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SOFTBANK BB メーカーとともにデジタルライフを支援 店頭ソフトウェア市場の活性化をもたらす「SoftBank SELECTION」を発売

2007/11/27 19:56

週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載

 ソフトバンクBBは、総合デジタル情報カンパニーからライフスタイルカンパニーへと本格的に始動する。その基本コンセプトになるのが、ソフトバンクグループがセレクトする、生活アクセサリー商品の新ブランド「SoftBank SELECTION」である。顧客のデジタルライフを他社との協業によって創造していく取り組みは、携帯電話関連、パソコンのソフトウェア、周辺機器へと拡大している。そこで、コマース&サービス統括CN事業推進本部SBセレクション推進室新規ビジネス企画課の橋本雅斗課長に発売の狙いを伺った。

■ブランド力を活かし、ソフトウェア市場を盛り上げる

 ソフトバンクBBは、通信インフラやポータル、サービス、コンテンツなどを提供してきた。それにより、「ソフトバンク」のブランドは、市場に深く広く浸透し、現在、多くの顧客に親しまれている。

 そして今回、そのブランド力、拡大する販売ルートを活かし、メーカーと一緒にユーザーにデジタルライフをもっと楽しんでもらうために、企画、製品を提供していくのが、「SoftBank SELECTION」の使命だ。

 すでに、今年6月からソフトバンクショップで商品展開が始まっている携帯電話関連のアクセサリーに続き、グループ企業(100%子会社)である「BBソフトサービス」が販売元となってソフトウェアパッケージを11月30日から発売していく。何といっても、ソフトバンクBBにはパッケージ流通サービスの最大手という看板がある。

 パッケージ流通サービスが自ら商品を提供することについて、橋本雅斗課長は、「最近のソフトウェア市場における発売メーカーの減少、効率化重視の店頭展開を懸念していました。そこで、メーカーには開発に集中していただき、企画から製造、販売、サポートを当社グループが担当することでより良い商品をセレクトし、提供しようと考えたのです」と狙いを明かす。

 「最初に発売する10タイトルは、ウイルス対策や翻訳、ビデオ編集、囲碁、マージャンなどです。BCNランキングの37のソフトウェアのカテゴリーを参考に、当社でそれを11グループに分類し、パッケージの帯を色分けするなど工夫を凝らしながら、提供できるものから始めていくことになりました。ゆくゆくは37カテゴリーすべてで商品展開ができればと考えています」(橋本氏)。

 ただし、ソフトバンクBBがソフトウェア販売に乗り出すことで、メーカーが警戒感を抱くことも否定できない。このため、多くのメーカーには発売にあたり事前に説明を行い、そのほとんどのメーカーから賛同や激励を受けたという。“共存”と“競争”があってはじめて市場が拡大する。それを踏まえたうえで、賛同を得たことに大きな意義がある。

■役割分担を明確化 メーカーとの協業でニーズを開拓

photo 「SoftBank SELECTION」では、ソフトバンクBBが販売を行い、BBソフトサービスが商品企画、製造、サポートを行う。マーケティング、広告・販促活動はベンダー、ソフトバンクBB、BBソフトサービスで協業し実施していく。

 例えば、新規にソフトウェアを開発したメーカーはどこまで機能を付加したら良いか悩んでいるところが多い。実際、載せなかった機能を次のバージョンで載せたら売れたということが日常的に起きている。前の段階で顧客ニーズをキャッチして商品を出していければ、メーカー側の効率も向上する。そうしたマーケティングとの連動にも、まさに同社のノウハウが求められることとなる。

 また、最近のパッケージは、逆に多機能化する傾向にあるが、購入した顧客のすべてがそれらの機能を使いこなしているとは限らない。

 そこで、基本的な機能のコアになるソフトウェアを購入し、あとから必要な機能をアドオンするといった、メーカー間の枠も越える『機能の融合』、既成概念に捉われない商品の提供を、「SoftBank SELECTION」を通じて展開していくという重要な役目も担っている。

