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米ServiceNow、CRMを新しい事業の柱に 複数AIエージェントの活用を支える

2025/05/26 09:00

週刊BCN 2025年05月26日vol.2060掲載

【米ラスベガス発】米ServiceNow(サービスナウ)は5月6~8日(米国時間)、年次イベント「Knowledge 2025」を開催し、これまで同社が強みとしてきたITSM(ITサービス管理)などの製品に加え、CRM製品を事業の新しい柱に据えた戦略を披露した。新たな統合基盤「ServiceNow AI Platform」の目玉として、複数のAIエージェントの活用を支えるための機能も発表。ビル・マクダーモット会長兼CEOは「(既存のCRMの利用では)顧客の損失は増大している。それでもこれまで通り使い続けるのか。変化の時が来ている」と訴えた。
(取材・文/大畑直悠)
 

既存のCRMを越える

 サービスナウは自社のCRMを、既存の他社製品を越える「次世代CRM」と位置付けている。単一の基盤上で営業や受注の管理、カスタマーサービス、フルフィルメント(納品・代金回収)管理機能に加え、さまざまな業界に対応した機能群を一貫して提供する点が特徴で、CRMは同社のワークフロービジネスで最も伸びている領域となっている。
 
米ServiceNow
ビル・マクダーモット 会長兼CEO

 今回のイベントでは、製品の仕様や価格の設定、見積もりを作成する「CPQ(Configure Price Quote) 」領域を強化する方針などが示された。これは、4月に発表した米Logik.ai(ロジックエーアイ)の買収によって行うものだ。また、CRMに特化したAIエージェントとして、顧客からの問い合わせへの応答や、対応する案件ごとに最適な担当者を割り当てる機能を実装したことも公表した。

 テレンス・チェシャー・VP, CRM and Industry Workflowsは「オムニチャネルへの対応や360度の顧客理解は確かに重要だが、それはCRMの話の半分でしかない」と分析する。そのような他社のCRMでも提供している機能は、フロントオフィスだけのDXにとどまるもので、不十分だという。その上で同社が重視するのは、「顧客体験や従業員体験の問題点をいかに解決するかだ」と強調する。
 
米ServiceNow
テレンス・チェシャー VP

 既存のCRM製品を利用する顧客は、フロントオフィスとミドルオフィス、バックオフィスのデータや業務プロセスが統合されていないために、顧客の要求への対応に時間を要するのに加え、業務プロセスが複雑で分断されていることから、AIを活用した自動化が困難になり、結果的に顧客体験や従業員体験が損なわれているとみている。こうした課題に対して、同社のCRM製品では顧客のリクエストに応える関連部門が一連のワークフロー上で業務を遂行できる点が強みだ。

 基調講演では、顧客事例としてストレージベンダーの米Pure Storage(ピュア・ストレージ)の取り組みを紹介。同社ストレージ製品の購入を検討する顧客にAIエージェントがストレージの要件を聞き取り、最適な製品を推奨。購入フェーズではAIエージェントとのやり取りを元に、ロジックエーアイのCPQ製品で割引のオプションなどを反映させた見積もりを作成する。リセラーを紹介したり、契約後に実装を支援する技術者を派遣したりする体制も整えた。この間、全てのプロセスのデータを参照しながら作業ができ、AIによる最適な提案プランの推奨も受けられるため、担当者が新人でもスキルの不足を埋めながら作業できるといった効果が出ており、サービスナウのCRMに移行後は、26日かかっていた業務を5日に短縮できたという。
 
ServiceNow Japan
鈴木正敏 社長

 同社は日本市場でも、CRM製品を注力領域に掲げる。ServiceNow Japanの鈴木正敏社長は、「これまでのCRMの課題は国内にも当てはまり、市場のニーズは非常に高い。ここは当社のワークフローが貢献できる領域であり、(CRM領域への注力は)合理的なターゲティングだ」と自信を見せる。一方で、「必ずしも既存のCRMを否定するわけではない」とも語り、「当社のCRMを全面的に使う場合もあれば、他社のCRMと得意な部分を掛け合わせる場合もあるだろう。顧客の要望に応じた提案をしていきたい」と意気込んだ。

 国内のパートナーからの反応も好感触のようだ。鈴木社長は「フロントオフィス領域で、業務プロセスと顧客データを統合するより大きな変革ができる製品として注目されている」と語った。パートナーへのトレーニング提供も進めており、他社CRMを扱う部隊のリスキリングに取り組むパートナーもあるという。
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