社会環境や市場の変化への柔軟な対応、DXによる経営・事業変革に向けたデータの重要性、システム障害リスクへの対応などを目的に、企業では、これまでのITベンダーへの丸投げを見直し、自社によるシステム内製化の動きが進んでいる。そのような状況の中、注目を集めているのが、変化の激しいビジネス環境に柔軟で迅速に対応できるシステムインフラを実現する「Infrastruture as Code」である。「Infrastruture as Codeの有用性」について解説していきたい。
 
　「IPA DX人材白書2021」の「国内・事業会社のIT業務の内製化状況の従業員規模別（経年）」によると、従業員規模が大きい企業ほど、「企画・設計など上流の内製化を進めている」が高く、従業員規模が小さい企業ほど、「プログラミング工程を含めた全体工程の内製化を進めている」が高くなっている。

　また、21年度は20年度と比較し、300人以下と1001人以上の従業員規模の企業において「プログラミング工程を含めた全体工程の内製化を進めている」の割合が上がっていることが分かる。

　企画・設計など上流の内製化と、プログラミング工程を含めた全体工程の内製化の両方のニーズを満たすことができる方法論、それがInfrastruture as Code（IaC）である。

システム管理者の業務の実態

　企業におけるシステム管理者は、日々、絶え間なく流れてくる極めて重要な業務に必死に対応している。感染症による緊急事態宣言をはじめ社会環境変化による急激なシステム変更との格闘、リソース変更管理やトラブル対応、新システムのセットアップなどに追われている。内製化を見据えた、変革に向けた企画以前に、日々の業務を根本的に改善し効率化に向けた検討に使える時間すらほとんどないのが実態である。

　システム運用業務の簡素化を狙い、仮想化やクラウド、コンテナを導入し、設定ツールにより、プロビジョニングや設定・構成、保守の時間と労力の軽減を図るが、最新ツールやプラットフォームを導入しても、時間が確保できず、新ツールの導入によってかえってワークロードに負担がかかることが多い。

インフラ管理における課題

　クラウドと設定ツールの採用によって、インフラに変更を加えるための障壁は急激に下がる。しかし、インフラにおける一元的管理を担保させるように変更管理する方法は、ツールを使うだけで得られるわけではない。

　設定ツールをどう使うか、ツールを効果的に使うためのシステム、プロセス、ルールの確立は、人が考えなければならない。
 

Infrastruture as Codeによる効果

　IaCは、ソフトウェア開発における方法論をインフラ管理に生かすアプローチである。システムのプロビジョニングと設定・構成、その変更において、コードにより、一元的な管理ができ、しかも反復可能なルーチンが可能になる。変更は定義ファイルとなり、徹底的な検証を含む無人プロセスを通じてシステムに反映される。

　この考え方は、インフラをあたかもソフトウェアとデータのように扱うことが可能になるということである。コードで管理することにより、迅速で安全な運用が実現できる。また、変更対象のリソースや変更内容、変更タイミングなどを制御できるため、予期せぬミスや不正なオペレーションを抑制できる。

Infrastruture as Codeのススメ

　IaCの導入には、コードを格納するためのGitHubなどのバージョン管理システムが必要となる。IaCツールの選定にあたっては、GitHubライセンスの提供も含めた技術トレーニング、アドバイザリーサービスなど、IaCを活用する上での幅広いサポートを重視することをお勧めしたい。また、IaCツール提供ベンダーが独自の勉強会やウェビナーなどを実施している。IaC導入を検討するため、参加するのもいいかもしれない。