東芝ソリューションは、ストレージ製品の間接販売に本腰を入れる。自社開発したストレージ製品を刷新したタイミングで販路の見直しを行う。従来の直販メインだった売り方を改め、ビジネスパートナー経由での販路拡大を目指す。ストレージ市場は成長しているとはいえ、世界的にはEMCや日立製作所、NetAppなどストレージに強いベンダーが存在し、「すでにでき上がった市場」でもある。東芝ソリューションは自前のフラッシュメモリや制御システムをテコにシェア拡大を狙う。

谷川 均 参事 東芝グループの強みは、ストレージのキーデバイスであるHDD(ハードディスクドライブ)とSSD(フラッシュドライブ)、フラッシュアレイに使う高速メモリ「NANDフラッシュ」の三つを、すべて自製している点にある。2012年8月には、米ヴァイオリン・メモリー社と協業してフラッシュアレイストレージを開発。ベンチマークテストでは、業務アプリケーションなどで一般的に使われるリレーショナル・データベース(RDB)のトランザクション処理で、HDDに比べて約23.3倍、SSDに比べて約3.6倍の超高速処理を実現した。
今年5月にはHDD、SSD、NANDを統合的に組み合わせた「Toshiba Total Storage Platform」を製品化。従来のストレージ製品を全面的に刷新している。ポイントはこれら3種類の特性の異なるストレージを階層化し、統合的に制御するコントローラーを2年かがりで開発した点にある。これによってきょう体をまたいで特性の異なるストレージを統合的に制御でき、情報システムのサイロ化(孤立化)を回避できる仕様にした。統合制御システムは「ストレージ業界で最も進んでいる」(谷川均・プラットフォームソリューション事業部企画部参事)と自負する。

平田雅一 部長 クラウド上で大量の仮想マシン(VM)を駆動させる場合、HDDのI/O(書き込みと読み出し)が足を引っ張ることが多く、これをCPUパワーで補ったり、VM数を減らしたりして回避している。フラッシュアレイをうまく使えばボトルネックをなくすことができるが、処理速度が速い分、値段も張る。このため、HDDやSSDを使った中速ストレージ、さらには低速だが大容量、低価格のHDDを使った「ニアライン」を組み合わせて使う必要がある。ニアラインとは、テープバックアップなどオフラインメディアに限りなく近い(ニア)オンライン型のストレージという意味だ。低価格の大容量機から超高速処理のフラッシュアレイまでトータルで揃えたうえで、これを統合的に制御するコントローラーを独自に開発したことで競争力を高めた。
東芝ソリューションは、これを機にこれまで直販メインだった売り方を、SIerをはじめとするビジネスパートナー経由での販路開拓に取り組む。ストレージ製品の売上目標は、国内市場を中心に向こう3年間累計で500億円。年平均では170億円弱であり、国内ストレージ市場規模の約1300億円を母数とすれば、単純計算でシェア平均10%以上となる。超高速のフラッシュアレイだけでは用途が限られるので、HDD/SDD採用の中速機、大容量・低価格のニアライン機を統合制御する製品名通りの「トータルストレージプラットフォーム」として売り出すことに加えて、「ビジネスパートナー経由での販路開拓を進める」(平田雅一・ストレージ&プロダクト事業部営業部長)ことで販売の拡大を目指す。
国内ストレージ市場の内訳をみると、日立製作所や富士通、NECなど国内系が約半分、EMCやNetAppなど海外系が約半分を占める。国内系はかつての東芝ソリューションのように、自社のシステム構築(SI)案件のなかに組み込むケースが多く、7割方が直販。海外系はSIerやディストリビュータ経由での販売がメインだ。東芝ソリューションでは自社SI案件に付帯する付加価値の一つとしてストレージを直販し続けると同時に、海外系ストレージベンダーのようにパートナー開拓にも取り組む。
しかし、国内を中心に年平均170億円規模を直販と間接販売で売ろうとすれば、当然、ストレージ市場のメインストリームを狙う必要がある。また、国内市場だけでは限界があるので、海外市場への本格的な進出も不可欠だ。ビジネスを進めていくうえで、国内については東芝ソリューションの直販SI部隊と競合する場面も出てくる可能性がある。直販主体のSIerである東芝ソリューションの企業文化を乗り越え、今後、どれだけビジネスパートナーに歩み寄り、パートナーの利益拡大に貢献できるかが問われることになる。(安藤章司)