2026年3月期の主要SIer通期決算は、堅調な国内IT需要に支えられて、おおむね好業績で着地した。NTTデータグループは国内外のSI事業が好調に推移するとともに、データセンター(DC)の譲渡益が後押しして連結売上高が初の5兆円を超えた。野村総合研究所は国内事業こそ好調だったが、不調が続く海外事業で1000億円近い減損処理を行ったため、増収減益に。TISは増収増益で、27年3月期までの3カ年中期経営計画の目標達成が視野に入ってきた。各社ともAI駆動開発を本格的に取り入れ、複雑で大規模なシステム更改に耐え得る開発手法の確立や、人的リソースの上流工程へのシフトといった構造改革を急ピッチで進めている。
(取材・文/安藤章司)
NTTデータグループ
売上高は5兆円の大台に
NTTデータグループは売上高が前期比7.9%増の5兆46億円で、初めて5兆円の大台に乗った。営業利益は50.7%増の4882億円、受注高は6兆円を超えた。うち海外売上高は9.4%増の3兆92億円で、全体の6割を占めた。海外事業セグメントにおけるDC譲渡益1295億円を計上したことで、海外営業利益は166%増の2665億円と大きく伸びた。
27年3月期は、売上高が3.7%増の5兆1900億円、営業利益は3.7%減の4700億円を見込む。DC譲渡益が700億円に減る予想であることが主な減益要因で、DC譲渡益の影響を除くと8.4%増の増益になる見通し。国内外の売り上げ増に加え、AI関連ビジネスの推進が利益の上振れに寄与するという。
NTTデータグループ
佐々木 裕 社長
同社は、AI関連ビジネスを主要な成長戦略として位置づけており、業界・業務に特化したAIエージェントの開発や、AIエージェントの業務手順を最適化するAIプラットフォームの開発を推進している。AIプラットフォームの開発では、25年末から本格的に事業をスタートさせた米国のAI専業子会社NTT DATA AIVista(エヌティティデータエーアイヴィスタ)が、北米における先行事例づくりに取り組む。保険や製造、銀行といった業種での活用を想定し、今夏には銀行向けに、「2000人で行っていた業務をAIエージェントを導入することで500人で行えるようになる見込み」(NTTデータグループの佐々木裕社長)とした。
DC基盤への投資も増やす計画で、26年3月期の25億ドル(4000億円)に対し、27年3月期は33億ドル(5280億円)の設備投資を行う予定だ。他社との合弁事業などで第三者資本も受け入れる予定で、実際には33億ドルを超える見込み。DC設備規模を示す電力供給量は、26年度が世界第3位の1.6ギガワットだったのに対し、30年度には倍近い3ギガワット級に増やして、「クラウド・AI推論のトップグループ入り」(佐々木社長)を目指す。
AI駆動開発によってプログラム作成をほぼ自動化できる見込みであることから、国内事業会社のNTTデータの人的リソースを、NTTドコモビジネスとの連携に振り向けることを検討する。NTTの島田明社長によれば、「年商1000億円超の企業は国内に約2000社あり、うちNTTデータと取引があるのは約500社なのに対し、NTTドコモビジネスは9割以上の顧客と接点を持つ」とし、NTTデータはコンサルティングから実装、運用まで深く顧客に入り込んでいるのに対し、NTTドコモビジネスは顧客接点の広さに強みがあるとした。
NTTドコモビジネスの顧客接点と、AI駆動開発によって生み出したNTTデータの人的リソースの余力を組み合わせる構造改革を実施することで、NTTデータが取引できていない1500社の仕事を請け負うことも可能になるとしている。顧客接点を持つNTTドコモビジネスと連携することで、「より広く、より深くビジネスを広げていく」(佐々木社長)。NTTドコモビジネスとの連携を円滑に進める構造改革の一環として、佐々木社長は6月18日付でNTTの代表取締役副社長に就任し、NTTデータグループ社長の後任には中山和彦副社長が昇格する予定だ。
野村総合研究所
海外で約1000億円の減損
野村総合研究所(NRI)は、売上高が6.5%増の8147億円、営業利益は56.8%減の582億円だった。豪州で約770億円、北米で約200億円の計1000億円近くを減損計上した。国内事業に限れば、売上高で8.2%増の7059億円、営業利益で20.5%増の1600億円と、増収増益で着地している。27年3月期の連結売上高は4.3%増の8500億円、営業利益は200.3%増の1750億円を見込む。
