上場企業の情報を集めるポータルサイト「kmonos.jp」を運営するディレクターズ(加藤慶代表取締役)は、シマンテックの「ECC対応版 SSLサーバ証明書」を導入している。サイト運営者の身元を明確に表示することに使用するツールだが、新しい暗号アルゴリズムである「ECC(楕円曲線暗号)」を採用して、サーバーへの負荷を軽減する。ディレクターズは、「ECC対応版 SSLサーバ証明書」の導入によって、ユーザーがピーク時にも快適に「kmonos.jp」にアクセスできるシステムを実現している。
ユーザー企業:ディレクターズ
上場企業ポータルサイト「kmonos.jp」を運営するほか、サーバーのマネージドホスティング事業などを手がけている。設立は2007年。従業員数は12人。東京・渋谷に本社を構える。
プロダクト提供会社:シマンテック
プロダクト名:「ECC対応版 SSLサーバ証明書」
【課題】ピーク時にサーバーがつながりにくい

ディレクターズ
加藤慶代表取締役 大学3年生の就職活動が解禁された昨年12月。企業研究のヒントを探そうと、上場企業についての情報を届けるポータルサイト「kmonos.jp」に多くの就活生が接続した。ところが、ピーク時にアクセスが集中しすぎて、サーバーがつながりにくい問題が発生してしまった。「kmonos.jp」を運営するディレクターズの加藤代表取締役は頭を抱えた。
ディレクターズは、サイトの信頼性を確保するために、運営者の身元を明確に表示するSSLサーバー証明書を採用している。しかし、全ページをSSL化することによって、CPUの使用率が上昇し、アクセス集中時にサーバーがつながりにくくなる原因となった。「サーバーを増強するか、それとも常時SSL化をやめるか」。ピーク時にも快適にサイトへのアクセスができるよう、加藤代表取締役は決断を迫られた。
スタートアップ企業のディレクターズは、ホスティング事業を主なビジネスとしている。「kmonos.jp」を運営するのは、収益を上げるというよりも、同社の認知度を高めるためだ。そう考えると、サーバー増強への投資は難しくなる。だが、SSL化も必須だ──。そんな状況にあって、加藤代表取締役が注目したのは、暗号アルゴリズム「ECC(楕円曲線暗号)」の活用である。
SSLサーバー証明書に採用されるECC技術は、ピーク時にも高いパフォーマンスを実現することが特徴だ。ディレクターズは、いち早くECCに対応し、今年2月に発売されたシマンテックの「ECC対応版 SSLサーバ証明書」の導入を検討して、およそ1か月をかけて、アクセス集中の問題が解決できることを検証したうえで、採用の決断を下した。

「kmonos.jp」で、業界地図ギャラリーを用意。ピーク時にも、これらのコンテンツに快適にアクセスできるようになった
【決断と成果】ECC活用で、CPU使用率を大幅に削減
強力な暗号化というのは、いかに暗号鍵を解析する手法をなくすかがポイントとなる。従来の方式では、長い暗号鍵を採用することによって、安全性を保っているが、暗号鍵が長くなればなるほどCPU処理能力が要求されるので、サーバーに負荷がかかることがネックになっている。それに対して、ECCは、複雑な暗号方式を使うことによって、鍵長を短くし、CPUへの負荷を軽減する。こうして、暗号化を強くするだけではなく、サーバーリソースの消費も少なくなるわけだ。
ディレクターズは「ECC対応版SSLサーバ証明書」を導入し、「kmonos.jp」運営に使うサーバーのCPU使用率を導入前と比べて大幅に削減することができたという。加藤代表取締役は、「ウェブサーバーなどの最新版のアプリケーションをインストールする必要があったので、導入作業が大変だった」と振り返るが、ピーク時の接続がよくなったという効果にほっとした表情をみせる。
「ECC対応版 SSLサーバ証明書」を提供するシマンテックにとって、ディレクターズは第一号の導入事例となる。SSL製品本部 SSLプロダクトマーケティング部の安達徹也上席部長は、「ディレクターズがSSLに対して熱心に取り組んでいることが導入につながった」と喜ぶ。ディレクターズを成功事例として、「ECC対応版 SSLサーバ証明書」の提案に注力していくという。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
サーバーリソースの消費が少ない
暗号化の強度が向上する
サーバー増強より導入コストが安い