NECが、2012年度（13年3月期）第1四半期の連結業績を発表した。売上高は6315億円で前年同期比5.6％減だったが、営業損益＝79億円の赤字（前年同期は194億円の赤字）、経常損益＝122億円の赤字（296億円の赤字）、最終損益＝179億円の赤字（297億円の赤字）と、それぞれ赤字幅を100億円以上縮小した。

　2011年度を振り返ると、今年1月26日、NECはグループ会社を含めて1万人規模の人員を削減することを発表した。昨年度に売上高4兆円、営業利益率5％を達成するはずだったが、「今の実力では不可能」（遠藤信博社長）との判断で、売上3兆円規模のまま営業利益率5％を目指す方針に転換することにした。ただ、昨年度の通期連結業績は、売上高が3兆368億円（前年度比2.5％減）、営業利益が737億円（27.5％増）で、営業利益率については2.4％と、目標とする5％には程遠い結果だった。経常利益は、持分法による投資損失が減少したことなどで前年度に比べて420億円改善して421億円（前年度はトントン）。最終損益は、特別損失に事業構造改善費用を計上したことなどから1103億円の赤字（前年度は125億円の赤字）と、2期連続で赤字だった。

　今回の人員削減は、終了期限を今年度上期までとしている。川島勇取締役執行役員兼CFOは、「人員削減は今年9月末までには確実に終わらせる。第3四半期以降、構造改革の効果が数字に現れてくるはずだ」としている。そのため、期首に発表した通期の業績予想のままで、売上高3兆1500億円（前年度比3.7％増）、営業利益1000億円（35.6％増）。営業利益率は、3.2％と前年度よりも引き上げる。そのほか、経常利益が700億円（66.5％増）、最終損益が200億円の黒字（前年度は1103億円の赤字）を見込んでいる。

　ただ、気になる点がある。NECは、リーマン・ショックの影響で09年度にも2万人の人員削減を断行している。これによって、09年度は売上高3兆5831億円（前年度比15.0％減）と減収だったものの、営業損益が509億円の黒字（前年度は62億円の赤字）、経常損益が494億円の黒字（932億円の赤字）、最終損益が114億円の黒字（2966億円の赤字）と赤字から黒字に転換を図ることができた。この時の営業利益率は1.4％だった。

　人員削減を行い、売上高が下がっても利益率を高める──。“筋肉質”の会社を目指すという点では一理あるだろう。しかし、現段階で実施している人員削減は直近で2度目だ。人員削減を進めて、計画通りの業績を上げることができたかもしれないが、それだけでは物足りない。次の成長を視野に入れた構造改革を進めることに期待したい。業績を持ち直した段階で“武器”が何もなければ、また同じ轍を踏む危険性を孕んでいるからだ。（佐相彰彦）