カスタマーサクセスマネージャー(CSM)は、ビジネスパートナーを含め、さまざまな人と連携をしながら、製品の利活用推進を行っている。前回に続き、データ関連製品統括として活動する四元菜つみに話を聞くと、ソフトウエア製品を扱うCSMとして、社内でさらに協業できるところや、他社のCSMと比べ、さらに改善できるところ、やらなくてはいけないところも見えてきた。
四元菜つみ(ヨツモト ナツミ)
ユーザー企業のIT子会社でOracle DBAと最先端技術のリサーチ業務を経験。IBM入社後、データベースを中心としてデータプラットフォームのプロダクトセールスを経験。マイクロソフトにてカスタマーサクセスの観点からお客様のクラウド利活用に対する提案と問題解決に従事ののち、IBMに再入社しIBMのデータ活用製品に関する製品統括を担当。
パートナー様や他職種との関係性
園田 前回、お客様への提案の際に、IBM自身のデータ活用のやり方を参考にできる部分があるとおっしゃっていたと思います。反面、ここは難しいなと思うところもあって。例えばお客様はSaaSやパッケージ製品のようなすぐ使えるものを求めていたりするのですよね。でも、我々は要素技術(製品)を組み合わせてカスタマイズしてお客様に提供しているので時間がかかります。それに、同じ要素技術を使った、似たようなアセットやデモを社内の別々の組織がそれぞれ一から作っていたりして非効率だと思ったりします。
四元 会社として大きい組織であることの弊害ですね。
園田 だから、お客様に「こうしましょう!」って言いたくても、「じゃあIBMさん何できるの?」って聞かれたときに、個々の製品や色々なアセットはあっても、それぞれが別個に作られていてまとまっていないので、「これだ!」というものがない場合があります。
四元 うまくパーツとパーツが合わない場合って、それこそビジネスパートナー様と一緒にビジネスさせていただいている領域なのですよね。もちろん、うちの会社には他社製品のスキルもあるデリバリー部隊があるし、いま会社の方向性としてはコンサルティング部隊との協業ももちろん力を入れつつ、パートナー様といかに一緒に共創できるか、っていうところかなと思います。
園田 私自身は普段の業務でパートナー様と接する機会はあまりないのですが、パートナー様経由で売れている方が数的には圧倒的に多いでしょうし、CSMも担当するお客様によってパートナー様との共創はキーとなる部分だと思います。パートナー様や、IBM内のコンサルティングメンバー、営業さん、アーキテクトなど、色々な方の力を借りてCSMの仕事が成り立っているなと思います。
CSMとプロダクトマーケティングの協業可能性
園田 四元さんには「CSM」ってどう見えていますか?
四元 やっぱり何事もそうですが、ホヤホヤのときにつまずくって心折れるのですよね。初めてうちの会社のツールやら製品を使って頂くときにつまずくのってお互い不幸だと思うので、CSMさんの活躍無しにビジネスの成功ってあり得ないよなって思います。
園田 なるほど。
四元 あと、ある程度慣れてきたタイミングでそれをどう広く使っていただくか、「こんな使い方あんな使い方ありますよ!」という話自体は、IBMの人間なら誰でもできるようになるのが理想です。ですが、実際にお客様のユースケースを目の当たりにしているCSMさんがそれを言うと言葉の威力が違うので、さらに利活用する領域でもCSMは重要だなと思います。
園田 私も「他社ではこういう使われ方をしている」ということを交えてお客様に話をすることはあります。
四元 一方で、カスタマージャーニーを描くっていうところは、CSMに限らずもっともっとレベルアップしていかなきゃいけないところなのかなと思います。妄想でもいいから夢を描く、っていうのですかね。
園田 それは本当に思うし、やり始めている部分でもあります。 特に、SaaSやパッケージ製品のCSMと違って、我々のようなSoftware製品のCSMは、単独の製品のみで高い価値を提供できることって少ないと思っていて。その場合、複数の製品を組み合わせて、いかに大きな絵を描けるかっていうのは重要な部分だと思っています。
四元 仮に1人では難しいなと思ったとしても、製品部門として、相談にのってくれる人は沢山いるし、グローバルにもそういった部門もあるし、なんかいい感じにいろんな人を巻き込んでできることって、もっとあるんじゃないのかなって最近すごく思っていて。私の最近のテーマでもあるのですが、うまくできた実例を作れたらいいなと思っています。
顧客向けには、IBM社員のみならずビジネスパートナーも「IBMid」があれば検証・デモ環境
“IBM Technology Zone”が使える
園田 Technology Showcaseという、デモを作ってお客様に見せるプラットフォームが去年から始まっていますけれど、あれはいいと思うのですよね。私も、CSMやプリセールス、デリバリーの組織横断で一つデモを作成して載せています。さらにもう一つ企画中です。ある程度まとまったら、四元さんにみてもらってもいいですか?
四元 もちろんです。
他社とIBMのCSMの違い
園田 四元さんは、他社でカスタマーサクセスとして活動していたとのことですが、そこと比べての違いは、何か感じるところはありますか?
四元 前にいた会社には、CSMとCSAMがいました。カスタマーサクセスという意味ではほぼ同じですが、IBMにはCSAMに相当する人はいるようでいないので、そこが違いますかね。その会社はカスタマーサクセスという観点では進んでいる会社だと思っていて、社員一人ひとりの意識も結構高いので、その点IBMは遅れているという印象です。
園田 なるほど……。
四元 あとは、コミュニティを作る仕組みをうまく醸成しているなという印象です。IBMでいうとDojoが近いかも知れないですが、もっと活発かもしれません。
園田 IBMは遅れている部分もあるということですが、特にどのあたりでそれを感じますか?
四元 言葉を選ばずにいうと、IBMにも、客様にずけずけ入り込んだり、役員レベルにもリーチしてワークショップしたり、ひとりでアポとってミーティングしてデプロイメントすすめる人がいても良いかなと思いますね。
園田 我々がそういうふうに動けているかというと、まだまだのところもあるかもしれません。CSMは比較的新しい職種な分、万が一失敗しても「すみません、最近アサインされたばかりなのでこれから頑張ります」とできるので、会社としてのダメージは少ないと思っています(笑)。なので、今まであまり手をつけられてないような、取れれば大きいのだけどちょっと海千山千だよね、みたいな領域を積極的にやるようにはしていますね。
色々と聞けて楽しかったです。
■執筆者プロフィール

園田緋侑子(ソノダ ヒユコ)
日本IBM テクノロジー事業本部カスマターサクセスマネージャー
2015年、日本IBMグループ会社に新卒で入社後、主にWatson製品(Watson Assistant/WEX/Watson Discovery)を使ったアプリの開発者や製品スペシャリストとして従事。EC業界の顧客を通じてアジャイルプロジェクトを経験し、提案の面白さに目覚め21年7月、日本IBMに出向。現在は保険業界における顧客のCSMとして活動。