データ分析サービスなどを手がけるブレインパッドは、主力サービスのレコメンデーションシステム「Rtoaster」を動かすデータセンター(DC)を慎重に見極めようとしていた。ブレインパッドは顧客の要望にそってIT機器や設備を、そのつど選定するスタンスを貫いている。その姿勢はDC設備についても同様で、「前がA社のDC設備だったからといって、次もA社とは限らない」(ブレインパッドの飯田晴久・技術戦略部システムインフラグループリーダー)というように、ベンダーフリーを徹底している。
【今回の事例内容】
<導入企業>ブレインパッドデータ分析サービスなどを手がけており、今年は設立10周年。レコメンデーションシステム「Rtoaster」は同社のヒット商材になっている
<決断した人>飯田晴久グループリーダー(左)と柴田剛氏
ベンダーに依存しない“ベンダーフリー”の冷徹な目でDC事業者を徹底比較し、ブレインパッドの顧客にとって最適なITインフラ運用基盤を手に入れる
<課題>「Rtoaster」で大口注文を獲得。この顧客専用の環境でサービスを提供するためのデータセンターの選定で課題を抱えていた
<対策>国内最大ポータル会社ヤフーグループのDC運用で実績のあるIDCフロンティアの郊外型DCの活用を決断する
<効果>巨大な設備規模がもたらすコストメリットや事業継続性の高さを享受するとともに、ITインフラの運用効率化を実現
<今回の事例から学ぶポイント>IT機器をフルマネジメントするIDCフロンティアのサービスによって、郊外型DCのメリットを最大限活用する
郊外型DCに専用環境を構築
消費者に商品やサービスをレコメンド(=おすすめ)するレコメンデーションシステムは、ネット通販業などでは必須機能である。ブレインパッドのレコメンデーションシステム「Rtoaster」は、ネット上の消費者の動きを収集するデータ量で国内最大級である。ユーザー企業内の基幹業務系システムに蓄積されている購買履歴などを反映するなどして、極めて精度の高いレコメンデーションを実現するもので、すでに100社余りのユーザーが利用している。
Rtoasterのサービス提供方式は、オンラインでユーザーに提供する共同利用方式と、特定顧客向けに専用環境を構築してサービスを提供する方式に分かれる。いずれも月額料金でサービスを提供するもので、ユーザーのハードウェア機材やソフトウェアライセンスを購入する負担を軽減するかたちになっている。とくに共同利用方式はコスト面でメリットが大きい。とはいえ、大口の大規模ユーザーのケースでみると、「共同利用方式ではパフォーマンス面で多少の不安が残る」(ブレインパッドの飯田グループリーダー)のも事実であった。そして、今回の流通サービス系の大手顧客からの大型受注を機に、DC設備の選定を見直すことを決断した。
顧客の規模を考えれば、専用環境を構築すべきではあるが、ITインフラのコストが大幅に上がってしまっては、顧客の予算要求を満たせない。そこで複数のDC事業者のなかから選び出したのがIDCフロンティアの郊外型DCだった。選定の決めてとなったのは、(1)国内最大ポータルのヤフーグループのDC専業会社であるという信頼感、(2)大規模な郊外型DCを所有している設備規模、(3)事業継続性の高さの三つ。もちろんコスト要件も満たしている。郊外型DCは都内の限られたスペースにつくられた都市型DCとは異なり、設備規模を大きくしやすい。IDCフロンティアの郊外型DCは福島と北九州にあり、その規模の大きさは国内有数。規模のメリットを存分に生かしたコストメリットが大きいだけでなく、余裕をもった設計なので事業継続性も高い。郊外型DCのメリットは明らかだった。
「DCには来ないでほしい」

IDCフロンティア
納富久智
担当課長 ブレインパッドのRtoaster事業では、これまで首都圏の都市型DCを使うことが多かったので、「郊外型DCの経験が乏しく、不安がなくはなかった」(ブレインパッドマーケティングプラットフォームグループの柴田剛氏)と話す。最終的に背中を押したのは、IDCフロンティアの「DCにはできるだけ来ないでほしい」という運用の姿勢だった。
これは、「DCに預かったIT機器は、IDCフロンティア側で運用するので、ユーザーはDCに足を運ぶ必要はない」(IDCフロンティアの納富久智・ビジネス開発本部マーケット開発部担当課長)という意味で、ブレインパッドにとってはハードウェアまわりの運用の手間を大幅に削減できることになる。今回の預け先(ハウジング先)は気軽に行ける距離ではないので、万が一の場合にIDCフロンティア側がしっかりフォローしてくれれば安心できる。それ以前に機材の寿命予測を的確に行い、前もって交換すれば、障害そのものも未然に防ぐことができる。
IDCフロンティアでは、ユーザー企業が求める「ITサービス指標」や「ビジネス目標」を、ユーザーとIDCフロンティアとで共有し、達成することで得られた利益を両者で分け合う「ビジネスプラットフォーム戦略」を積極的に推進。今回もこうした「フルマネジメントの姿勢を強く打ち出した」(納富担当課長)ことがブレインパッドの信頼につながった。
本稼働は2013年9月。最初のIT機器はブレインパッドから発送したが、2回目からはメーカーからIDCフロンティアのDCへ直送し、設置/運用まですべて任せている。ブレインパッドの担当者がDCへ足を運んだのは「資産管理の目録作成のために行った一度きり」(飯田グループリーダー)。郊外型DCのメリットを最大限に活用した事例である。(安藤章司)