その他
デルの株式非公開化 “再起動”する必要があった二つの理由
2013/02/28 21:03
週刊BCN 2013年02月25日vol.1470掲載
米デルが株式の非公開化に踏み切った。創業者であるマイケル・デル氏と、技術投資会社のシルバーレイクは、経営幹部が保有している株式を除くすべての発行済株式を、1株あたり13.65ドルの現金で買収。買収総額は244億ドル(およそ2兆2500億円)を見込んでいる。さらに、マイクロソフトも20億ドルを出資。2013年7月末までに買収を完了する予定だ。デル氏は同社普通株式の約14%を保有し、引き続き、会長兼CEOとして指揮をとる。
デルが非公開化に踏み切ったのは、デル流のスピード感をもった経営体質を取り戻す狙いがある。2007年に一度辞したCEOに復帰したデル氏は、ソリューションプロバイダへの転換を掲げ、矢継ぎ早に企業買収を仕掛けた。ペロー・システムズやイコールロジック、セキュアワークス、クエスト・ソフトウェアなどの大型買収を実行。その結果、サービス事業の売上高構成比は15%にまで拡大した。デルの全世界約11万人の社員のうち約4万3000人がサービス分野に従事する体質へと生まれ変わったのだ。
だが、見た目の転換とは裏腹に、課題は山積している。ペロー・システムズのリソースをグローバル規模で生かし切れていないだけでなく、クラウドとモバイル、ビッグデータ、そして、垂直統合型製品といったトレンドの波を掴み切れていない。創業時から手がけるパソコンは、世界市場で首位から陥落し、3位に甘んじている状況。3%台の全社営業利益率は、デル氏が目指したソリューションプロバイダへの転換が遅れている証だ。
非公開化によって、デルは二つの手が打てることになる。一つは、株式市場への配慮や米証券取引委員会(SEC)への対応を抜きに迅速な経営判断ができる点だ。IT業界では、グーグルやアマゾンばかりか、マイクロソフトやインテルまでもがハードウェア事業に参入。「業際」がなくなっている。戦う相手が変わるなかで、デル流のスピード感を回復することは、復活に向けての必須条件となる。
二つ目には、目先の四半期業績よりも、中長期視点での投資や体質改善に取り組むことができる点だ。今のデルは、四半期利益の拡大を追いかけるフェーズにはない。パソコンからソリューションへの事業ポートフォリオの転換を名実ともに成し遂げ、企業価値を高めることを優先するフェーズにある。
非公開化に先立ち、M&A担当役員が辞任したのは、デル氏が先頭に立って、長期的視点で迅速にM&Aを進める宣言ともいえる。
2007年にCEOに復帰した際の単独インタビューで、デル氏は「デルをリブート(再起動)する必要があった」と復帰理由を語った。そしてそれを「デル2.0」と表現してみせた。非公開化は、デル氏にとって、再度のリブート。「デル3.0」の始まりなのかもしれない。(フリーランスジャーナリスト 大河原克行)
米デルが株式の非公開化に踏み切った。創業者であるマイケル・デル氏と、技術投資会社のシルバーレイクは、経営幹部が保有している株式を除くすべての発行済株式を、1株あたり13.65ドルの現金で買収。買収総額は244億ドル(およそ2兆2500億円)を見込んでいる。さらに、マイクロソフトも20億ドルを出資。2013年7月末までに買収を完了する予定だ。デル氏は同社普通株式の約14%を保有し、引き続き、会長兼CEOとして指揮をとる。
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