26年3月期は中計の最終年度で、国内事業が堅調に伸びたことから、中計で掲げていた全社の売上高目標8100億円は達成したものの、海外売上高は1087億円と目標値の1500億円には届かなかった。営業利益は海外事業の減損損失の影響が響き、目標値の1450億円に対して大幅な未達となった。減損の影響を除けば1566億円だった。
豪州での減損の背景には、注力領域の絞り込みが不十分で経営資源が分散したことが挙げられる。対策として豪州子会社の英国拠点から撤退し、強みである豪州域内の金融顧客への経営資源の集中を進める。米国事業は金利の高止まりやマクロ経済の不透明感が増す中で、大口顧客からの受注が停滞した。打開策として北米の事業会社の経営リソースを集約化し、製品・サービスの拡充と中堅企業顧客の開拓に力を入れる。
29年3月期までの新たな中計では、海外事業の規模拡大を追い求めず、安定成長が見込める事業領域で収益を確保することを重視。NRIが強みとする金融分野のSIの知見やIT基盤の知見を生かして、海外事業を再構築する。26年3月期の海外売上高は3.4%減の1087億円、営業損益は1017億円の赤字だったが、新中計では海外売上高1200億円、営業利益60億円を目標に据える。NRI全体では売上高を9500億円、営業利益2000億円の達成を目指す。
野村総合研究所
柳澤花芽 社長
重視する成長領域は▽AIによるビジネス変革▽セキュリティーサービスの充実▽社会共創サービスの拡大―の三つ。AIによるビジネス変革では、AI駆動開発を実行する市販の「汎用ツール」と、NRI独自の「開発モデル」の二つの手法を活用する。汎用ツールは新中計期間中にすべてのSIプロジェクトに応用し、独自の開発モデルは30年度までの実用化を目指す。独自の開発モデルは、金融や製造などの業種向けに適した「複雑かつ大規模なシステムに役立つ」(柳澤花芽社長)モデルを想定している。
AIによるビジネス変革では中計期間中に800億円を投じ、関連売上高を26年3月期の300億円から3000億円に拡大させる。セキュリティーサービスは200億円を投じて、33.1%増の1280億円に伸ばす。社会共創サービスは金融ビジネスプラットフォームの機能強化などに1050億円を投じて、21.6%増の2350億円に増やす計画を立てる。
TIS
中計目標の達成を射程内に
TISは売上高が4.3%増の5964億円、営業利益は10.4%増の762億円と好調に推移した。27年3月期の売上高は6200億円、営業利益は810億円の見込みで、同決算期を最終年度とする中計で掲げた売上高6200億円、営業利益率13.1%の目標達成を射程内に入れる。中計目標として設定した1人当たりの営業利益350万円は、1年前倒しで達成済みで、26年度は370万円を目標に据える。
注力分野でTIS独自のデジタル決済プラットフォーム「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を軸としたペイメント事業の売上高は、12.8%増の440億円に伸びた。PAYCIERGEのAI機能強化と並行して、モバイル決済やデジタル通貨など次世代決済を伸ばすことで27年3月期は500億円超の達成を視野に入れる。
また、金融や産業向けのモダナイゼーション専門組織が中心となって、基幹業務システムの刷新需要を開拓。中計期間中の3年間累計で200億円の事業規模を目指す。基幹システムのモダナイゼーションを通じて顧客接点を深め、ユーザー企業の戦略パートナーとして、事業成長や事業変革を支援するビジネスを伸ばす。
TIS
岡本安史 社長
同社では、AI駆動開発によって30年3月期までに生産性を50%高める目標を掲げているが、一部のSIプロジェクトの特定工程に限ると、納期や人月を半減させる水準に達するケースも出始めているという。これに伴い、コンサルタントやITアーキテクト、高度営業人材といったプロジェクトの上流部分を担う人材育成を加速させ、余剰人員が発生しないよう努める。岡本安史社長は、「AI駆動開発によって案件の回転率を高め、顧客接点となる前線をリードする人材を増やす」ことで、人材の高度化や前線配置の推進を図り、売上高や利益を伸ばすことが十分可能だとみている。