販社編
ユーザーのすそ野が広がる
製品の増加や連携を加速
市場拡大の流れを受け、メーカーだけでなく、販社もテレビ会議システム関連ビジネスの拡大に向けた取り組みを進めている。各社の共通見解は、「ユーザー企業のすそ野が広がっている」ということ。そこで、各社とも導入を促すために取扱製品の増加や、システムやアプリケーションなどとの連携を加速。ここでは、販社の取り組みを紹介する。
■NTT-AT
NTTグループ内での連携強化へ ネットワーク関連システムの構築を得意とするNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)では、NTTグループ全体で映像関連のビジネスを強化していくというコンセプトを掲げた。「グループ会社との連携を密に行い、テレビ会議システムの拡販を図っていく」と、須田宏一・取締役グローバルプロダクツ事業本部長は意気込んでいる。
同社は、グローバルプロダクツ事業本部で海外メーカーの製品を中心に調達や卸を行っている。テレビ会議システムについては、海外のポリコムとタンバーグのほかに国内のソニーもカバーする。グローバルプロダクツ事業本部は、インテグレータやリセラーを販社として確保。「今後は、NTTグループを販社として活用する」としている。また、映像関連システムの開発も行っている。
グループ間連携の例として、データセンターサービスのNTTビズリンクとの協業がある。「NTTビズリンクが提供する映像関連ASPサービスを担ぐことになった」(湯浅晴喜・グローバルプロダクツ事業本部メディアコミュニケーションプロダクツビジネスユニット長)としており、今後は製品とサービスの両方を提供していく。
ユーザー企業については、「最近は、会議での利用だけでなく、大学で遠隔講義を行うなど、テレビ会議システムの用途が広がっている」(谷口浩二・同ビジネスユニット担当部長)とみている。こうした施策によって、テレビ会議システムの売上高について「現段階で前年比で15%増に達している。今年度(11年3月期)は、15%増以上の伸びが期待できる」(須田取締役)と自信をみせる。
■大塚商会
コスト削減ニーズに対応 リーマン・ショックがきっかけとなった大不況をきっかけに、多くの拠点をもつ企業が、本社などで定期的に会議を開くことをやめて、テレビ会議システムを導入して出張費を削減する機運が高まった。このニーズが依然として根強く残っているとみるのが大塚商会だ。「案件の多くがコスト削減のために導入するというケース」(市川和幸・マーケティング本部ICTソリューション推進部通信プラットフォームプロモーション課マネージャー)という。
このニーズは、「大企業に限らず、SMB(中堅・中小企業)にまですそ野が広がっている」と、市川マネージャーは説明する。専用端末など、ハードウェアの価格が安くなっていることが、その傾向を後押ししている。なかでも、MCUの価格が半額程度に下がり、「10~20拠点あるユーザー企業がMCUを含めて導入するケースが多くなっている」という。導入コストやROI(投資対効果)を含めて、導入メリットが大きいとユーザー企業は判断しているようだ。
ただ、ベンダーにとってはシステムの低価格化は利益確保の面で不利になる。そこで、「回線サービスやネットワークインフラのリプレースなどを付加して提案することもある」という。とくに、ネットワークインフラの構築はスイッチの機能が一定の領域まで達して成熟しつつあることから、定期的にリプレースするケースが少なくなっている。その意味では、テレビ会議システムがネットワークインフラのリプレースを促すことにもつながっているわけだ。これによって、大塚商会はテレビ会議システム関連の売上高を「今年度(10年12月期)は、2ケタ成長を目指す」としている。
藤川直也・ICT大手営業部VCパートナー販売課長は、「もちろん、コスト削減だけを目的とせず、コミュニケーション向上のためにテレビ会議システムを導入するというニーズも高まっている」とみる。取引先とのコミュニケーションを図るために導入したいといった声がユーザー企業から出ているようだ。「この声に応えるために検証を進めている」(藤川課長)。ハードウェアの低価格化が進みつつあることから、「インテグレーションを手がけることが利益を増やすためのポイント」(同)としている。
■VTVジャパン
マルチベンダーのサポートが強み  |
| 栢野正典社長 |
映像関連製品の販売に強いVTVジャパンは、テレビ会議システムとしてポリコムとタンバーグ、ソニーの上位3社、LifeSizeやVidyo、Radvisionなどの製品も取り扱っている。取扱メーカーが6社と、他社より多いことに加え、「映像関連を中心にビジネスを手がけており、テレビ会議システムのサポートで他社には負けない」(栢野正典社長)という点が強みになっている。
サポートについては、ヘルプデスクやキッティングセンターを用意。ユーザー企業にとってはメーカーのサポートに頼らなくて済むほか、同社を通じて多くのメーカーブランドを購入できることも利点となる。営業担当者は、映像関連についてSEのスキルを熟知しているので、「既存システムとの互換性など、商談時にユーザー企業に対して技術的な面も説明できる」と自信をみせる。また、「(メーカーの2次店にあたる)販売パートナーにとっても、この充実したサポートは売る際のメリットになる」と言い切る。
