2025年上期も国内IT市場は堅調に推移し、ベンダー各社は安定した環境下で事業基盤を盤石にしつつある。一方で、安定した環境に満足せず、さらなる成長機会を求め、新たなビジネスで市場を切り開く動きも広がっている。週刊BCN編集部が注目するニュースを通じて、挑戦の一例を紹介する。
KDDI
PCと通信の一体提供サービスを開始
KDDI
那谷雅敏 常務
KDDIは1月21日、PCにeSIMを搭載し通信機能とセットで提供する法人向け新サービス「ConnectIN(コネクティン)」を開始した。スマートフォンでのeSIM普及やエッジAI活用の進展を背景に、PCでも常時接続のニーズが高まっていると分析。ConnectINではメーカー側が製品に通信機能を内蔵する際に必要となる回線の手配や運用をKDDIが担い、企業は初期投資を抑えて通信内蔵PCを導入可能となる。KDDIはレベニューシュアによって収益を確保する。ユーザーは通信費の月額課金から解放され、端末購入時に一括で経費計上できる。コネクティンにより、eSIM搭載PCのシェア8割を獲得したい考え。執行役員の那谷雅敏・常務は「コネクティンの事業売り上げで早期に100億円を目指す」とし、将来的にはPCだけでなく、監視カメラや信号機など多様な製品に通信サービスが標準搭載される世界を目指す。
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1月27日・2045号 )
アイレット
cloudpackでOCIの取り扱いを開始
アイレットの岩永充正社長(右)と服部章平・執行役員
アイレットは、クラウド導入・活用のフルマネージドサービス「cloudpack」で、米Oracle(オラクル)の「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の取り扱いを開始した。cloudpackでは「Amazon Web Serveces」(AWS)、「Google Cloud」(GC)に続き、マルチクラウド対応を強化。オンプレミスの基幹系システムのクラウド移行、事業系システムの構築など、顧客の層、用途を問わず、需要に応える構えだ。執行役員の服部章平・エンタープライズクラウド事業部事業部長は「cloudpackはインフラレイヤーのイメージがあるが、私たちはSIerであり、アプリケーション開発もクラウドネイティブでつくり込め、保守もできる。その部分も含めて広めたい」と展望。岩永充正社長は「クラウド移行を皮切りにサービスを広げていく時に、AWSやGCを使うケースは考えられ、その際にわれわれの本領を発揮できるのではないか」と話す。
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3月24日・2052号 )
Sansan
“渡す名刺”の活用へ新ソリューション
Sansan
寺田親弘 社長・CEO・CPO
Sansanは5月26日、営業DXサービス「Sansan」上で「デジタル名刺ソリューション」の提供を開始した。名刺を交換した相手に、自身の「デジタル名刺」を自動でメール送信する仕組みで、これまでSansanが主軸としていた“受け取った名刺”の管理・活用から、“ユーザー自身が渡す名刺”によるビジネスチャンスの創出へと事業領域を広げ、名刺情報の新たな用途を提案する。同社は新ソリューションを通じて、デジタル名刺の普及を狙うとともに、Sansanの認知拡大につなげる考えで、同日開いた発表会で寺田親弘社長・CEO・CPOは「Sansan事業にとってパラダイムシフトになる製品」と話した。新ソリューションは、紙の名刺交換で受け取った名刺をSansanに登録後、その登録した相手に自身の名刺情報をメールで自動で送る「デジタル名刺メール」を中核機能とする。受け取り側に名刺情報を残せる可能性が高まり、顧客との関係維持に役立つと同社はみる。
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6月2日・2061号 )
LINE WORKS
「紙」業務の効率化支援に進出
LINE WORKS
島岡岳史 社長
LINE WORKSは6月10日、紙の帳票の処理を効率化する「LINE WORKS PaperOn」と、問い合わせ対応の効率化を図る「CXトーク」を新たに発表した。ビジネスチャットだけにとどまらず、さまざまな製品を提供することで、現場のアナログ業務のデジタル化を推進する姿勢を示した。PaperOnは、例えば、店舗で顧客から受領した注文書をアップロードすると、内容を自動で読み取りデータ化する。本部の担当者にはLINE WORKSで通知が届き、本部でのシステム登録が円滑化される。帳票のフォーマットに従っていない注文依頼や、紙に顧客からの要望が追記されている場合でも、過去の処理履歴などを基に自動的にデータへの変換を行うことが可能という。CXトークは、LINE WORKSのオプションとして6月11日に提供を開始。社内、社外のLINE WORKSや「LINE」、Eメールなど多様な経路の問い合わせをまとめてLINE WORKS上で受け取れる。
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6月16日・2063号 )