日本のISV(ソフト開発ベンダー)が中国での販路開拓を着々と進めている。サイオステクノロジーは、サーバーベンダーとの連携を突破口として、多くの地場ディストリビュータやSIerを販売パートナーに取り込む動きをみせている。また、テンダは中国向けのソフト製品を中国国内で開発することで、現地のニーズをいち早く吸収する体制を強化中だ。両社は、それぞれアプローチの手法は異なるものの、中国市場に根を張るためにあの手この手を駆使して、販路開拓や商品づくりに取り組んでいる。
サイオス中国法人は本格的な立ち上げから3年目にして、宿願だった中国での販路形成に大きな成果を収めつつある。販売する商材がクラスタやバックアップ系のサーバー用ソフトなので、まずはサーバーベンダーに取り扱ってもらえるよう粘り強く交渉を続けてきた。この結果、2011年末までに中国ヒューレット・パッカード(HP)など複数のサーバーベンダーとの関係を構築。次いで、サーバーベンダーとつながりが深いディストリビュータやSIerの販売チャネルを次々と開拓し、今年7月には上海地区のパートナーの一社に技術サポートセンターを開設してもらうまでになった。
サーバーベンダー系チャネルを開拓してからのライセンスの売り上げは前年同期に比べておよそ2倍の勢いで伸びており、「向こう3年は年率2倍以上の勢いで売り上げを伸ばす」(サイオス中国法人の岩尾昌則董事長)と鼻息が荒い。チャネル開拓がかたちになるまでは厳しい状態が続き、サイオス日本本社の喜多伸夫社長は「中国法人のスタッフのアクション(活動ぶり)は、100点満点の95点をあげたいが、売り上げ面ではとても及第点とはいかず……」と気を揉んでいた。だが、チャネル開拓を境に収益力は格段に向上し、サイオスグループ全体の連結業績面においても存在感を急速に高めつつある。
一方、テンダはマニュアル自動作成とeラーニングのパッケージソフトの中国での販売を今年6月から本格的にスタート。eラーニングソフト製品群は、主に大連の拠点で開発していたこともあって、中国語版は比較的スムーズにできあがったものの「販路開拓は緒に就いたばかり」(テンダ中国法人の前田厚総経理)という状況だ。そこで他社とは異なるアプローチとして選んだのが、大連の開発拠点をフルに生かした中国市場への最適化戦略である。
例えば、中国で一般的に使われる業務ソフトのインターフェースに操作感を合わせたり、大連で盛んに行われている日本など中国国外向けの高度BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)サービスのマニュアルの制作やeラーニング用途向けに製品をつくり込んだりすることなどを検討している。「現地のニーズを貪欲に取り込んでいくことで、販売パートナーの協力を得やすくする」(前田総経理)ことを考えており、迅速なチャネル開拓を狙う。(安藤章司)