情報サービス産業協会(JISA)は、海外進出を支援するビジネスマッチングに力を入れる。アジア市場で自社のソフトウェアやサービスを販売したい会員企業が増えていることに応えるもので、日系ベンダー同士や、進出先の国・地域でのビジネスパートナーとのマッチングを想定している。JISAは日本を代表する情報サービス業界団体として、これまで積極的に相手国・地域の業界団体や政府系機関との交流を推進してきたが、今後は具体的なビジネスに一段と踏み込んだ支援策を拡充する方針を明確にした。

JISA副会長
五十嵐隆・国際委員長 JISAは20年余りにわたって世界各国の業界団体と交流を深めてきた実績をもつ。近年では成長著しい東アジアやASEAN諸国とのパイプづくりに努めてきたものの、「日本のソフトウェアやサービスの輸出で大成功を収めた会社はほとんどない」(JISA副会長の五十嵐隆・国際委員長=富士通エフ・アイ・ピー相談役)という厳しい現実に直面している。そこで取り組むのが海外事業におけるビジネスマッチング支援だ。
国内では互いにライバル企業として激しく火花を散らす日系ベンダーも、「未開拓のままの海外市場でなら協業できる余地は大きい」(五十嵐国際委員長)と、日系ベンダー同士や進出先での地元有力ビジネスパートナーとのマッチングを支援していく。この第1ステップとして2012年度からJISA国際委員会グローバルビジネス部会Go Globalワーキンググループが中心となって「グローバル化支援サイト(http://www.jisa.or.jp/goglobal/)」を開設。会員企業の交流の場を提供するとともに、「来年度以降、コンテンツやマッチングの仕組みをより充実させていく」(JISAの伊藤整一・Go Globalワーキンググループ座長=網屋社長)という方針を示す。
支援拡充の背景には、アジア市場への進出意欲がかつてないほど高まっていることが挙げられる。Go Globalワーキンググループが2012年8月から9月にかけて、NTTデータや新日鉄住金ソリューションズ、日立ソリューションズなど参加企業31社に海外進出先に関するアンケート調査(有効回答数27社)を行ったところ、将来の進出検討先としてインドネシアやタイ、ミャンマーなどが上位になるなど、「現在の上位進出先である中国や米国、ベトナムよりも広域化が進む」(伊藤座長)という結果となった。
広域化が進むに従って、中小ベンダーのグローバル進出にかかる負担増加は避けられない。JISAはこれまで培った人脈やネットワークを会員企業に活用してもらうことで、海外進出を支援していく。アジア・オセアニアコンピュータ産業機構(ASOCIO)や中国ソフトウェア産業協会(CSIA)、台湾情報サービス産業協会(CISA)、インドソフトウェア・サービス産業協会(NASSCOM)、ASEAN各国の情報サービス業界など多くの団体や政府機関と良好で密接な信頼関係を築いてきたJISAは、「今後は、必要に応じて二国間でより具体的なビジネス発展に向けた作業部会や共同委員会も組織していきたい」(五十嵐国際委員長)とコメントし、連携をより深めたいとしている。
Go Globalワーキンググループ座長を努める伊藤・網屋社長自身、JISAの国際活動に参加したことがきっかけとなって2012年6月、台湾法人を設立。サーバーへのアクセスログ情報をベースに監査や資産管理などを行う情報セキュリティ主力商材「ALog」シリーズを台湾や中国に向けての販売につなげた。
伊藤座長は、「ビジネスパートナーとのつき合い方や、海外進出ならではの諸問題を経営者一人で悩むことはせず、JISAのなかでノウハウを共有していくことが成功への近道だ」と、海外ではグローバル進出の成功という共通の目標に向けて連携できるはずだとして、会員企業の海外事業の拡大支援を強化していく。(安藤章司)