「JINS」ブランドで、デザイン性を重視しながら、価格を抑えたメガネの販売を手がけるジェイアイエヌ(田中仁社長)は、全社規模でデータ分析・活用に取り組むためのシステムを採用した。サイボウズのクラウド基盤「kintone」とクリックテック・ジャパンの分析ツール「QlikView」を連携させて、大量情報を簡単に分析することができるものだ。アシストが開発を行った。ジェイアイエヌは、このシステムを生かして、分析結果をアクションにつなげることによって、店舗経営の効率化を図る。
【今回の事例内容】
<導入企業> ジェイアイエヌメガネなどのアイウェア事業を展開。企画・生産・流通・販売を一貫して自社で行うことによって、コストを削減し、4900円(税別)からの低価格でメガネを販売する。設立は1988年
<決断した人> 業務革新室 兼
eコマースグループ
菰田泰生 マネジャー前職で業務コンサルティングに携わった経験を生かし、「ビジネス」の視点から、今回のシステムの導入を決めた
<課題>POSデータや現場情報など、データはたくさんもっていたが、報告業務が形式的で、十分に活用することができなかった
<対策>「kintone」によってデータ化のスピードを高めて、「QlikView」で広範囲の表示・活用を実現
<効果>データ分析に関しての社内マインドが「できない」から「やってみよう」に変わった
<今回の事例から学ぶポイント>データ分析は「アクションを起こす」ことがキモ。敷居を下げて、広範囲で取り組むことの大切さに気づいた
データ分析を方針に
フレーム、レンズ、ケースのメガネ一式を4900~9900円(税別)で提供する──。全国で約250店舗(2014年3月末)を展開するジェイアイエヌは、企画・生産・流通・販売を一貫して自社で行うことによって、コスト削減を徹底し、低価格でのメガネ販売を実現している。お客様の声を吸収し、開発に反映させることで、眼をパソコンやゲーム機のブルーライトから守るメガネ「JINS PC」などのヒット商品を生み出してきた。
効率のよい経営を目指し、かつ、情報を財産にして製品を開発するジェイアイエヌが目を向けたのは、データの体系的な分析と活用だ。同社はPOSデータや現場情報など、さまざまなデータを保有している。ペタバイト単位の 「ビッグデータ」というわけではないが、「スモールデータ」だからこそ、活用しやすく、経営改善につなげやすい。ジェイアイエヌはそう捉えて、データ分析を方針に掲げた。
しかし、適切なシステムがない……。店舗スタッフなど現場がデータをExcel表に入力して、メールで経営陣に送る。そのため、データの活用度が低く、データを本格的にビジネスに生かしきれていなかった。
要因を明確にして問題を把握
業務革新室に属し、eコマースグループのマネジャーを務める菰田泰生氏は、データ分析・活用にテコ入れをしたいという会社の方針を受けて、急ピッチでシステムの導入に動いた。店長や事業本部の社員を巻き込んで、広範囲でデータ分析できるソリューションはないものか──。「重要だが、活用できていないデータが日増しに増えてきた。これらを簡単に取り入れて、現場で生かすことができるツールがほしい」 と、菰田氏は考えた。
システム開発を手がけるアシストに提案を求めたところ、サイボウズが提供するクラウド基盤「kintone」とクリックテック・ジャパンの分析ツール「QlikView」を連携させるソリューションを提案してもらった。
アシストが提案するソリューションは、「kintone」で情報をシステムに取り込んで迅速にデータ化し、「QlikView」を駆使して、簡単な操作で自由に分析を行うという構成を採用している。例えば、ジェイアイエヌの売り上げが下がった場合は、それはメガネの在庫が不十分だったからなのか、それとも天候の影響で店舗に足を運ぶ人が減ったからなのかなどの要因を分析する。これによって、店舗に問題があるか、外部要因が関わっているかがわかり、高度の解析スキルがなくても、問題点を的確に把握することができる。
「kintone」上で業務を網羅
菰田氏は、「このシステムだと、データを使う人に簡単で迅速に届けることができる」と判断し、ビジネス現場での使いやすさを評価して、採用を決めた。今年3月にソリューションを導入し、4月に本格稼働にこぎ着けた。これにより、30人以上の社員から送られてきたExcel表の集計や結果分析にかかっていた手間が、「kintone」を採用することでゼロになった。さらに、「kintone」では、モバイル端末でのデータ入力が簡単なので、場所を問わずモバイル端末を使ってデータを入力することが可能になったという。
また、「QlikView」によって、「今までエリア別・月別にしか共有できていなかった資料を、全店や月別推移で閲覧することができるようになったので、全店でのトレンドと個店のトレンドの切り分けがやりやすくなった」といった現場の声がある。
菰田氏は今後、「『kintone』にデータを逆流させて、『kintone』上でより多くの業務を網羅できるように改善していきたい」と展望を語る。(ゼンフ ミシャ)