受付の横には、ネットワールドが取り扱う製品の検証を行う新設備がある。リセラーなどがユーザーに製品を販売する前の事前準備を行うためのものだ。別フロアにあるセミナールームでは、この施設に設置したコンピュータを使ったハンズオン(実機)研修ができるようになっている。森田社長は、「同様の施設をもつメーカーは多いが、予約が埋まっていて数か月先にならないと利用できないと聞く。ディストリビュータとして検証施設を用意する価値は、リセラーにとってもユーザー企業・団体にとっても大きいはず」とみている。検証施設のなかには、すでにシスコ製品も設置済みで、森田社長自らが案内してくれた。

2011年12月に移転したネットワールドの本社

本社内にあるソリューション検証センターで、設置したばかりのシスコ製品とともに撮影に応じた森田社長