“正攻法”のコスト削減を訴求
圧倒的低価格の直球勝負に打って出る
コスト削減やマルチデバイスでの利用、事業継続──。ネオジャパンが挙げるクラウドサービスのメリットだ。なかでも目を引くのが、従来の正攻法ともいえるコスト削減の訴求である。
ネオジャパンは、クラウドベースのグループウェア「desknet's on Cloud powered by Amazon Web Services」を提供している。プラットフォームに「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」を採用し、価格はスタンダード版(「ベーシック」プラン)が1ユーザーあたり月額380円から。一概には比較できないが、競合のサイボウズが提供する「cybozu.com」の月額500円よりも低価格だ。エンタープライズ版(「ベーシック」プラン)は、1ユーザーあたり月額600円の料金としている。
このほか、ユーザー企業の利用内容・負荷に応じて、システムスペックと料金を変更できる。「ハイ」プランから「ロー(2)」プランまで、4プランを用意しておりスタンダード版の場合、最安価の「ロー(2)」プランは月額340円だ。
なお、利用形態は「ライセンス持ち込み型」も用意しており、オンプレミスですでに「desknet's」を利用しているユーザーが、所有のライセンスをクラウドでも利用できる。料金は、最小構成で月額1万円。
低価格が売りだが、パートナー企業との協業関係を破壊するものではない。マーケティング統括部の市村英二氏は、「販売モデルを重視している。クラウドを売りやすくするために、顧客ごとにアマゾンのインスタンス(仮想マシン)上に『desknet's』以外の環境を載せることもできるようにしている」と、パートナー企業のメリットを強調する。
・【記者の眼】強みや課題を認識しておきたい 特集で紹介した各ITベンダーの取り組みについて、注目すべきポイントに触れておきたい。
ネオジャパンの「desknet's on Cloud」は、競合他社のクラウドサービスに比べると確かに低価格だ。サイト上では、「サーバー不要で管理も楽」「支払い負担の軽減や資産計上が不要」「事業継続計画(BCP)対策」といった特色も打ち出している。だが、価格を前面に押し出してアピールすると、ユーザーにコスト削減効果への過剰な期待を煽る懸念がある。このサービスは中小企業の経営にどんなメリットをもたらすかについて、十分に訴求していくことが大切だ。
中小企業にとって身近な存在である商工会議所やITコーディネータ、会計事務所を経由してクラウドサービスを提供する取り組みは、古くはASPサービスのそれに遡ることができる。新規参入が難しい会計アプリ市場で、ビジネスオンラインはASPサービス「ネット de 会計」を商工会に推奨してもらったことで実績を伸ばした。
製造業支援SaaS普及協会と弥生の試みは、中小企業の経営者の意識を変化させることができる有望な販売チャネルとして期待できる。
複数のITベンダーが協調してクラウドサービスを普及させようと目論む製造業支援SaaS普及協会については、気にかかる点もある。独自のマーケットプレースを運営する日立システムズに対しても共通して指摘できる。
会員企業のクラウド基盤は共通しておらず、SLA(サービス品質保証制度)はバラバラ。明確なガイドラインは設けていない。日立システムズの場合は、「与信枠は設定しているが、サービスの中身まではチェックしていない」(堀口担当部長)。同社は課金・回収を担うこともできるが、契約を結ぶのは会員企業とユーザー企業だ。仮に会員企業のクラウドサービスに障害が生じても、日立システムズの責任は問われないが、ユーザー企業からの信頼を失ったりマーケットプレースを敬遠する動きが広まったりするかもしれない。
富士ゼロックスの「SkyDesk」は、気軽に使えて業務に直接役立つサービスだ。名刺管理や顧客管理に頭を抱えている中小企業の経営者に歓迎されるだろう。無料のプランもあるので、利用のハードルは低い。競合は、大手ITベンダーからITベンチャーまで多様だが、未開拓市場が広大なだけに成長が期待できる。