カナダが本社のカナディアン・ソーラーは、2001年の創業以来、太陽電池の専業メーカーとして、グローバルで太陽光発電システムを供給してきている。日本法人の設立は2009年。環境意識の高まりに加え、2012年7月に太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートしたこともあり、業績を順調に伸ばしてきている。一方で、情報共有や進捗管理などの現場で活用するITツールは、Excelファイルを使った簡易的な対応にとどまっており、同社の成長に追いついていなかった。
【今回の事例内容】
<導入企業> カナディアン・ソーラー・ジャパンカナダが本社のカナディアン・ソーラーは、2001年の創業以来、太陽電池の専業メーカーとして、太陽光発電システムを供給してきている
<決断した人>
営業本部マイクロソーラープラント部部長
中本大助 氏現場のマネージャーとしての視点から、アナログ管理の必要性を考慮するなど、現場感覚でバランスのとれたIT化を推進している
<課題>太陽光発電システムの導入に関する進捗管理にExcelを活用していたが、ファイルを開くのに5分以上かかるようになっていた
<対策>Excelファイルのような柔軟性と、低予算でシステム開発ができることを条件に選定し、サイボウズのクラウドサービス「kintone」を採用
<効果>すばやくシステムを構築でき、その後も使いながら改良を加えられることから、次々と発生する新たな要件に柔軟に対応できるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>業界特有の業務フローの管理では、システムの利用開始後に現場から要件が出てくることが多いため、柔軟性の高いクラウドサービスが向いている
Excelによる進捗管理が限界に
カナディアン・ソーラー・ジャパンは、太陽光発電に関連する製品を提供するだけでなく、受注から発電の開始まで、太陽光発電システムの導入をワンストップで提供している。このワンストップというのが、重要なポイントである。発電が無事にスタートするまでには、実にさまざまな工程があるからだ。
例えば、資源エネルギー庁や電力会社への申請業務、施工を担当するパートナー企業の選定と管理などがあり、受注から発電開始までの期間は3か月ほどを要する。しかも、一つの案件だけでも大変な管理作業となるのに、複数の案件が常に同時進行している。カナディアン・ソーラー・ジャパンは、その進捗をExcelファイルで管理していた。
「作業工程をExcelファイルの列に用意して、進捗管理をしていた。共有フォルダに入れて使っていたが、案件が増えるごとに重くなってきて、開くだけでも5分ほどかかるようになっていた。閉じるのにも時間がかかる。また、Excelファイルは入力チェックができないので、間違っていることもあった。このままでは仕事にならないという声が会議で上がり、システム化を進めることにした」と、カナディアン・ソーラー・ジャパンの中本大助・営業本部マイクロソーラープラント部部長は当時の状況を語る。
会議をしながらシステム構築
システム化を検討するにあたっては、いくつかの制約があった。まず、少ない費用でシステムが構築できること。作業工程などの変化に対して柔軟に対応できること。そして、社外からアクセスできること。この条件のなかでたどり着いたのが、サイボウズのアプリ作成プラットフォーム「kintone」だった。
「kintoneのホームページを見ると、簡単に業務アプリをつくることができると紹介されている。クラウドで、価格も安い。そこで、パートナーとしてウェブに掲載されていたジョイゾーにコンタクトを取った」(中本部長)。2013年の夏のことである。kintoneで多くの実績をもつジョイゾーの対応は的確だった。
「要件定義の会議を毎週実施したが、その席上でジョイゾーの担当者がシステムをつくり上げていく。本当に速かった」と、中本部長はその開発スピードに驚いた。
最初に基本部分を構築して使い始めたのは、11月。ジョイゾーに問い合わせてから、3か月後のことだった。その後は、毎週の会議で要件定義をしながら修正を加えていった。カナディアン・ソーラー・ジャパンの作業負荷は小さく、システム構築のために日々の仕事を止める必要はなかったという。
kintone上に構築した進捗管理システムは、シンプルで使いやすいことを追求し、主な作業工程ごとに画面を用意した。構築した画面は、合計で30を超える。進捗管理システムで扱う案件にはユニークコードを使用し、各画面で入力した情報を一元的に管理できるようにした。
社外との情報共有にも活用
構築した進捗管理システムでは、同社の施工を担うパートナー企業が利用する画面も用意し、情報共有が容易になった。
「以前は、パートナー企業が独自で管理していた。いつ施工が完了したのか、電力会社とのやり取りはどうだったのか。それらの情報は、電子メールや郵便などで送ってもらって、当社で入力して管理していた。顧客からの問い合わせに対し、手元に情報がない場合は、やりとりに丸2日かかることもあった」(中本部長)。それがリアルタイムで情報共有することで、顧客からの問い合わせに即答できるようになった。進捗管理システムでは、各工程の履歴も追いかけられるようにしており、スピーディな顧客対応に貢献している。
進捗管理システムは、現在もブラッシュアップ中。今後は同時進行で導入したグループウェアの「Cybozu Garoon」と連携して、海外の設計事務所とワークフロー機能を使った情報共有などを進める予定だ。(畔上文昭)