ユーザー企業の規模については、今年春までは大企業が中心だったが、「中小企業の案件が増えた」という状況だ。9拠点未満などMCUを導入せずに専用端末だけで他拠点との接続が可能なモデルを購入する企業が多いようだ。その案件が全国に広がりつつあることから、「事務機器やサプライなどのディーラーを販売パートナーとして増やすことを検討している」という。
システム提案ついては、ウェブ会議などを組み合わせるなど、「当社の豊富な製品ラインアップを有効に使う」としている。売上高は、昨年度(10年9月期)で前年度比20%以上の伸びを果たした。「今年度は、10%以上の成長を遂げる」計画だ。
■ネットマークス
HD化を生かした提案を促進 ネットマークスは、テレビ会議システムのHD化が進んでいることに焦点をあて、「会議の枠を超えた提案がポイントになる」と、システムの企画を担当する商品企画部第一企画室の矢萩陽一氏はアピールする。
同社が獲得している案件は、「製造業が生産性向上を図る目的での導入が多い」という。点在する複数の開発拠点の技術者同士が、できるだけ短期間で製品を仕上げるためにテレビ会議システムを使ってディスカッションすることから、「高画質を求めている」という。とくに、国内と海外の拠点間をつなぐケースが増えており、電子化した資料や設計図を見ながら開発のスピードを高めるという活用法も現れている。「ユーザー企業にとっては、ビジネスプロセスの改善も目的」としている。
一般オフィスでも、ワークスタイルの変革といった観点から導入を視野に入れるユーザー企業が増え始め、「グループウェアなどアプリケーションと組み合わせるといった複合サービスの提供がカギ」という。また、ウェブ会議との連携もポイントと捉えており、「将来的にはノートPCやスマートフォンなど、モバイル端末でも会議に参加できるような“どこでも会議”が理想の提案になってくるだろう」とみている。
同社が取り扱っているのは、タンバーグ製品のみ。タンバーグがシスコに買収されたことにより、「当社にとっては、ビジネスを展開しやすい環境になった」と歓迎している。“オールシスコ”を中心に、シスコ製品のインテグレーションを得意としているほか、ネットワークインテグレーションを含めてテレビ会議システムを提案できることが「他社との差異化につながる」と自信をみせる。今後は、ユニファイドコミュニケーション(UC)やコンサルティングサービスなども組み合わせて提供することを視野に入れる。
■内田洋行
オフィス空間の一環として提供  |
| 金子栄司部長 |
内田洋行は、ITとオフィス家具の融合をコンセプトとしてテレビ会議システムを提供している。金子栄司・オフィス事業本部企画部長は、「新しいオフィス空間を創る」とアピールし、自社が得意とするビジネスを結集して他社との差異化を図ろうとしている。オフィス環境とITによる業務効率化をコンセプトに掲げていることから、テレビ会議システムでコミュニケーション向上やワークスタイルの変革を目的とした案件が多いという。「最近は、SMBからの問い合わせが増えた」という実態があり、SMBが成長に向けて社内や業務を抜本的に見直していることが要因と捉えている。
販売している製品は、ポリコムやタンバーグ、ソニー、Vidyo、パイオニアなど。加えて、自社製品のワイヤレスビジュアルプレゼンテーションアダプタ「wivia」を組み合わせて提供している。このアダプタは、ノートPCをワイヤレスでつなぎ、つないだPC内のデータを投影。拠点間でデータ閲覧を共有できることが特徴だ。「wiviaで遠隔会議の敷居を低くした」という。導入した企業ではテレビ会議システムを会議室に設置し、wiviaをリフレッシュルームなどに置くことで「コミュニケーションの向上につながった」と自信をみせている。
また、DB(データベース)などとの連携を求める声が増えており、「まだ具現化していないものの、連携ソリューションの提供に向けて取り組んでいる」。例を挙げれば、エンタープライズサーチの「SMART/Insight」などとの連携だ。また、「今後はフロントエンドでテレビ会議システムが導入されるようになる」という。銀行での映像を使った顧客サービスのほか、「当社では、地域交流や住民サービスといった切り口でシステム提供を模索している」としている。これによって、事業領域を広げていく方針だ。
epilogue
「会議」という名称がついたテレビ会議システムではあるものの、ディストリビュータやインテグレータなどの取り組みを探ると、用途が広がりをみせていることが分かる。もちろん、出張費を抑えるために導入するなど、コスト削減のニーズも根強く残っている。ベンダーにとっては、「攻めの戦略」や「コスト削減」など、さまざまな切り口で提案し、新規顧客を開拓できるといえそうだ。
テレビ会議システム市場は、現段階では比較的規模が小さい。今の段階でビジネスチャンスをつかむための取り組みを進めていけば、将来は大きな事業に化ける可能性を秘めている。また、専用端末だけでなく、スマートフォンやノートPCなどモバイル端末の販売にもつながるので、今後は多くのベンダーが参入してくることが見込まれる。ネットワークインフラの構築にもつながるという点も含め、さらに競争が激しくなることは間違いない。