GMOインターネットグループのGMOクラウド(青山満社長)は、2014年4月にマイクロソフトのOS「Windows XP SP3」のサポートが終了するのを受けて、自社の仮想デスクトップサービス(DaaS=Desktop as a Service)である「IQcloud Desktop」の提供を強化する。「Windows XP」から今秋にも発売が予定されている「Windows 8」などのOSに移行を検討する顧客に対して、スマートデバイス利用環境を構築することを含めて提案する。1ユーザーあたり1日70円から利用できるという、競合他社と比べて安価な料金設定などを売りに、従業員25~100人程度の中小企業から大企業まで幅広い顧客に販売を展開する。すでに販売パートナー約20社が評価を終え、顧客への売り込みを本格化している。(取材・文/谷畑良胤)
実績のある米国企業と技術提携
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エンタープライズ営業本部 副本部長 下野昭一 氏 |
「IQcloud Desktop」は、米デスクトーン社と技術提携し、GMOクラウドが日本国内で販売している。昨年10月27日にサービスの提供を始めた。米国で利用者数が1万人以上という実績をもつ米デスクトーン社の仮想デスクトップ管理ツールを、GMOクラウドのクラウドサービスで構築した仮想基盤上で提供する。
パソコンのWindows XPがサポートを終了する一方で、スマートフォンとタブレット端末が企業に急速に普及している。これらスマートデバイスをセキュアな環境で使いたいというニーズが高まっている。GMOクラウドは、こうした顧客のデスクトップ利用環境の変化を受け、VPN閉域網などによる高い安全性が担保されたアクセスを可能にし、社外で社内と同等のデスクトップ環境を提供し、企業にクラウドサービスの利用を促す。
「IQcloud Desktop」は、万が一、モバイル端末を紛失したとしても、データを端末に保有せずにクラウド上に格納しているので、顧客情報や機密情報などが漏えいするリスクがない。また、社外で使うパソコンやスマートフォン、タブレット端末からでも会社のファイルサーバーや業務アプリケーション、社内ネットワークなどに安全性が確保されたうえでアクセスでき、出張先や在宅で社内と同様の仕事がこなせる。
GMOクラウドの下野昭一・エンタープライズ営業本部副本部長は、「新しいOSに乗り換えるよりもコストメリットが高く、導入までの期間が短い。ゼロからOSをセットアップしたり、新端末を導入せずに、古くなったパソコンをシンクライアント化することによって経費を削減することもできる。災害時など従業員が会社へ出勤できない状況下でも仕事がこなせるので、BCP(事業継続計画)対策にもなる」と、同社のクラウド環境である堅牢なIaaS上で提供する「IQcloud Desktop」を導入するメリットを訴求する。
DaaSで露払い、ビッグデータで稼ぐ
GMOクラウドは、Windows XP機の保有率が高いといわれる中小企業や、新規にパソコンを導入したり入れ替えを行う大学や専門学校のほか、顧客情報を大量に取り扱うコールセンターやオペレーションセンターに対して、機器の運用・管理の効率化を安価にできることをアピールする。
DaaSを利用する企業は、自社内にサーバーを構築するケースが多いが、同社の「IQcloud Desktop」は、すでにあるクラウド環境を利用するので、バックヤードのインフラ増強の必要がない。IaaS環境をもつ複数のデータセンター(DC)でDaaSが提供されている。同社が提供するサービスは、仮想デスクトップの1ユーザーあたりのスペックが、CPUが0.1コア、ストレージが25GB、メモリが1GBなどで、ネットワーク帯域が256kbps。価格は、101~500ユーザーの場合で1ユーザーあたり月額2100円と、競合のDCに比べて半額程度で利用できる。
昨年10月のサービス開始以来、再販を希望するSIer約20社が、「IQcloud Desktop」の評価を実施。今年4月から一斉にユーザー企業に向けて提案を開始した。GMOクラウドは「マイクロソフトの製品を販売するSIerと組んで、再販を強化する」(下野副本部長)と話す。
DCの多くは、クラウドサービス強化の手始めとしてDaaSの提供を本格化している。その理由について、下野副本部長は「利用可能なアプリケーションは当社のようなDCのクラウド環境で一括管理が可能となる。そうすると、企業の膨大なデータがDC側に集まる」というように、最終的には企業の基幹データを獲得し、次のサービス提供につなげる狙いがある。
DaaSでの実収入が少なくても、最終的にはユーザー企業全体のインフラを獲得することで、そこに集まるデータが増えることによる利用料金の増加や、ビッグデータの活用に関する新たなサービスで、利用のすそ野を広げることを狙いとしているのだ。