――2024年のIT投資動向をどう見るか。
国内の主要企業の業績はおおむね良好である一方、人手不足がより深刻化する。就労人口が減る中、女性や高齢者の労働参加率を高めることで補ってきたが、補いきれなくなるタイミングでITによる一段の業務効率化が求められ、国内IT市場を支えていくことになるとみている。当社は先進的なデジタル技術やAIによってユーザー企業の需要や期待に応えていくことで業績を伸ばす。
代表取締役会長兼社長 此本臣吾
――注目を集めている生成AIの進展をどう見るか。
生成AIは「高性能化」と「実用化」の二極化が進むだろう。前者は欧米を中心とする巨大IT企業がこぞって研究開発投資を行い、高精度かつ万能性を追求していく。後者は特定の業務に特化し、扱いやすい小型軽量なエンジンで性能を出していくパターンだ。SIerのビジネスになるのは前者の万能型AIではなく、業種や業務に特化した後者のほうで、さまざまな業務アプリに生成AIの技術を組み込んでいくビジネスが今後本格的に立ち上がると予測している。
生成AIを顧客接点や基幹業務に応用
――生成AIがまとまった規模のビジネスになるのはいつ頃か。
初期段階では汎用的な生成AIによって議事録を自動作成するといった社内用途に限定されるが、それでもすでに当社では2桁億円規模の商談が進んでいる。その次の段階として業務に特化した大規模言語モデルを開発。生成AIの課題でもある誤った答えを導き出してしまうハルシネーション(幻覚)現象を抑制し、特定業務における精度を高めることで、コンタクトセンターなど顧客接点の領域に応用が進んでいく。ここまでくると3桁億円の大規模商談になることが期待できる。数年後には実用レベルまで行くのではないか。さらにその先に進むと、基幹業務システムがAIによって制御される時代がやってくる。
――SI事業で主な海外進出先である豪州と北米のビジネスはどうか。
豪州、米国ともに市場環境がすぐに回復するとは考えていない。豪州は進出した時期が比較的早かったこともあり回復状況が読める状況にある。北米はインフレ抑制のための利上げの状況を見極めると同時に、業務効率化などの構造改革を進めている。
――24年4月1日付で柳澤花芽・常務執行役員がNRI初となる女性社長へと昇進する。
次期社長の柳澤はコミュニケーション力に優れ、オープンマインドで迷わず前へ進んでいくのが持ち味だ。トップダウンで物事を決めるよりは、国内外の事業会社の役員と協力し、グループ従業員の力を存分に引き出して、25年度までの3カ年中期経営計画を遂行してほしい。