米ネットスイートは、5月14~16日の3日間、シリコンバレーの中心地サンノゼで、年次カンファレンス「SuiteWorld 2013」を開催した。ユーザー、パートナーなど過去最高の約5000人が参加し、成長を続ける同社の勢いを見せつけた。市場戦略についても重要な発表があり、ERP、CRM、eコマースを統合したクラウド型ビジネススイート「NetSuite」に、標準的な生産管理システムの機能を網羅した製造業向けのモジュールを新たに追加したこと、「NetSuite」と連携するクラウドアプリケーションの認証プログラム「Built for NetSuite」を発足させたことを明らかにした。ザック・ネルソンCEOに、その狙いや今後の戦略を聞いた。(取材・文/本多和幸)
周到な準備で生まれた製造業向けソリューション
──今年の年次カンファレンス「SuiteWorld 2013」では、「NetSuite」に製造業向けの生産管理機能などを実装したという発表が大きな注目を集めました。これまで自社で生産管理を提供することについては消極的な発言をされていましたが……。 ネルソン 製造業には、非常に複雑で高度なプロセスがあって、簡単な領域ではありませんでした。今回発表した製造業向けのソリューションは、いくつものステップを踏んだ数年間にわたる準備の成果です。
私たちはまず、簡単な組み立てや加工を行っている販売業者に注目して、彼らの業務をサポートする製品をつくりました。これを海外に製造をアウトソースする際に使えるソリューションに発展させ、最終的に完全な自社製造のメーカーにも使ってもらえるように仕上げました。生産管理やMRP(必要な物を必要なだけ必要な時に調達するための仕組み)などが充実したものになったという手応えがあります。
──CAD製品などを手がけるオートデスクと提携することも発表されました。同社が提供するクラウド型のライフサイクル管理製品「PLM360」と3D CAD「Fusion360」は、「Built for NetSuite」の認証も受けていますが、この提携の意義は? ネルソン 製造メーカーのITシステムに対するニーズは、企業ごとに異なる部分も多い。私たちの製品だけでは、そのすべてを賄うことはできません。しかし、「NetSuite」とオートデスクのアプリケーションなどを連携させることで、そのギャップを埋めて新しい価値をユーザーに提供することができます。「Built for NetSuite」の認証アプリケーションは、「NetSuite」とスムーズに安定して連携することはもちろん、ユーザーに大きな付加価値を与えるポテンシャルをもっています。
SAPはクラウドのニーズに応えていない
──基調講演では、SAPやオラクルといった既存の大手グローバルERPベンダーに対して成長率の低さを指摘するなど、挑発的ともいえるメッセージがありました。2層ERPでは補完関係にあるともいえる彼らに、将来、真正面から競合しようと考えていらっしゃるのでしょうか。 ネルソン ええ、彼らを駆逐できると思っています。冗談ですけどね(笑)。
ただ、SAPのクラウドに対するメッセージを聞いて、市場のニーズとあまりにもかけ離れたものだったので、驚いたことは事実です。彼らが提案する「クラウド」とは、インメモリデータベースのホスティングにしかすぎません。
一方でネットスイートは、本来SAPのようなリーディングカンパニーが発信しなければならない先進的なメッセージを伝えていると思っています。例えば、今回発表した製造業向けのソリューションもその一つで、必要な機能を統合してクラウドで提供することで、ユーザーをスピーディーかつ柔軟にサポートし、彼らのイノベーションを一つ上のレベルに押し上げることができるのです。
そう考えると、もしかしたらネットスイートが本当にERPの勢力図を塗り替えることになるかもしれません。ソフトウェアに求められるのは、ユーザーの課題をどう有効に解決するかということ。それが案件獲得のための最も重要なポイントです。ちなみに、データベースをつくってほしいと要望されたことは一度もありません。
ネットスイート社長 田村 元 氏に聞く日本市場の現状と戦略
●「スイート&クラウド」の強み 本来「NetSuite」は、スイート製品で、しかもクラウドサービスであることが強み。数年前は、CRMとERPが別々に売れることも多かったが、現在はスイート製品として採用するユーザーが圧倒的に多くなった。バックオフィスとフロントオフィスでデータを共有しなければ、真の意味で顧客情報の一元管理は実現しない。そうしたメリットがユーザーにも理解されてきている。
日本企業が海外展開する際に現地法人で採用するというケースはよくあるが、そこから本社に「逆輸入」される例も出てきた。現状では、海外展開に積極的な日本のパートナーは多くないので、こうした案件は直販が基本だ。
●製造業の海外拠点がターゲット 今回、新たに発表した製造業向けソリューションは、日本の国内工場がメインターゲットではない。海外に製造拠点を置いている、または置こうとしている日本企業を狙う。そうした企業からは、もともと「NetSuite」に対する引き合いも多い。
生産管理のシステムは、どれだけ細かくつくり込んでも、最終的にはユーザーごとに要望の違いが出てくる。しかしそれは国内特有の傾向であるともいえ、海外の現地法人ではそこまでこだわらない。ERP、CRM、eコマース、そして生産管理まで統合した機能をクラウドで提供する「NetSuite」には、本社からの管理がしやすいという大きなメリットもある。