――2023年はどのような年だったか。
従業員の評価や従業員サーベイなどの業務を効率化するタレントマネジメントのプロダクトが、軌道に乗った年だった。「プロダクトをどのように増やしていくか」「どのようにブランディングするか」「どのように売るか」などの道筋がはっきりと見えるようになり、事業の多角化に向けて大きな一歩を踏み出せた。パートナー戦略の面では、ここ1~2年、力を入れていた成果が出てきた。特に地銀を通じたビジネスマッチングの取り組みによって、今までリーチしにくかった地方の企業に対しても導入が進んだことは喜ばしい。
代表取締役CEO 芹澤雅人
――「マルチプロダクト」戦略の状況は。
SmartHRは労務に関するソリューションの印象が強いが、数年前からタレントマネジメントのプロダクトも出している。今後は労務、タレントマネジメントに限らず、第3、第4のプロダクトもつくる予定で、マルチプロダクトで事業を強化していく。
――反省点はあるか。
一つは第3、第4のプロダクトの仕込みに苦戦したこと。もう一つは、AIだ。23年10月には社内に「AI研究室」を設置したほか、タレントマネジメントのプロダクトに生成AIを乗せて、ベータ版として機能を提供できたとの成果もある。しかし、AIをサービスに組み込むことに関する議論だけでなく、AIを活用して自分たちの働き方を効率化することに関して、もっと議論の余地があった。少々中途半端な姿勢を見せてしまったと感じる。
第3、第4の事業の柱をつくる
――24年に取り組みたいことは。
23年でできなかった部分に取り組んでいく。特に、第3、第4の事業の柱をつくることに関して言えば、組織体制の強化に取り組む必要があると思っている。プロダクトを生み出すだけでなく、生み出した価値を今以上にきちんと届けられるようにする。24年はこの両軸で組織を育てていく。また、組織のマインド面のアップデートにも取り組みたい。今までは「自分たちはスタートアップだ」との勢いで統率できていたが、最近はスタートアップでも大企業でもない、どっちつかずのポジションにあると感じる。会社の規模が大きくなった今、事業を遂行していく上でのマインドセットを改めて浸透させていく必要がある。
――パートナービジネスに関してはどうか。
もちろん、パートナーを増やしたり、パートナービジネスを盛り上げたりしたいのは間違いない。ただ、何のためのパートナー販売なのか、何のための直販なのかという「why」の部分が重要だ。売り上げの拡大は言うまでもなく、より効率的に働くことも実現したい。まずは、「パートナービジネスでやったほうが獲得効率がいい領域はどこなのか」などについて議論を深めていく。