【成長ビジネス(2) クラウド関連ネットワークサービス】
NIを強みにサービス提供へ 成長率20%を実現
NIerの間で、サービス事業を中核とするビジネスモデルに舵を切る動きが加速している。NIer各社は、スイッチやルータなど、機器の販売・構築関連の事業が縮小傾向にある。この従来型事業の売上減少を補うために、有力NIerは2011年あたりからサービス事業の立ち上げと拡大に本格的に取り組んでおり、ビジネスの変革を急ピッチで進めている。現在はサービスメニューの拡充や販売網の構築を進めている段階で、2016~17年には「機器の販売・構築」「サービス」の売上構成比を半々にすることを計画するNIerも現れている。
現在、NIer各社はクラウドサービスやデータセンター(DC)サービスの分野で、ネットワーク構築を得意としていることを前面に打ち出そうとしている。三井情報は、全国各地のDC事業者と連携し、各事業者のセンターをDR(災害復旧)サイトとして利用するハウジングサービスを展開し、ユーザー企業を順調に増やしている。日商エレクトロニクスグループでは、この1年間で首都圏や北海道でのDC設置に加えてサービス提案に強い営業体制を整え、今年度(13年3月期)下期からビジネスを本格的に展開しようとしている。
サービスに重点を置けば、NIerがこれまで十分に入り込めていなかった中堅・中小企業(SMB)市場を開拓するチャンスが生まれる。兼松エレクトロニクスでは、クラウド型のパソコン遠隔制御サービスを提供しており、このサービスがNTT東日本とNTT西日本の法人向け回線サービスのメニューに追加された。SMB市場を得意とするNTT販社を通じて自社サービスを提供するという販売モデルを構築した。NTTの力を借りて、パソコン遠隔制御サービスのユーザー数を、現在の約150社から約1000社まで引き上げることを目指している。
NIer各社は、従来型事業の規模が減少するなかで、今後5年間のサービス事業をエンジンとして、全体の売上成長率を20%レベルで伸ばそうとしている。
NIerの売上構成比の変化

【成長ビジネス(3) タレントマネジメント】
ERPビジネスの新たな商機を掴む
「人事管理」から「戦略的人材管理」へ
終身雇用制度が崩壊し、グローバル進出が盛んになった。そして、雇用形態が多様化してきた──。企業を取り巻く事業環境の急激な変化に伴い、高度なグローバル人材の育成と組織のマネジメントが喫緊の課題となっている。そのため、人件費の管理や業務処理が中心の人事管理システムは、優秀な人材の育成や配置、分析シミュレーションができるシステムに発展することを求められている。こうした状況にあって、注目を集めているのが「タレントマネジメント」だ。国内外のベンダーの参入が相次ぎ、市場が立ち上がりつつある。
現在、企業の間で戦略的人材管理に向けた取り組みが始まったばかりで、まずは人材(能力)を可視化するというケースが多い。従来の日本的組織管理との折り合いのつけ方も、課題として浮上している。このため、グローバル標準を謳う外資系パッケージ・サービスの導入事例が華々しく紹介されてはいるが、日本企業特有のニーズを踏まえた国産パッケージ・サービスが伸びる余地も大きい。
「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」「クラウドサービス」「ゲーミフィケーション」「モバイル」など、急速に業務システムに浸透しているこれらのキーワードも視野に入れる必要があり、外資系ERP(統合基幹業務システム)ベンダーがタレントマネジメントシステムにも適用し始めている。
ERP市場はすでに成熟期を迎え、導入率は一定レベルに達したといわれる。調査会社のアイ・ティ・アールによると、11年度(12年3月期)の国内ERP市場は前年度比7.8%増の約822億円だった。伸びた要因は、大企業がグローバル進出に伴うシステムの更改、中堅企業がレガシーシステムの更改とグローバル対応が増えたことによるものとみられる。既存のビジネスモデルから抜け出せないERPベンダーが伸び悩んでいる一方、最新の技術トレンドを踏まえてビジネスモデルを転換したERPベンダーの業績が好調に推移している。タレントマネジメントは、まさにこれから成長する基幹業務分野として期待できる。
タレントマネジメントの過去、現在、未来

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