広島県廿日市市の沿岸部から宮島までのフェリーを運航するJR西日本宮島フェリー(上敬二社長)。同社は、近隣の住民と、厳島神社を訪れる観光客のためにフェリーを毎日運航し、多い日では往復で1万人を運ぶ。2011年10月、東芝ITサービス(石橋英次社長)が開発したデジタルサイネージソリューション「びじゅ衛門SaaS」を導入した。運航・観光情報を発信するために、デジタルサイネージをチケット販売場所の近くに設置。販社である中国システム機器(池原堅代表取締役)のサポートが、導入を決断させた。
JR西日本宮島フェリー
会社概要:JR西日本の宮島口駅(広島県廿日市市)から数分の距離の沿岸と、宮島を行き来するフェリーを運航する。フェリーを3隻もち、平日は53往復する。厳島神社の大鳥居に接近する航路が、観光客に人気だ。
システム提供会社:東芝ITサービス、中国システム機器
サービス名:「びじゅ衛門SaaS」
JR西日本宮島フェリーが運用するデジタルサイネージシステムの仕組み
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JR西日本宮島フェリー 松井隆行営業課長 |
駅や空港など、広島県内の複数の交通機関がデジタルサイネージを設置し始めたことで、JR西日本宮島フェリーは、デジタルサイネージに注目した。ただ、導入意欲はあったものの、「使ったことがないので、どのIT企業に問い合わせればいいのかがわからなかった」(松井隆行営業課長)。そこで、松井課長は新聞社の知人に相談。紹介されたのが、2~3年前にデジタルサイネージソリューションの販売を始めていて、映画館や交通機関などに納入実績がある中国システム機器(広島県福山市)だった。
今から1年ほど前、松井課長と今回のプロジェクトを担当した中国システム機器の崎谷政尚課長との間で、具体的な打ち合わせがスタート。松井課長が中国システム機器の提案を受け入れるか否かの判断基準にしたのが、「運用」と「費用」だった。「コンテンツの更新方法がわからないし、教わったとしても作業できる時間がない。更新やトラブルの対応など、運用業務を請け負ってもらえるかどうかが重要な選択基準だった」(松井課長)。また、「当然だが、なるべくコストを抑えたかった」とも言う。
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中国システム機器 崎谷政尚課長 |
崎谷課長は、要望を満たすためのソリューションとして、東芝ITサービスの「びじゅ衛門SaaS」に着目した。「びじゅ衛門SaaS」は、ディスプレイに表示する映像の配信設定を、ネットワークを通じて行うことができるデジタルサイネージシステムのSaaS版。システムは、東芝ITサービスが運用する東京のデータセンター(DC)にある。文字や音声、静止画、動画を組み合わせて表示でき、管理機能が充実していることが特徴。初期費用が不要で、月額料金制であることも強みとなる。中国システム機器は、これまでのデジタルサイネージソリューションでは、他のITベンダー製品を採用していた。だが、「『びじゅ衛門SaaS』に魅力を感じて、今回初めてJR西日本宮島フェリーの松井課長さんに提案した」(崎谷課長)。また、コストを抑える手段として、広告代理店と組んで広告主を募り、ディスプレイに広告を映して売り上げを得る仕組みもあわせて提案。デジタルサイネージの導入・運用にかかる費用を、広告事業で得た売り上げで賄おうと考えたわけだ。
これらの提案を評価し、松井課長は導入を決断した。運用の仕組みは、まず松井課長がコンテンツの更新を中国システム機器が愛媛県松山市に設置する運用センターの担当者に依頼。担当者は、ネットワークを通じて東芝ITサービスのDCにアクセスして更新設定を行い、ネットワークを経由してディスプレイにコンテンツを映す仕組みだ。
松井課長は、「最初は崎谷さんに何度も電話していたが、最近は電話番号を忘れるほど連絡していない(笑)。手間なく運営できているし、広告の収入で運用コストを賄えている。運航・観光情報を見てくれているお客様も多い」と、満足げである。(木村剛士)

フェリー乗り場に設置されたディスプレイ(右)。JR西日本宮島フェリーの船は、厳島神社の大鳥居に接近する航路が人気を呼んでいる
3つのpoint
・月額利用料金制で初期費用が軽減できる
・コンテンツの更新業務をアウトソーシングできる
・コンテンツに広告を入れ、売り上げを得られる仕組み