 ユーザーが求めるこうした新しいチャレンジを積極果敢に展開できるのも、パッケージ流通最大手であるソフトバンクBBの大きな強みといえるだろう。

 さらに、これからは年末に向けた店頭キャンペーン、プロモーションなどを計画し、商品の認知度向上、売上増加を後方支援していく。

 一方、サポートにおいても、通信インフラで500万人規模をサポートしているコールセンター業務にPC関連の内容をアドオンし、パソコンの基本操作に関わるメーカー負担の軽減にも取り組んでいく構えだ。

 「当社は事業領域が広いので、多様な要求に応えられるサポート体制が整っています。ソフトウェア特有の要求仕様などを付加することで、コンタクトセンター・アワードで金賞を取った実績を持つ十全なサポート力が存分に機能すると思います」(橋本課長)。

 企画、マーケティング、販売、サポートなど、今まで以上にメーカーと密接な環境を築いていくことになるが、「ソフトバンク」のブランドに頼ることなく、メーカー自身が市場を切り開いていくことも大切になってくる。

 「ソフトウェア市場は、すべての顧客のニーズを充足しているかというとそうではありません。もっと大きな潜在需要があるはずなのに、今は落ち着いてしまった感があります。今回のSoftBank SELECTIONが、新しいニーズをもったユーザーの掘り起こしに貢献できるよう、メーカーとともにチャレンジしていきます」(橋本課長)。

 「SoftBank SELECTION」の発売は、ソフトウェア市場を活性化する大きな原動力となるだろう。今後の製品の充実、サポートなど、パソコンを使って生活を豊かにするアイテムがまた一つ加わった。
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求める機能が一目でわかるパッケージ
2008年には100タイトルを投入 ワンストップで満足度向上

 「SoftBank SELECTION」は、メーカーのソフトウェアをセレクトして、ソフトバンクブランドのもとに提供していくことになるが、メーカーが提供するものとは異なる仕掛けが用意されている。それにより、販売店に並ぶことで市場にどのような化学反応がもたらされるのかが注目される。

■わかりづらさからの開放 明確化を取り入れたデザイン

 店頭に並ぶソフトウェアの中には、製品名やデザインが前面に押し出され、見た目では機能がわからないものが少なくない。「SoftBank SELECTION」では、選択のしやすさを取り入れたパッケージデザインを採用している。

 「顧客が求める機能がひと目でわかるように、3つのポイントをパッケージデザインに取り入れました。そのひとつが、何ができるかを示すニーズの明確化です。パッケージに大きくビデオ編集、画像編集と書かれているので、迷うことがなくなります。また、対象者が誰なのかを示す対象者の明確化を、初心者、中級者、上級者のアイコンで表示します。最後にサービスの明確化。通常のコールセンターによるサポート以外に、オンサイトサービスやシステム変更などを求める人がいます。そうした方には訪問サービスやリモートサービスが受けられる有償のプレミアムサービスを用意していきます」と、デザイン一つにもこだわりがあることを橋本課長は強調する。

 そうした見やすいデザインに彩られたソフトウェアのタイトル数は、11月末に10タイトル、2008年2月に25タイトル、来年中には100タイトルを顧客が求める機能を厳選し、商品化される予定だ。

■ソフトウェアの潜在需要は大きい 求められる多様なニーズへの対応

 一般的にソフトウェアは、パソコンショップや家電量販店、Webからのダウンロード、ASPなど様々な方法で購入できる。しかし、潜在需要は大きいものの、日本におけるパソコン保有率に対してのソフト利用率の低さを指摘する声は一向に減る様子はない。

 携帯電話大国の日本ならではの現象ということもできるが、それを差し引いても、ソフトを利用してやりたいことを実現する人の数は少ない。

 他のデジタル家電では、インフラとしてのハードウェアがあり、ソフトウェアにヒット作があればソフト利用率は一気に上がる。PCのソフトウェアにもベストセラーはあるものの、面白さ、楽しさへの“気づき”がまだ伝わっていないともいえる。

