ビジネス拡大の切り口(1)
UCでテレプレゼンスを売る
ワークスタイル変革の提案も
調査会社が実施したユーザー企業対象のアンケートでも分かるように、市場ではテレプレゼンス・ビデオ会議システムの導入意欲が高い。なかでもテレプレゼンスについては、UC(ユニファイドコミュニケーション)の観点で提案していくのが最適な方法といえよう。そこで、インテグレータ各社はネットワークインフラ構築ビジネスの拡大を視野にアプリケーションまでを網羅するという付加価値を提供するために、UC関連の製品・サービスを提案。最近では、不況対策としてのコスト削減につながることや、新型インフルエンザなどのパンデミック対策を前面に打ち出してアプローチすることも案件獲得につながるようだ。さらに、ユーザー企業のワークスタイル変革に役立つことが決め手となる。
電話のIP化に需要あり
まずは“UC Ready”を促進 最近では、UC関連の製品・サービスを提供するベンダーが増えつつある。なかでも、ネットワーク関連ビジネスに強いインテグレータはスイッチやルータなどのインフラを構築する機器がコモディティ(日用品)化していることもあって、“旨味”をつけるためにUC事業に着手する傾向が高い。UC関連製品の一つに挙げられるテレプレゼンスに対してユーザー企業の関心が高まっている状況から、事業拡大を図ることができる環境が整ったわけだ。ただ課題は、市場に出回るテレプレゼンスが高価格なために、ユーザー企業が導入を躊躇するケースがあるということ。そこで各社とも、さまざまな切り口でテレプレゼンスをアピールしている。
ネットワンシステムズでは、UC関連の製品・サービスで導入傾向が高いシステムとして、「多拠点で映像を通じてコミュニケーションを図るテレプレゼンスを前面に打ち出している。これまでに金融や流通などの業界で案件を獲得した」(大塚浩司・取締役エンタープライズ事業グループ統括)という実績を披露する。シスコシステムズの製品を中心に提供。システムは1000万円程度と高価格だが、「長期的なTCO(総保有コスト)を勘案して導入する傾向が高い」としている。とくに、製造業が工場間で活用したいとの声が挙がっているという。
また、「実は、電話をIP化している企業は当社のUC関連以外の顧客で2割程度と少ない。こうした顧客に対し、まずは通話料のコスト削減という点でIP化を提案している」という。IP電話の導入を促すことで、次のステップとしてUC関連の製品・サービスを提供。実際、同社では大手企業を中心にIP電話を1案件あたり多くの台数で導入した実績をもっている。顧客として、しっかりと確保しておけば「会議に最適な環境としてテレプレゼンスを提案できる。さらには、映像の高画質化ニーズも出ていることから、ビデオ会議システムが売れる可能性もある」という。
ネットマークスでは、ビデオ会議システムとUC関連のソフトウェアを組み合わせたパッケージの発売を検討。価格は未定だが、「独自のソリューションで提供拡大を図る」(山田匡広・UC技術統括部統括部長)方針。パンデミック対策を中心に用途提案を進める。


海外拠点がある企業に売る
UCでは世界標準をアピール 三井情報では、「テレプレゼンスは海外拠点をもつ企業に導入を勧めやすい」と、大島正行・営業統括本部副営業本部長兼営業企画部長は説明する。さらに、「UCという領域で事業を手がけるのであれば、1ソリューションを提供するというよりも、ビジネスプロセスの最適化という観点で提供するのが望ましい」と付け加える。これは、ユーザー企業が望むシステムとメーカーが提供する製品をつなげるといった「インテグレータ本来の役割を担うことが重要」と判断しているためだ。同社は、UC関連で1メーカーに偏らない多種多様な製品を扱っている。「ユーザー企業に対して製品を提案していく際、メーカーが発売した製品についてインテグレータが機能や用途を理解しながら細かくメリットを訴えていなければならない」としている。
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