●コスト、クラウド対応に加え可視化が導入の動機に 従来ルータなどの機器を1台1台を操作する必要があったWANの運用・管理を一元化できるSD-WANは、拠点数が多い企業ほど大きな導入メリットを得られる。実際に、各社のSD-WANソリューションに早くから関心を示しているユーザーの多くは、100前後かそれ以上の拠点をもつ企業が多いという。
しかし、SD-WANは全国規模の大企業だけにメリットをもたらすものではない。日商エレクトロニクス ネットワーク事業部第三課の川村浩司・課長は「『拠点の再編が頻繁に発生する』『現場で一時的にネットワークを使いたい』といったニーズは、当初想定していたより少拠点数のお客様からも寄せられており、SD-WANの適用領域は急速に広がっていると考えている」、ネットワンシステムズ 市場開発本部 ソリューション・サービス企画室 第1チームの疊家庄一氏は「拠点数よりも、お客様がWANに抱えている課題と合致するかがSD-WAN導入の鍵。極論すれば、1拠点でもメリットが得られるケースも考えられる」と話す。
SD-WANへの期待で代表的なのが、アプリケーションの可視化だ。トラフィックの中身に応じて通信経路を選択するため、SD-WAN製品の多くは高度な可視化機能を備えている。セキュリティへの要求の高まりを受けて、具体的なポリシーの策定に先立ち、「まずは自社のネットワーク上でどんなアプリケーションが使われているのかを把握したい」というニーズは確実に増えている。高価なネットワーク可視化ソリューションやセキュリティ機器を導入しなくても、SD-WANで可視化ができるならWAN環境の再構築を兼ねて導入してしまおうというユーザーが出てきてもおかしくない。
米国に本社を置くリバーベッドテクノロジーは、10月に新製品の「SteelConnect 2.0」を発売した。他のSD-WANソリューションと基本的な機能は共通しているが、パフォーマンス管理ツール「SteelCentral」など、リバーベッドの他の製品との連携・統合がセールスポイントとなっている。同社は長らくWANの最適化ソリューションを主力としてきたほか、クラウド上に展開したアプリケーションの性能の可視化・最適化するツールなどをもっている。それらとSD-WAN製品を統合し、分散するITインフラをトータルで可視化することによって、ボトルネックをなくし、アプリケーションの性能や可用性を最大限引き出すのが同社の戦略だ。

ユニアデックス
上水公洋
マーケティング
マネージャー ノキアネットワークス傘下のSDNベンダー・Nuage Networks(ニュアージネットワークス)も、SDNソリューションの一つとしてSD-WAN製品「Nuage Networks VNS(Virtualized Network Service)」を提供している。ViptelaやVeloCloudがクラウドからコントローラ機能を提供しているのに対し、Nuageの製品では、本社や自社データセンター内にコントローラとなるサーバーの設置を想定している。
同製品を国内で販売するユニアデックスのエクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 上水公洋・マーケティングマネージャーは「一定規模以上の大手企業は、ほとんどがSDNに取り組んでいる。一方、データセンターを出てパブリッククラウドにつなぐとき閉域接続までやるかというと、そこには議論がある」と話し、自社データセンターでのSDN導入は一巡したが、社内とパブリッククラウドとの接続に関して最適解をみつけられていないという大企業では、NuageのSD-WANソリューションが選択肢として有望との見方を示す。
また、各社が口を揃えてSD-WANの想定顧客として挙げるのが、まさに今海外へ進出しようとしている企業だ。WANの品質が安定しない海外拠点と本社を確実に接続し、現地でもクラウドをフル活用してすばやく事業を立ち上げるためには、SD-WANはうってつけのソリューションだ。「日本企業の海外進出支援」を掲げるITベンダーは、これからは取り扱い商材の一つとしてSD-WANの検討が必須となるだろう。
記者の眼
あえて後ろ向きな見方もしておくと、SD-WANが普及すれば、ルータを担いではるばる顧客の拠点を訪れ、呪文のようなコマンド入力で見事にネットワークを開通する……このような仕事で収益を得る機会はなくなるということでもある。顧客のビジネスが求めるネットワークを最速で提供できるベンダーだけが生き残れる時代に向け、今のうちに準備をしておく必要があるといえるだろう。
正直をいうと、筆者はこれまで「SDN」という単語が出てくる度「またあの難解な話か……」と毎回尻込みしてしまっていたのだが、拠点間の接続を自動化し、セキュリティレベルに合わせて最適な回線や通信経路を自動選択してくれるというSD-WANのメリットは、非常に明快でわかりやすい。「会社のネットが遅い」という不満を低コストで解決できるという点では、従業員にとっても大いに有益なソリューションだ。急速に普及するのではないかという思いが沸いてくる。