中国有力SIerの大連華信計算機技術(劉軍董事長)は、日立製作所の統合システム運用管理「JP1」を積極的に活用してビジネスを伸ばしている。「JP1」で情報セキュリティの管理レベルを高めるとともに、自らも100人余りのJP1認定資格技術者を育成。中国市場における「JP1」の販売やサポート業務にも取り組む。また、自社においてバッチ業務で繰り返し行われる業務を「JP1」で自動化し、ソフトウェア開発の品質向上に努めたり、2013年夏過ぎに大連で開設を予定している新データセンター(DC)の運用レベルの向上にも「JP1」を活用することも視野に入れる。(取材・文/安藤章司)
「JP1」を自ら導入して実証
大連華信計算機技術は、日本をはじめ欧米各国からのソフトウェア開発を請け負っている開発系SIerである。2011年のソフトウェアの輸出企業上位20社のうち第2位に入るなど、海外向けのソフトウェア開発に強い。顧客からの要望で大きな比重を占めるのは情報セキュリティだ。発注したソフトウェアを万が一にも外部に漏えいさせないことや、開発手法のノウハウの流出にも警戒感を高める顧客が大半を占める。そこで導入を決めたのが日立製作所の統合システム運用管理「JP1」である。
「JP1」といえば、DCなどの大規模システムの統合的な運用自動化ツールというイメージが強いが、実はIT資産を「守る」ためのITコンプライアンスの機能も充実している。大連華信では2005年1月に「JP1」のITコンプライアンスモジュールを自社に導入したところから本格的な活用がスタートした。
技術者集団である同社は、インターネットを通じて世界中から最先端のソフトウェア技術情報をダウンロードしたり、必要に応じてオープンソースソフト(OSS)などのソフトウェアやツールを自分のパソコンにインストールしたいという技術者の要望も多い。
大連華信の王悦総裁は、「こうしたエンジニアの向学心を損なうことなく、しかし一方でITコンプライアンスや情報セキュリティをしっかり管理していくために日立製作所の『JP1』をまずは活用することにした」と話す。
「JP1」のITコンプライアンス管理は、社内でどのようなクライアント端末が何台あるかといったIT資産情報を収集し、ぜい弱性をなくすためのパッチファイルのアップデートの有無やウイルス検査の確実な実行を促すといったセキュリティ対応から、ソフトウェアのライセンス管理などのIT資産管理に至るまで、ITコンプライアンスを確実に守っていくための機能が備わっている。大連華信は、ITコンプライアンスのレベルを高めることで、顧客からの信頼をより一段と高めることにつなげた。
大連華信計算機技術の王悦総裁(右)と、日立製作所中国法人の森保治日立信息系統(上海)軟件事業部総経理中国で「JP1」をさらに広める
大連華信の「JP1」活用の第二段階は、最も評価されている機能である「自動化」を自らの業務に適用することだ。社内システムの夜間バッチ処理(ジョブ)を計画的に動かすジョブスケジューリングや、効率のよいテスト・デバッグを行うことを検討。銀行・証券、運輸・流通、製造といったあらゆる業種の業務運用で、こうした統合システム運用管理の自動化はもはや必須になっており、大連華信のような情報サービス業においても業務の品質を高めるために「JP1」が生かされている。「当社の方針として、まずは自ら使ってみて、『JP1』の特性に精通する。その後、顧客向けの業務でも積極的に『JP1』を活用する」(王総裁)と話す。
自ら「JP1」のユーザーになることで「JP1」に関わる技術者を延べ300人ほどまでに増やしてきた大連華信は、「JP1」の正規資格認定技術者の育成にも取り組む。認定資格技術者はすでに100人を超えており、直近では中国地場市場への「JP1」の拡販や、大連・東北地区における技術者育成の拠点として機能し始めているのだ。
中国で「JP1」事業を担当する日立製作所中国法人の森保治・日立信息系統(上海)軟件事業部総経理は、「大連華信は堅実経営で有名な会社で、取り扱うソフトウェアをみても、まずは自ら使ってみて、ほんとうにいいものだけを販売している会社」だと評する。これに対して、大連華信の王総裁は「『JP1』を実際に使ってみた当社は、自信をもって顧客に勧められる。森さんとは中国で『JP1』のユーザーをさらに増やしていこうと、いつも話している」と、日立製作所と連携して「JP1」の普及促進に努めていく考えを示す。
クラウドコンピューティングの進展に伴い、大連華信では2013年夏過ぎをめどに「クラウドコンピューティングデータセンター」(仮称)を開設する準備を進めている。当面はラック換算で約400ラック相当の規模。これまでソフトウェア開発を中心に手がけてきた大連華信にとって、自らDCを運営するのは今回が初めて。
DCでは一般オフィスよりも数段上の情報セキュリティレベルが求められるだけでなく、クラウドシステムは24時間365日の万全な体制での運用が不可欠となる。こうした局面において、王総裁は「これまで培ってきた『JP1』のノウハウが生かせる」と自信を示し、クラウドコンピューティングデータセンターでの「JP1」の活用も視野に入れている。
【会社概要】
大連華信計算機技術は1996年、中国・大連市で創業。中国東北地区を代表する有力SIerの1社であり、日本をはじめとする海外向けソフトウェア開発に強い。直近の社員数は約5000人で、NECグループやNTTデータ、日立ソリューションズ、新日鉄ソリューションズ、米Microsoftなどベンダーからもマイナー出資を受けている。