スターティア(本郷秀之社長)は、ネットワーク構築からホスティング系サービスの提供、ウェブアプリケーションの開発・販売、OA機器販売まで、主に中小・中堅企業向けにオフィスのIT化全般を手がけている。売り上げはほぼすべての分野で成長を続けているが、とくに近年、大きな伸びをみせている事業の一つが、法人専用のオンラインストレージサービス「セキュアSAMBA」だ。しかし、ユーザーが急拡大するにつれて、サービスのインフラ整備で課題が出てきた。
【今回の事例内容】
<導入企業> スターティアネットワークインテグレーションやホスティングサービス、OA機器販売などを手がける東証1部上場企業。従業員は連結で約500人
<決断した人> ネットワークソリューション 営業部部長 平澤有一氏ネットワークのインテグレーション、ホスティングサービス、レンタルサーバーサービスなどの事業を展開するネットワークソリューション事業全体を統括する
<課題>オンラインストレージサービスの基盤として使っていたDCのストレージを拡張しなければならなかったが、既存の大手外資系ベンダー製品は高額すぎた
<対策>ストレージ仮想化ソフトを使って、汎用IAサーバーでストレージ装置を代替
<効果>容量あたりのインフラコストを大幅に削減
<今回の事例から学ぶポイント>顧客の事業を理解して提案をしてくれるベンダーと長くつき合うことで、思わぬ解決策を提示してもらえることがある
きょう体だけで数千万円は厳しい
スターティアのオンライン・ファイルストレージサービス「セキュアSAMBA」は、2008年にサービスインし、現在、年率20%以上で売り上げを伸ばしている。同社がクラウドサービスの中核に育てようと構想している戦略商材だ。
サービスを開始した当初は、500GBか1TBの二つのプランしかなく、各ユーザーに専用の物理サーバーを割り当てるホスティング形態のサービスだった。その後すぐに、もっと小容量で低額のプランを求める声が高まったが、容量が小さくなるほど、ユーザーごとに専用物理サーバーを用意するやり方では採算が取れなくなる。そこで2009年、サーバーを仮想化し、100GBの低価格プランを実現した。
やがて、低価格プランも含めた全体のユーザー数が拡大したため、大容量プランも専用サーバーでの提供をやめて、すべてのサービスインフラをクラウド環境に全面移行することを決断した。ただ、ユーザーの数は伸び続けていたので、それでもデータセンター(DC)のリソースがだんだんと心もとなくなってきたというのが実状だった。「セキュアSAMBA」を含むネットワークソリューション事業全体の営業を統括する平澤有一・ネットワークソリューション営業部部長は、「今後の需要増に備える必要もあって、一昨年頃からDCのストレージ拡張を検討するようになった」と振り返る。
しかしここで、大きな課題が立ちふさがった。従来、ストレージ製品は大手外資系ベンダーのものを使っていたが、高額なため、同じ製品を導入して拡張しようという判断はしづらかったのだ。「当社のユーザーは中小企業が中心ということもあって、いくら売り上げが伸びているサービスのインフラでも、きょう体だけで数千万円という投資は回収にも時間がかかり、リスクが高かった」と、平澤部長は説明する。
スモールスタートができて、容量あたりのコストを下げることができ、拡張性にもすぐれた製品をどう選定すべきか。結論はなかなか出なかった。
独自の検証に安心感
そんなとき、ホスティングサービスのサーバー納入者であるエーティーワークスから、ストレージ仮想化ソフトを導入して、汎用のIAサーバーをストレージ装置として使う手法を提案された。ここにひと筋の光明がみえた。他ベンダーの製品も俎上に乗せて、パフォーマンス、コストを総合して非常にシビアに比較・検討したが、容量あたりのコストを大幅に削減できることは大きな魅力だった。一度、エーティーワークスが提案したサーバーに「ダメ出し」をして、違う製品に入れ替えてもらい、ようやく納得のいく構成になったことから、採用を決めた。
ストレージ仮想化ソフトには、インテックの「EXAGE」を採用している。エーティーワークスが自社サーバーとのマッチングを独自に検証し、「分散ストレージのアプライアンスのようなかたちで提供してもらった」(平澤部長)という。スターティアは、エーティーワークス製のサーバーを2000年代半ばから採用しているが、同社について平澤部長は、「当社のビジネスを理解し、これまでもさまざまな事業向けに専用のアプライアンスなどを提案してきてくれた。『セキュアSAMBA』のストレージについても、コストの最適化に対する要望を汲んでくれたし、独自に検証をしてくれているので、非常に安心感があった」と評価する。
拡張したストレージは、昨年末に本格稼働を始めた。運用はエーティーワークスに委託しており、負荷に合わせてパフォーマンスを一時的に引き上げるなど、細かな対応によって安定した稼働が続いている。
「セキュアSAMBA」のユーザーが選択する契約プランは、現在、大容量化の傾向にある。インフラを柔軟に拡張していく体制を整えることは、スターティアにとって喫緊の課題だったが、IAサーバーをストレージとして使う方法が軌道に乗ったことで、解決のメドはひとまずついた。ただ、課題もあるという。「確かに容量あたりのコストは下がったが、パフォーマンスはまだまだ上げられる」と、平澤部長は見通しを話す。インテック、エーティーワークスと連携してチューニングを継続し、早い段階で性能をさらに向上させる予定だ。(本多和幸)