【SPARC/Solaris】
日本オラクル――金融などでUNIX回帰の動き
●新製品でパートナーとの関係強化 
宮坂美樹
本部長 「x86サーバー市場は飽和している」。日本オラクルの宮坂美樹・システム事業統括プロダクト・マネジメント・オフィス本部長はこう断言する。金融などを中心に、UNIX回帰の動きがみられるという。
日本オラクルは、今年4月、ミッドレンジ向けの「SPARC T5」サーバーとハイエンド向けの「SPARC M5」サーバーをリリースした。宮坂本部長は、「市場の反応もいい。日本オラクルのUNIXサーバービジネスは、確実に昨年よりも成長する」と自信をみせる。
同じタイミングで、もともとのSPARC/Solarisの開発元であるサン・マイクロシステムズとの統合作業がようやく完全に終わり、ハードウェア、ミドルウェア、そしてアプリケーションなども含めて最適化したソリューションを提供する「オラクル・オン・オラクル」というコンセプトの価値訴求がしやすくなった。DBや各種ミドルウェアといった、従来オラクルの主力だった部門からも、UNIXサーバーの活用方法についてアイデアが出て、新たな提案につながっている。
新製品をリリースしたことによって、従来からのラインアップであるエントリーモデルの「SPARC T4」と合わせて、より幅広い製品群が揃ったわけだが、これはオラクルにとって、単にUNIXサーバーの品揃えが充実したという以上の意味をもつ。
最も大きな影響は、パートナーとの関係が強まったことだ。日本オラクルのハードウェア販売は、80%が何らかのかたちでパートナーを経由しているが、とくにT5シリーズはSIer系のパートナーに好評で、間接販売の比率が上がっているという。こうしたパートナーとは、「オラクル・オン・オラクル」のコンセプトを共有したソリューションの提供で協業を深める。具体的には、オラクルのハードウェアを基盤にパートナーが構築したシステムを検証する環境として、青山本社に「オラクル・ソリューション・センター」をリニューアルオープンしたほか、パートナーが自社でそうした検証環境を整備する際に支援も行う。
一方で、T4の販売体制もテコ入れする。ディストリビュータ系のパートナーの商流を利用し、新規にリセラーを開拓する。T4に、ストレージやテープなど手離れのいい製品を加えて、「売りやすい」スキームをつくることで、販路を拡大する意向だ。宮坂本部長は、「販路が広がれば、まだまだ新規開拓が見込める。伸びしろはかなりある」と大きな期待を寄せている。
富士通――ビッグデータの分析に新たな需要
●プロセッサ開発の技術力で勝負 
齋藤陽
部長 歴史的に、サン・マイクロシステムズ、オラクルとの密接な協業関係のもと、UNIXサーバーベンダーとして存在感を示してきた富士通。「日本では富士通しか高性能向けプロセッサはつくれない」(齋藤陽・エンタプライズサーバビジネス推進部長)という自負がある。
現在の主力は、同社が開発した「SPARC64 X」プロセッサ搭載の「SPARC M10」だ。今年度のUNIXサーバーの売上高は、この新製品投入の影響で微増の見込み。齋藤部長は、「LinuxやWindowsに比べると、UNIXは信頼性、拡張性、セキュリティなどがすぐれており、市場はなくならない。とくに、システムのリソースをうまく使い切る“制御”部分のメリットは、ITシステムの集約ニーズにも適合する」との見解を示す。
同社は一方で、UNIXの特性を生かした新たな市場の開拓にも力を注いでいる。その一つがビッグデータの分析だ。齋藤部長も、「UNIXの拡張性やメモリ容量を大いに生かすことができる分野」と期待を寄せる。ただし、ビッグデータ関連のソリューションは、ハードありきで検討が始まることはない。富士通は、ビッグデータ活用に関連するさまざまなレイヤーの製品群を体系化し、「FUJITSU Big Data Initiative」として発表している。このスキームをベースにして、UNIXサーバーを活用したソリューションのブラッシュアップや最適化を図る意向だ。
【Itanium/HP-UX】
日本HP――x86へのシフト傾向も
●国内UNIX市場では12年連続1位 
栄谷政己
部長 IDC Japanの調査によると、日本国内では出荷金額ベースで12年連続シェア1位を獲得しているのが日本HPだ。栄谷政己・ビジネスクリティカルシステム製品本部製品企画部部長は、「大企業の基幹系システムの刷新などはビッグプロジェクトで、時間もかかる。ラインアップの入れ替わりが激しすぎる製品はなかなか使いづらい。その点UNIXはロードマップがはっきりしており、長期に安定して使いたいというユーザーにはぴったり。稼働の安定性などは、オープン系に比べてまだ一日の長がある」と説明する。
拡販の方針としては、既存のUNIXユーザーのリプレースのほか、メインフレームからの乗り換えも提案する。間接販売も従来以上に力を入れ、仮想化対応などのトレーニングを体系化して、そのプログラムをパートナーにも提供していく。

寺崎孝
マネージャ 一方で、同社が鮮明にしているのが、ミッションクリティカルサーバーとしてのラインアップを、x86サーバー領域まで拡大しようという方針だ。今年7月には、米HPとNECが、関連の共同開発を行うことを発表している。
同社はこうした一連のミッションクリティカル製品のロードマップを「Project Odyssey」と名づけている。寺崎孝・ビジネスクリティカルシステム製品本部担当マネージャは、「HPは、コモディティ化しているといわれるx86サーバー分野でも、差異化製品を市場に出す力がある。ユーザーに、より多様な選択肢を提供したい」と説明している。
記者の眼
ハードウェアベンダー各社が、縮小傾向にあるUNIXサーバーに投資し続ける意味は何か。共通していえるのは、ミッションクリティカルなシステムでは、UNIXサーバーの需要が少なからずあり、それを獲得しようとしていること。そして、UNIXサーバーはメーカーの独自技術が詰まったプロダクトで、技術開発の根幹をなすという考えをもっているということだ。
UNIXを求めるユーザーの声は、今後もゼロにはならないだろう。仮想化技術を活用したサーバー統合の集約先として、UNIXは選択肢になるのも確かで、ここ数年続いたダウントレンドは落ち着く可能性がある。メーカーも自社技術を磨く先としてUNIXを位置づけている。落ちぶれたプラットフォームと思われがちなUNIXだが、ユーザーに提案する商品として、今でも立派な選択肢になっている。
気になるのは、各メーカーとも販路を拡大するためにパートナーとの連携を強化しようとしているにもかかわらず、販社側には「UNIXは既存ユーザーを中心に粛々と継続すればいい」というムードが漂うこと。ベンダーの意気込みとパートナーの現場の間に意識ギャップが存在するのだ。
SIerは、UNIXの特徴を見極めてスキルを修得すれば、WindowsやLinuxに比べて開発工数を削減できるし、他のOSにはない魅力を提案することもできる。以前よりもシステム開発プロジェクトを受注しにくい環境だからこそ、あえてUNIXに着眼するという考えも有効だ。メーカーは、UNIXという特殊で汎用的ではないプラットフォームの価値をいかにパートナーに伝えることができるかが重要になる。