 また、購買を促進する要素として、価格設定も重要なウェートを占める。現在、ソフトウェア市場では、2000円前後の価格帯のソフトウェアが人気を博している。しかし、スキルの高い人が使えるソフトウェアなど、適正な値段をつけたバリエーションを増やしていくことも市場の拡大には不可欠になってくる。

 「価格が購入の障壁になるのであれば安価な商品を揃えていくのも一つの方法です。しかし、それ以上に大切なのは使う側、つまり利用者が満足できるかどうかです。次の購入につながる、価格と機能のバランスが求められるでしょう」(橋本課長)。

 「SoftBank SELECTION」は、デザイン性、機能性、価格などのキーワードに対し、顧客の視点から商品化を進めている。今後は、協業関係をさらに強化し市場を活性化させる起爆剤となるものをセレクトする、あるいは他メーカー同士の機能を融合して新たに企画するなど、購買意欲を刺激するソフトウェアの商品化に期待がかかる。

■販売ルート拡大で市場も広がる フックアップで購買促進

 「SoftBank SELECTION」は売り手からも歓迎されている。

 すでにソフトバンクショップで発売されている携帯関連の商品の状況は、「ソフトバンクショップは携帯電話の契約を取ることには積極的ですが、物販に対してはこれまで積極的に取り組み難い環境にありました。そこにソフトバンクブランドの商品を店頭で販売することによって、販売店は確実に携帯電話と相乗的に商品を勧めやすくなりました。利用者にも携帯と連動した商品は買いやすいと好評です。やはり、1対1の接客が商売の基本となっているので、ひとことトークに添えることによって満足度が得られるのでしょう。まだ品揃えはこれからですが、最低限必要なものは揃えていますので、ワンストップで提供できるようになってきました」と、橋本課長は、販売店、利用者双方に高く評価されていると語る。

 ソフトウェアは、パソコンとの親和性が求められるので、新しいチャネル開拓は時間を要する部分もある。自社の携帯電話ショップでの取り扱いについても、まずは一部の携帯関連ソフトに限定し、新たなニーズがあればそれに応えていくというスタンスが取られる見込みだ。

 「今までにもいろんなルートの開拓にチャレンジしてきましたが、まず、これまで行ってきたチャネルから、きちんと必要な人にリーチして、それからチャネルを拡大していきたいと思います」(橋本課長)。

 他の業界では、効率を求め過ぎた結果、品揃えが減少し、長期的な対応が出来にくくなったという。そうした効率性の追求だけでなく、ユーザー主導型の市場形成が重要なポイントになる。

 例えば、ソフトバンクショップに足を運んだ人が、携帯電話のメモリーを見たとき、利用シーンが連想できるので、今までなら見過ごしていたものが購入にまで結びつく。さらに、ソフトバンクブランドが付いているならば、安心なので使ってみようとなる。

 重要な販売パートナーとなる家電量販店にとっても、そうした、フックアップの率が上がってくることでビジネスチャンスが高まる。一番のキーポイントは、もっと便利に、もっと楽しく、デジタル生活を送りたいという潜在的なニーズの掘り起こしというわけだ。

 まさに、そういったチャンスを増やしていくことが、市場を元気にする「SoftBank SELECTION」の役目となってくるだろう。

 今後は、「携帯電話関連は、Windows Mobile関連の商品化を進めていきます。それに伴い、周辺オプションの商品化も企画しています。ソフトウェアは、まずは11月末からの10タイトルをはじめ、徐々に品揃えを充実させていきます。さらに、市場性を調査、分析しながら、今後は周辺機器についても商品化の可能性を探っていきます」と、「SoftBank SELECTION」のラインアップ拡充に乗り出すと、橋本課長は今後の抱負を語る。

 ライフスタイルカンパニーへ本格始動する中で、ソフトウェアメーカーにとって、また販売チャネルにとっても、「SoftBank SELECTION」の立ち上がりに期待がかかる。(週刊BCN 2007年11月26日号掲載)
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