NTTデータ(本間洋社長)は、量子コンピューターなど次世代アーキテクチャーの活用に向けたラボ・サービスを始めた。現行のコンピューターでは難しい超高速計算やシミュレーション演算を行うことで、ユーザー企業の業務革新を実現するものだ。ラボ・サービスでは実機を使った検証が可能になり、まずは富士通や日立製作所、NTT、カナダのディー・ウェイブ・システムズの4社の機種で検証できるようにした。

稲葉陽子
部長

 具体化されている関連技術は、量子アニーリングのほか、量子理論をベースとしたデジタル回路のアニーリングマシンなど複数あり、これらはまとめて便宜上「アニーリング方式」と呼ばれている。一方、「量子ゲート方式」と呼ばれるのは、汎用性が高いとされるものの、実用化にはもう一段の技術開発が必要な状況にある。IBMは量子ゲート方式での商用化を進めている。

 NTTデータでは、まずはアニーリング方式で実証実験を行い、量子ゲート方式の実用化の進展に合わせて「量子ゲート方式でも実証実験ができるようにしたい」(稲葉陽子・技術開発本部エボリューショナルITセンタ先進AI技術担当部長)としている。検証に使う各社のコンピューターは、クラウド方式で提供されているため、NTTデータでは購入しない。

 量子ゲート方式が汎用的な計算への応用が期待される一方、アニーリング方式は「組み合わせ最適化計算」を得意としており、その分野において超高速計算が可能になる。そこで、まずは流通・運送業の巡回ルート最適化計算、金融・保険会社のリスク計算、機械学習への応用、化合物の組み合わせ計算による創薬支援、道路・交通の経路最適化計算など、主に組み合わせ計算へのニーズが多い分野からアニーリング方式を活用していくことを視野に入れる。

 課題は計算能力を示す量子ビット数がまだ少ないこと。量子アニーリング方式は約2000量子ビット、量子ゲート方式はまだ数十量子ビット程度に過ぎない。流通・運送の巡回ルート最適化計算を例に挙げれば、「巡回先が30カ所ほどであれば、現時点でもある程度の成果を出せる見込み」(稲葉部長)と話す。実際には数百、数千の巡回先があることも想定され、本格的な実用化には、もう少し時間がかかるとみられる。

 しかし、ユーザー企業の関心は非常に高く、プレセールスの段階ですでに第一生命保険がラボ・サービスの利用意向を示している。数理最適化の計算に長けた人材に限りがあることから、向こう2年で、まずは20社程度の参加枠を設けるとともに、NTTデータの協業パートナーで数理最適化に強いインドのディープテックなどと連携して、「できる限り多くのユーザーが実証実験に参加できる環境整備を急ぐ」(稲葉部長)ことで、量子コンピューター関連ビジネスの早期拡大を目指す。(安藤章司)