サービス
独自商材に注力
自社の強みを生かしたサービスで勝負
ネットワーク機器の販売を事業とするNIerは、何を突破口にしてサービス事業に参入するのか。NIer各社は、およそ3年前から「従来型の事業に取り組みながらも、サービスを強化する」ことを方針に掲げてきたが、2011年に入って、いよいよその具体的なかたちがみえてきた。
大手SIerの日本ユニシスの子会社で、ネットワーク構築を強みとするネットマークスは、クラウドサービス(パブリッククラウド)と企業システム間の認証連携を切り口とした新たなサービスの展開に踏み出した。同社は、既存の大手顧客の間にグーグルの「GoogleApps」やセールスフォース・ドットコムの「Force.com」といったクラウドサービスの導入が進んでいると分析。しかし、各システムが入り乱れて複雑化しているとみて、今年10月、クラウドサービスごとのパスワード管理を不要とする仕組みの提供を開始した。
ハイブリッドに注力  |
ネットマークス 橘伸俊執行役員 |
ネットマークスは、今年4月にクラウドサービス統括部を新設。クラウド認証のサービス開始は、「今年から、パブリックとプライベートクラウドのハイブリッド・ソリューションの展開に注力する」(橘伸俊執行役員)戦略の一環だ。サービスでは、企業システム側で行った認証の結果だけを暗号化してクラウドサービス側へ送信し、IDとパスワードがインターネット上を通過することを回避する。これによって、複数のパスワードの管理の煩わしさを解消し、セキュリティの強化を図る。
橘執行役員は、「当社はインフラのインテグレータとして、インフラを安全に利用できる環境を提供する」ことをコンセプトにして、今回のクラウド認証連携サービスに加え、クラウドとセキュリティを融合させたサービスをメニューに追加していく考えだ。
このほど提供を開始したクラウド認証連携サービスに関して、「GoogleApps」や「Force.com」を販売するパートナーと提携して、今年度(2012年3月期)に10社、来年度は約50社への導入を目指している。
グループで相乗効果を生む クラウドコンピューティングの普及が本格的に進んでいるなかで、新しい事業領域として注目を集めているのが、ITシステムのハウジングや各種サービスを提供するDC事業だ。NIerは、自社でDCを運営するベンダーがこれまで少なかったが、東日本大震災によるBCP/DRの急速な需要拡大を受け、自社でDCを保有して、バックアップサービスなどを提供する流れに乗っている。
双日グループのNIerである日商エレクトロニクス(日商エレ)は、今年9月末に大阪の堂島地区に都市型DCをオープンし、DC事業に参入した。同社は、「エンタープライズ」(従業員数1000人以上の大手企業)をターゲットに据えて、ハウジングや遠隔データ保管などDCサービスと、ICT基盤の構築や移設といったインテグレーションサービスを提供している。DC事業に携わる多くのNIerは、他ベンダーと連携してサービスを提供するモデルを採用しているが、日商エレは、アライアンスではなく、双日グループで相乗効果を生むという道を選んでいる。
双日グループは、11月中旬に北海道石狩市に大型DC「石狩DC」を竣工したさくらインターネットをはじめとして、DCを強みとする会社を数社抱えている。日商エレは今後、北海道、首都圏、中部と、順次、DCを全国展開する計画を推し進めており、石狩DCの建物の一部を利用して自社インフラを設置するなど、グループ会社と緊密に連動をすることによって、DCサービスの拡大に挑む。
エンタープライズ事業本部データセンター事業室の宮倉雅史室長は、「5年後に50億円程度」をDCサービス事業の売上目標として挙げた。
「ビッグデータ」を商機に  |
兼松エレクトロニクス 黒澤俊実副本部長 |
ネットワーク構築を主なビジネスとして、日本IBMの有力な販社である兼松エレクトロニクス(兼松エレ)は、ユーザー企業が抱えるデータの大量化・複雑化──いわゆる「ビッグデータの時代」の到来を新たな商機と捉えて、このほど、情報の分析・活用を図るビジネスアナリティクス(BA)事業に参入。日本IBMが提供する財務パフォーマンス管理ソフトウェア「Cognos TM1」をベースとしたコンサルティングサービスの提供を開始した。
兼松エレは、統合業績管理や予算編成システムをはじめ、BAのあらゆる活用シーンにおいて、導入戦略のコンサルティングから運用保守まで、統合サービスを全般的に提供していく。
サービスを開始したのは今年10月。BA事業の指揮を執っているビジネス開発本部の黒澤俊実副本部長は、BAのニーズに早くも確かな手応えを感じている。
「2013年までに、20~30件の見込み案件を発掘することを目標としているが、日々の営業活動でBA提案への反応がとても好調で、現時点で、すでに見込み案件の目標値を超えている」と、需要の旺盛さに喜びを隠さない。
兼松エレは、BAを単独に提案するのではなく、ハードウェアやデータベースなど、既存の商材と組み合わせたかたちでユーザー企業に訴求する。今後、中堅スーパーマーケット向けのEDIを主力とするクラウドランドとも連携して、BAとEDIを組み合わせた商材を投入していく。なお、クラウドランドは、兼松エレとソフト開発のニュートラルの合弁会社である。
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