イーストマン・コダックから昨年9月に独立したコダック アラリスは、新製品の開発を加速度的に進めていく方針を打ち出した。これを受け、日本法人であるコダック アラリス ジャパン(飯島栄三社長)は、今年上半期、ハードウェアだけで5種類の新製品を市場に投入し、下半期も継続的にラインアップを拡充している。日本市場での戦略を探った。(取材・文/本多和幸)
スキャンのスピードに自信

林武史氏 コダック アラリス ジャパンが、現在とくにフォーカスしているのが、分散型スキャナの市場だ。今年7月には、コンパクトで高速スキャンが可能な「KODAK SCANMATE i1150」と「KODAK SCANMATE i1180」を発売した。窓口業務のようなトランザクションベースの業務の生産性向上を実現するほか、外回りの営業担当者が客先で入手した資料やメモなどを各営業所から本社にスピーディに集約して、企業内のビッグデータ活用に役立てることもできるという。
ドキュメントイメージング事業本部の赤井誠・DI営業部シニアマーケティングアナリストは、「業務の現場で得た情報をできる限り迅速に共有し、次につなげるというのが今のトレンド。そこで分散型スキャナの需要が増えている。ただし、スキャンのスピードが非常に重要になる。大量の紙のデータをスキャンするのに長時間かかるようでは、大きな拠点に集中型の高性能なスキャナを配置し、そこに紙を集約して一括でスキャンすればいいということになりかねない。それでは現代のビジネスのスピードについていけない」と、高速スキャンできる分散型スキャナのニーズを説明する。
SCANMATEのi1150とi1180は、同じきょう体を採用した製品で、定価はi1150が4万9000円、i1180が9万5000円。コンパクトで静音性が高く、スキャンしたデータをEメールに自動添付したり、指定のフォルダへ自動保存したりするタスクを事前にファンクションとして設定し、ワンタッチで実行できる「スマートタッチ」機能も共通して備えている。文書のデータ化は、PDFだけでなく、マイクロソフトのWordやExcelにも対応する。また、ステープラーなどで留めた原稿を自動検知してスキャナを停止させるなど、スキャン時の紙づまりや原稿の破損を防止する「インテリジェント ドキュメント プロテクション」も大きな特徴の一つだ。

i1180のデモ
赤井誠
シニアマーケティングアナリスト スキャンのスピードは、i1150は25枚/分、i1180は40枚/分だが、i1150は最初の10ページのスキャン速度を60%上げる機能を備えている。これによって、同価格帯の競合製品と比べ、スキャンスピードは最大2倍になるという。赤井シニアマーケティングアナリストは、「当社の調査によると、窓口業務で必要なスキャンの枚数は、ほとんどのケースで10枚以下という結果が出ている」と、窓口業務に適した製品であることをアピールする。
パートナーの評判も上々
一方、i1180は、「Perfect Page」というイメージ処理技術をデバイス自体に組み込んでいる。そのため、PCリソースの負荷が軽減される。ドキュメントイメージング事業本部DIサービス部東京デジタル機器サービスグループの林武史氏は、「セキュリティを重視してシンクライアントの端末を導入する企業も増えているが、i1180は、シンクライアントのプアなCPUでも問題なく使える。その点では競合がいない製品」と、強みを説明する。さらに、ウェブベースのアプリケーションにスキャニング機能を追加するツールキット「EMC CAPTIVA Cloud Toolkit」のフルライセンスが許可されているデバイスであることから、ドライバをPCにインストールしなくても、ブラウザだけでスキャンできる。
両製品とも、「操作がしやすいので、パートナーの高い評価を得ている。全国に拠点をもつパートナーからコンスタントにオーダーが入っている」と赤井シニアマーケティングアナリストは手応えを語る。ディストリビュータとも連携して、リセラーを対象とするセミナーを開いているほか、製品デモの動画や営業のための資料をセールスキットとしてリセラーに配るなど、パートナーへの支援を強化している。また、i1180の販売に関しては、SIサービスを手がけるパートナーと重点的に協業して、「システム構築のなかで一つのコンポーネントとして提案してもらう」(赤井シニアマーケティングアナリスト)方針だという。
赤井シニアマーケティングアナリストは、「集中型のプロダクションスキャナは強いが、分散型スキャナはまだまだ弱いコダック アラリスが分散型スキャナの候補に必ず挙がるようになることが目標。コンペになれば勝つ自信がある」と、まずは地道に実績をつくり、ブランドの浸透に力を注ぐ意向だ。