内田洋行は、7月21日付で大久保昇氏が新たに代表取締役社長に就任することを発表した。6年間社長を務めた柏原孝前社長は、代表取締役会長に就いた。大久保新社長は、専務執行役員の時代に公共関連事業の主軸である文教市場へのIT提案で大きな実績を上げ、内田洋行を文教市場のトップベンダーに押し上げた。今回の経営体制刷新は、文教分野を軸としたIT提案を成長のエンジンとする同社の方針を色濃く反映したものといえる。さらには、同じタイミングで東西のSI子会社も統合し、自社プロダクトの販売体制整備もひとまず完成。販路構築の面でも成長に向けた大きな一手を打った。(本多和幸)
文教を軸に情報システムに活路
●文教事業を確立した大久保社長 
内田洋行
大久保昇社長 社長交代の意図について柏原会長は、「内田洋行の三つの事業セグメント『公共』『オフィス』『情報』のいずれの分野でも、顧客ニーズに即して新しい技術、ノウハウをインテグレートする必要が出てきている。こうした状況に対応するためには、経営陣にも新しい血を入れたほうがいいと考えた」と説明する。
後継者として白羽の矢が立った大久保新社長は、柏原会長の4歳下の60歳。「一般的にみて若いとはいえないが、私よりは若い(笑)。情報系のビジネスを、公共市場、とくに文教分野で確立した人間。学校、教育委員会などと接触しながら内田洋行の地位を高めてくれた。堅実ながらも、新たなビジネスを積極的に事業化する推進力がある」(柏原会長)と評する。
大久保社長は、取締役専務執行役員だった昨年、政府が2020年までに児童生徒一人につき1台の情報端末を整備する方針を示したことを受け、「小中高校の教育向けITの稼働資産は5年以内に1兆円に成長する」との見方を示し、そのなかで4分の1のシェア獲得を目指す方針を掲げた。学習指導要領の改訂に大きな影響力をもつ筑波大学附属小学校と共同で、新たな授業スタイルの開発に着手するなど、具体的な取り組みもすでに進めている。教育制度を構築する側とITの利活用方策や教育カリキュラムを総合的に研究することは、将来、文教市場での同社の優位性を大きく高める可能性がある。6月5日から7日の3日間、東京で開かれた教育関係者向けセミナー・展示会「New Education Expo」でも最新の成果を披露しており、大久保社長(当時は取締役専務執行役員)は、「ITを活用した教室のつくり方を、実際にカリキュラムに落とし込むといったような成果が出てきている」と、自信をみせていた。
●会長はオフィス事業の立て直しへ 
内田洋行
柏原孝会長 直近の四半期決算である2014年7月期の第3四半期決算では、公共関連事業の売り上げが連結累計期間で前年同期比23.7%増の485億9800万円、オフィス関連事業が3.1%増の331億3700万円、情報関連事業が17.4%増の301億1200万円となった。「公共」では、教育向けITの大型案件を受注したほか、「情報」は、Windows XPのサポート終了や消費税率引き上げの特需により、基幹業務システム「スーパーカクテル DUO」などが好調で大きく伸びた。こうした追い風を踏まえ、通年の業績予想も、売上高を1360億円から1400億円に、営業利益を17億円から20億円に、経常利益は19億円から22億円に上方修正している。
今期の業績に現れているように、内田洋行自身も、成長のポテンシャルは「公共」「情報」「オフィス」の順に高いとみている。柏原会長も、「公共を含めた情報系が成長の主体となる。大久保社長には、成長分野での大きなステップアップを主導してもらいたい」と期待をかける。
一方で、柏原会長のミッションは何なのか。最も大きいウエートを占めるのは、成長率の低いオフィス関連事業のテコ入れだ。「オフィスの機能が時代とともに変わるなかで、社長就任以降、ワークスタイルの変革やエネルギーマネジメントの観点から、優位に立つソリューションはつくってきた。ただし、販売店網に弱体化している部分があるので、テコ入れが必要だ。直販だけでは成長できない」(柏原会長)と、課題を口にする。柏原会長は、販売代理店へのメッセージを正しく伝えるために、地道な販売代理店まわりの体制を整えることなどで、販路の立て直しに力を注ぐ意向だ。
こうして、成長率の高い事業は大久保社長が、成長率の低い事業のテコ入れを柏原会長が担当するという役割分担によって、まずは経常利益30億円達成を目指す。
●SI子会社を統合しリソースの集約も また、経営体制の刷新と時期を同じくして、SI子会社も統合した。内田洋行ITソリューションズと内田洋行ITソリューションズ西日本が、内田洋行ITソリューションズを存続会社とするかたちで合併した。柏原会長は、社長就任時から子会社の統合を積極的に進め、約40社あった子会社を現在では半減させた。「売上規模の割に子会社の数が多すぎた。組織を細切れにして元気が出る時代ではなく、とくにリーマン・ショック後は、継続して戦っていける組織にするために、グループ内の資産を集約して、統一化された方針の下に動く必要があった」(柏原会長)という。

内田洋行
ITソリューションズ
新家俊英社長 今回のSI子会社の合併は、こうした一連のグループ改革の仕上げともいえる。もともと全国に地域ごとに存在したSI子会社を、段階的に統合し、2011年には東西2社に集約した。新会社のトップに就任した新家俊英社長は、「地域のSI子会社はそれぞれ独自の社内文化をもっていて、業務の共通言語も違ったので苦労した。しかし、この3年間でその共通化がほぼ終わり、むしろそれぞれが蓄えていた独自のノウハウを共有して、これまで限られたエリアで発揮していた強みを全国に横展開する体制が整った」と、満を持したタイミングでの合併だったことを強調する。
内田洋行にとって、情報関連事業は、ソフトメーカーとしてライセンスの販売をどの程度伸ばすことができるのかが成長のカギになるので、パートナー網の拡大は最優先事項。SI子会社を1社に集約したことで、他のパートナーとの連携、棲み分けがしやすくなるという効果はありそうだ。新家社長も、グループ外のITベンダーとの連携に積極姿勢をみせており、「まずは受注の質を高めて不採算案件をなくすことが大事。パートナーと価格競争になるような事態も避けたい。プライム(元請け)を譲ってサポートを当社がやるなど、案件ごとに連携を模索するケースもあるだろう。また、内田洋行のソフトだけでなく、『Usolia』という細業種向けの独自パッケージもあるので、この販売パートナーとしての連携も強化していきたい」と、展望を話している。