テレプレゼンスやHDビデオなどを活用した会議システムが脚光を浴びつつある。市場環境の悪化に伴うコスト削減策の一環として、またワークスタイルの変革などの観点でユーザー企業が導入するケースが相次いでいる。ITベンダーにとって、どのようなビジネスチャンスがあるのだろうか。この特集では、ベンダーによるアプローチのポイントを、市場の動向やビジネスの切り口などから探っていく。
メーカーと市場の動き
メーカーは再編の様相へ
ユーザーの導入機運は高い
テレプレゼンス・ビデオ会議システム分野のメーカーを取り巻く環境が、再編の様相を呈している。ワールドワイドで買収が展開され、それに伴って国内市場で商流変革が起こりそうだ。また、製品面では中堅・中小企業(SMB)を対象とした製品が国内市場に登場。さらに、ユーザー企業の導入機運が高まっているという調査会社のレポートもある。販社にとっては、同分野で事業拡大が図れる可能性も秘めている。
シスコがタンバーグを買収
ライフサイズがSMB製品を投入 ビデオ会議システム関連で最近の話題は、ネットワーク関連業界の巨人である米シスコシステムズがノルウェー本社のタンバーグを買収する話がまとまったことだ。
シスコは、テレプレゼンスを中心にハイエンド製品を提供しているほか、ローエンド製品としてウェブ会議システムの「WebEx」を揃えている。しかし、テレプレゼンスは大企業向け、WebExはSOHO向けと両極端な製品である。その中間領域のSMBを掘り起こす手頃な製品をラインアップとして拡充する必要性に迫られていたのだ。買収は2010年前半に終了する予定。タンバーグがワールドワイドのビデオ会議システム市場で40%以上のシェアを獲得してトップシェアを築いているだけに、この買収は大きな再編劇を呼び起こすことになりそうだ。とくに日本では、シスコ製品を担ぐインテグレータが多い。「競合他社の動きをみながら、タンバーグ製品を販売しなければならなくなるだろう」と話すのは、シスコ製品を担ぐあるインテグレータの幹部。日本市場では、タンバーグの競合としてポリコムが挙げられるが、ビデオ会議システム分野の商流が変革する可能性を秘めている。
また、国内で最近のトピックとして注目すべきは、ライフサイズコミュニケーションズが「手のひらサイズ」のビデオ会議システムを投入したことだ。この「LifeSize PassPort」は、39万800円からと低価格に設定している。これまでは日立ハイテクノロジーズが国内総代理店として直販を中心に販売。日立テクノロジーズ経由の間接販売については、大企業をユーザー対象とするインテグレータを販社として確保していた。しかし、「今後は、SMBに強いインテグレータやディストリビュータともパートナーシップを組んでいきたい」(日立ハイテクノロジーズの今村秀行・ITソリューション営業本部ネットソリューション部長代理)考えを示す。
ユーザーの導入率は60%以上
不況知らずの商材として台頭 調査会社のIDC Japanによれば、IPプラットフォームをベースとしたIP会議システムやテレプレゼンスの国内市場は、2008年に前年比10.6%増の184億9600万円と堅調に推移した。景気が低迷するなか、この市場が堅調な成長を遂げているのは、出張旅費の削減や出張時間の節約など、経費削減や業務効率化を図ることができる、とユーザー企業が認識し始めているためとIDC Japanではみている。
また、IDC Japanでは、電話会議やウェブ会議、ビデオ会議、テレプレゼンスなどといった製品・サービスを「コンファレンスソリューション」と総称して、その導入率などをユーザー企業にアンケートした。結果は、何らかのコンファレンスを利用しているケースが66.0%に達していることが判明。なかでも、ビデオ会議のユーザー企業は43.7%だったという。
この調査は、今年6月に実施し、国内ユーザー企業の979社から回答を得た。さらに、将来の導入意欲については、ウェブ会議システムやテレプレゼンスなどが高いとしている。
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