ブーム化するSD-WAN市場をめぐる各社の戦略
SD-WAN市場を切り開いたのは米国のスタートアップ企業2社だが、この市場に商機ありとみた通信機器ベンダーも相次いでSD-WANソリューションを発表しており、ネットワークの世界ではにわかに「SD-WAN」ブームが巻き起こっている。基本的な機能は共通だが、各社それぞれの“味付け”は異なっている。
●閉域とインターネットの両回線をアクティブで使える 既存の閉域網とブロードバンド回線を組み合わせることで、ビジネスニーズに応じたWANを低コストかつ柔軟に提供する、というコンセプトを実現するのが、米Viptela(ヴィプテラ)のSD-WANソリューションだ。
Viptelaのソリューションは、「vEdge」と呼ばれるエッジ端末と、クラウドサービスとして提供される管理機能の「Viptela Cloud」から構成される。各拠点ではViptela Cloudとの通信が可能な回線があれば、それをvEdgeに接続するだけで、クラウド経由で設定が配信され、ネットワーク構築が完了する。用いる回線はIP-VPN、ブロードバンド回線、モバイル回線など種類を問わず、それぞれの拠点ごとに異なる回線が混在していてもかまわない。いずれの回線を使用した場合も、それらの上にオーバーレイ(重畳)する形で、物理的なネットワークの形態にかかわらず仮想的にフルメッシュ(全拠点が全拠点と直接接続された形)のネットワークが構成される。もちろん、フルメッシュ型ではなく、組織やビジネス上の都合により階層型のネットワーク形態をとりたい場合、Viptela Cloud上の操作だけで仮想ネットワークの構造を変更することもできる。

Viptelaのソリューションで各拠点に設置する「vEdge」。
LTE通信機能内蔵モデルの提供も準備している
Viptela製品を国内で扱う日商エレクトロニクス ネットワーク&セキュリティ事業本部ネットワーク事業部の新田学・事業部長は、「これまでは通信事業者向けに取り組んできたSDNだが、SD-WANの登場によって、一般企業の課題解決に役立つものとして提供できるようになった」と話し、SD-WANはこれまでのSDN関連製品に比べてスピーディに市場へ浸透しつつあるとの見方を示す。

(左から)日商エレクトロニクスの川村浩司・課長、小松宣之・課長補佐、
新田 学・事業部長、真木吉人・課長補佐
また、Viptera製品の強みについて、同事業部第三課の真木吉人・課長補佐は「閉域網とインターネットを“アクティブ-アクティブ”で効率よく使用できる」と説明。従来は、IP-VPNや広域イーサネットを2回線敷設し、一方をメイン回線、他方をネットワーク障害時のバックアップ回線とする“アクティブ-スタンバイ”の構成が主流だったが、この場合平時には待機しているだけの回線にも費用が発生してしまう。Vipteraを導入すれば、スタンバイ回線の閉域網をブロードバンド回線に置き換え、閉域網の帯域幅から溢れたトラフィックをブロードバンド側へ逃がすオフロード(負荷軽減)も実現できるので、回線のコスト効率を高められる。このような“アクティブ-アクティブ”構成を簡単かつセキュアに構築できる点で注目を集めており、現在、国内ユーザー企業ではPoC(Proof of Concept、概念実証)が活発に行なわれている他、導入企業も増えている。
●クラウドファーストのITインフラを実現するSD-WAN SD-WAN市場ではVipteraと並ぶ注目株となっているのが米VeloCloud(ヴェロクラウド)だ。クラウドに設置されたコントローラによってエッジ端末を制御し、拠点間にセキュアなオーバーレイネットワークを構築、トラフィックの中身に応じて動的に経路を制御するという点では両社のソリューションは共通だ。VeloCloudは、ネットワーク利用時のユーザーエクスペリエンスを最適化することにより力を入れており、クラウドの活用に積極的な企業にはとくに適したソリューションとなっている。国内ではネットワンシステムズが、月額制(契約は年単位)のサービスとして提供している。
VeloCloudの特徴は、インターネット上に分散配置された「クラウドゲートウェイ」の存在だ。各拠点に設置するエッジ端末の「VeloCloud Edge」は、ネットワークに接続されると、クラウドゲートウェイとの間でVPNを確立する。クラウドゲートウェイでは、パブリッククラウド、SaaS、企業のデータセンターなど、ユーザーが接続しようとするアプリケーションのありかに応じて最適な通信経路が自動的に選択されるので、インターネットを介した通信でもパフォーマンスの低下を極力防ぐ。
VeloCloud Edgeには2本のブロードバンド回線を接続できるようになっており、それぞれの回線についてパケットロスや遅延時間などの性能情報を常に監視している。アプリケーションが最高の性能を発揮できるよう、各回線への負荷の分散や、通信状態の悪い回線の回避といった最適化が行われる。また、トラフィックがどのアプリケーションによるものかを認識し、VoIP通話やビデオ会議には一定品質を確保するための帯域を優先的に割り当てるといった細かい制御が可能。ネットワンシステムズでVeloCloudサービスの企画を担当するビジネス推進本部 商品企画部の石原陽平氏は「アプリケーションごとにQoSをかけるといった、ユーザーエクスペリエンス向上を目的とした制御機能をもち、それをクラウド上のゲートウェイで行うのがVeloCloudの強み」と説明。高度な制御をエッジ端末ではなくクラウド側で行うことで、接続先やポリシーが増えた場合もユーザー拠点の設備に負荷をかけず、高いパフォーマンスを維持できるのが特徴だ。

(左から)ネットワンシステムズでVeloCloudサービスの技術を担当する庄谷信哉氏、
市場開発を担当する疊家庄一氏、企画を担当する石原陽平氏
なお、現在のところネットワンシステムズでは閉域網との組み合わせではなく、ブロードバンド回線の利用を前提としてサービスを提供している。ブロードバンド回線2本の組み合わせによって、大手パブリッククラウド事業者並みの稼働率を十分提供できるからだ。
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