最適なソリューションと売り方は何か成功事例に探るヒント その1
リコーテクノシステムズ
獲得ユーザー数:約4万5000社
固定概念を捨てたサービスの創出
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| 川村收社長 |
プリンタやMFP(デジタル複合機)の保守サービス提供などのリコーテクノシステムズ(リコーテクノ)。同社には、2009年度(10年3月期)、不況をものともせずにSMB市場で「大躍進を遂げた」(川村收社長)サービスがある。それが、従業員数100人以下をターゲットにしたインターネット環境の構築・運用サービス「NETBegin BBパック Select」だ。09年度上期の実績は、前年度下期に比べて2倍、前年度上期比では4倍。利用企業数は累計4万5000社を超えた。
サービス内容はシンプルだ。インターネット環境の構築と、障害が生じた際の保守サポート。プロバイダとインターネット回線の契約作業を代行し、ルータを設置・設定してLANを構築する。ネットワークにトラブルが発生した場合は、カスタマエンジニア(CE)が顧客先に駆けつけて解決する。けっして目新しいサービスではない。だが、「全国規模でいえば、まだネットワーク化もされていない事業所や小売店舗は多い」(リコーテクノ担当者)のが実状だった。この状況に着眼し、サービスをメニュー化。約400か所のサービス拠点と約4000人のCEを活用して全国的に提案活動を本格展開して、ヒットサービスにつなげたのだ。
首都圏や大企業では当たり前の情報システムやITインフラでも、地方やSMBではまだ未整備な場合が多い。その実態を調べ上げ、メニュー化したことが成功につながったわけだ。
成功事例に探るヒント その2
ビジネスオンライン
獲得ユーザー数:約8万社
団体の仕組みを活用して売る
2000年設立のITベンチャーであるビジネスオンライン。中小企業向けの会計ソフト・サービス市場で同社の名前を知らない企業はないだろう。なぜなら、設立して10年間、従業員数25人の同社は、約8万社の中小企業をユーザーに抱えているからだ。そのヒットサービスの名称は、ASP型の会計サービス「ネット de 記帳」である。
なぜ、ビジネスオンラインが8万社ものユーザーを獲得することができたのか。それは、藤井博之代表取締役が進めたユニークな販売戦略にある。
営業担当者がいない創業期、藤井代表取締役は効率的な間接販売方法を模索したなかで、ITベンダーではなく商工会に着目する。会員企業の決算書や各申告書作成業務を代行していた商工会に対し、ASP型サービスを提案。専用システムに比べてコスト負担が少ない点をアピールした。その提案が、商工会を束ねる団体「全国商工会連合会」の耳に入り、標準サービスとして採用が決定。商工会には一定割合の販売報酬を支払う仕組みを用意して、会員の中小企業に「ネット de 記帳」を提案するメリットを与えた。これで、商工会とビジネスオンラインの間にWin-Winの関係が完成した。自社の営業担当者が売り歩かなくても、全国に散らばる商工会に加入している中小企業に一気に普及したわけだ。
藤井代表取締役は、「中小企業のIT化を進めるうえでは、ある程度、国や団体の協力が欠かせない」と持論を展開する。「会計機能をサービスとして提供する」という、当時としては斬新なモデルも成功の要因の一つだが、組織力のある国の団体の仕組みを有効活用することが「ネット de 記帳」を飛躍させた最大のポイントである。
成功事例に探るヒント その3
マカフィー
獲得ユーザー数:約90万人
先進性とSMBに強いチャネルで売る
マカフィーがもつサービスで、中小企業の人気を集めているのが、2001年から販売している「McAfee VirusScan ASaP(現・McAfee Total Protection Service)」だ。
ウイルスやスパイウェア対策やファイアウォール、Webフィルタリングなどの複数のセキュリティ機能をSaaSとして提供する総合サービスで、獲得したユーザー数は約90万人。調査会社・富士キメラ総研の調べでは、この市場で99.2%ものシェア(09年7月発表データ)を獲得している。そのほとんどが従業員50人以下の中小企業だ。
ヒットの理由は、その先進性にあった。01年にサービスとしてセキュリティ機能を提供する競合ベンダーは皆無で、先行の優位性が効いた。サービスを導入すれば、あとの運用はマカフィー任せで済む。運用の手間がないことが、情報システム管理者のいない中小企業にマッチした。
もう一つがチャネル施策だ。販売パートナーには、「マスターディストリビュータのソフトバンクBBや住商情報システムから、SMB向けの販売に強い大塚商会などを介した販路の売り上げが伸びている」(コーポレートマーケティング部の市橋満部長)。中小企業に強いITベンダーの心を掴んでいることも、SMBに強い秘訣となる。先行メリットを生かして自主営業で顧客を開拓。その実績で、販社が動くという好循環を確立したことで、怪物サービスへと成長したわけだ。

初期のASPサービス紹介ページ Webサイトは専門用語を省いて分かりやすく説明
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