現在のプログラム内蔵方式によるコンピューターの始まりは、1940~50年代にかけて登場したものである。軍事用での弾道計算目的から始まり、現在では軍事・民間関係なくあらゆる分野で使用され、コンピューターの処理方式は大きく集中処理方式と分散処理方式に大別される。コンピューターの歴史は100年未満であり歴史的経緯が比較的確認しやすいため、歴史的な流れを踏まえて今後どのような処理方式が登場するか考えてみる。
当初のコンピューターは、電卓程度の機能で広い場所と莫大な電力が必要であった。そのため、複数台のコンピューターを用意することは経済的でなくコンピューター1台で計算処理を全て行う集中処理方式が主流であった。その後、60~70年代にかけて、徐々に計算性能が向上し汎用コンピューターに代表される高性能コンピューターが登場。民間でも汎用コンピューターを活用した業務処理を行うようになった。
その後、80年代ごろになるとパソコンが登場し、コンピューターの価格が低下しクライアントサーバーシステム方式に代表される分散処理方式の時代に入る。コンピューターの性能も飛躍的に向上し、純粋な計算以外の分野においても積極的に使用されるようになった。
2000年代に入るとインターネットが普及、この技術を利用して企業内での業務処理でもクライアントサーバーシステムが積極的に導入されるようになった。しかし、分散処理方式では、集中処理方式で考える必要がなかった、「どこでバックアップするか」「各業務処理はどこで行うのか」「データの整合性はどうするか」などの処理に関しての課題が発生し処理の煩雑化によるメンテナンス性の低下が見られるようになった。
集中処理方式・分散処理方式イメージ
分散処理方式の課題に対して、10年代に入り通信技術の発展やサーバーの性能が飛躍的に向上してきたことにより、インターネット上のサーバーで集中的に業務処理を行うようにするクラウドコンピューティングに関するサービスが登場した。それぞれのサーバーで専用の業務を分散して行うことにより分散処理を実現する方式である。
コンピューターとしては分散処理方式になるが、視点を変えるとインターネットというネットワーク空間を利用した集中処理方式と考えることができる。集中して処理を行うことにより、処理の実施個所を明確にし、メンテナンス性も向上させたサービスである。20年代になってもこの傾向は変わらず、今後、しばらくはインターネットを中心とした集中処理が主流となることが予想される。
過去の歴史から、コンピューター処理方式の主流は、集中と分散が交互にトレンドを繰り返していることが分かる。処理の考え方は、コンピューター単体からネットワークを含めたシステムとして考えるように発展してきた。現在はインターネット中心としたシステムの考えが主流だが、セキュリティに関する課題が顕著であり、この課題解決が望まれる状況である。
業務レベルによるネットワーク分散のイメージ
この課題のために過去の歴史から「分散」という処理方式による解決策を考えた場合、インターネットだけでなく複数のネットワークを活用した分散処理を行う方法が考えられる。インターネットに接続しなければ情報の盗難・漏洩や破壊といったセキュリティ問題もある程度解決可能である。今後は業務レベルによってネットワークの分散化も検討することが大切であり、ネットワークを活用したシステムに対応できる人材の需要もますます増加すると考えることができる。
■執筆者プロフィール

阿部伸治(アベ シンジ)
阿部伸治中小企業診断士事務所 代表 ITコーディネータ
1974年10月大阪生まれ。IT系専門学校卒業後、IT会社に就職。客先常駐でのソフトウェア開発で実務経験を積み、鉄道関連のメーカーに転職後、気象防災システムの開発責任者・メンバーとしてシステム開発の全工程に携わる。21年2月からITコンサルタントとして独立。