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リバーベッドテクノロジー、パブリッククラウド向けWAN高速化製品でパートナー販売を本格化

2011/01/31 19:55

 リバーベッドテクノロジーは、このほどパブリッククラウド向けのWAN(Wide Area Network)最適化ソリューション「Cloud Steelhead」と、クラウド型ストレージのデータ転送を高速化する「Whitewater」の提供を開始した。クラウド市場は、企業内に設置するプライベートクラウドが先行して拡大したが、ここにきてパブリッククラウドの需要も高まってきたと判断。WAN高速化装置との連携で、「Amazon EC2」を筆頭とするパブリッククラウドのサービスを高速化する領域へ進出した。国内では、IaaSインフラを保有するための資金やノウハウに乏しい中堅システムインテグレータ(SIer)やホスティング事業者などのうち、クラウド・サービスの展開を検討しているベンダーに向けて両製品を売り込む。

クラウド向け製品の第2、第3弾を投入

 リバーベッドテクノロジーは、これまでWAN高速化装置の「Steelhead」やパソコン向けソフトウェア「Steelheadモバイルクライアント」などの製品を提供。WAN越しの拠点間や、拠点とモバイル端末間などのWAN高速化環境を提供してきた。

 2009年11月には、クラウドコンピューティング環境の普及を見越して、その前段階でシステム最適化を支援する仮想ソフト上で仮想マシンとして稼働するアプライアンス「Virtual Steelhead」の提供を開始。ユーザーがVMwareなど、既成の仮想化ソフトを使ってサーバー統合を行ったサーバーマシン上で、既存環境に与える影響が少ないソフトとして、好評を博した。

リバーベッドテクノロジーの伊藤信・マーケティングマネージャー

 10年11月には、パブリッククラウドの利用拡大をにらんで、「Cloud Steelhead」と「Whitewater」の出荷を開始。「Virtual Steelhead」に次ぐクラウド利用環境に向けた製品を投入した。伊藤信・マーケティングマネージャーは「パブリッククラウド向けのWAN高速化製品は、これが業界初となる。パブリッククラウドのユーザーやこれから使おうとしている企業、そしてクラウドプロバイダ向けに付加価値を提供できる」と、移り変わるIT環境の変化に応じ、WAN高速化を実現できるようになったと説明する。

アマゾン環境のWAN高速化を簡単に実現

 新たに投入した「Cloud Steelhead」は、「Amazon EC2」のパブリッククラウドと他の「Steelhead」製品との間を高速化する。クラウド・サービス側でインフラが仮想化していることが前提で、ハイパーバイザー上に同社提供のエージェント「Steelhead Discovery Agent」を導入する。これによって、ユーザー側の「Steelhead」アプライアンスと仮想サーバーの通信を高速化できるのだ。

 しかし、導入が煩雑では、パブリッククラウドの利用を希望するユーザーにWAN高速化の利用が進まない。そこで同社は、高速サービスの利用を簡素化するため、設定や導入、アップグレード、契約管理などの手続きのすべてがワンストップでできるポータル「Riverbed Cloud Portal」を用意し、クリック3回で「Cloud Steelhead」を導入できるようにした。

 伊藤マネージャーは、「ポータルから『Amazon EC2』のアカウントを登録すると、『Cloud Steelhead』が割り当てられ、サーバーのIPアドレスを入力すれば完了する。Cloud Steelheadがクラウド・サービス側にインテグレーションされているので、簡単なプロセスで導入できる」という。


 「Cloud Steelhead」の契約期間は1か月単位(現在提供できる期間は6か月から)での月額課金制。現在、同サービスは、「Amazon EC2」でのみ利用できるが、今後は他のクラウド事業者へも対応を拡大していく計画だ。当初はサービスのライセンス販売をリバーベッドが直接行うが、国内では販売パートナーを経由した購入も可能にしていくという。また、このサービスを自社クラウド・サービスのオプションとして検討したいというクラウド事業者には、OEM(相手先ブランドによる供給)サービスでの提供も視野に入れている。

クラウド型ストレージも容易に高速化

 一方の「Whitewater」は、クラウド型のストレージある「Amazon S3」、「AT&T Synaptic Storage as a Service」、また「EMC Atmos」基盤のクラウド型のストレージのパフォーマンスを向上させる製品だ。バックアップの対象を「Whitewater」に振り分けるだけで高速化が実現し、クラウド型ストレージにデータを自動保存する環境が整う。クラウド側の重複排除を行うことで転送量を減らせるので、データの保存やバックアップ、リストア、リカバリにかかる時間を大幅に短縮できる。


 伊藤マネージャーは「データ量など、条件によって、ストレージ枠を伸縮自在に使うことができる。既存のストレージからクラウド側ストレージに利用環境を移行するためのプロセス変更や、アプリケーションの書き直しなどが簡単にできる」という。

 「Whitewater」には暗号化機能を搭載。また、8/16TBのハードウェアアプライアンスや仮想アプライアンスを用意する。「Whitewater」と連携するバックアップソフトは、現在のところシマンテックやIBMなどの製品に限られる。販売は、「ストレージやバックアップ製品を提供するSIer経由の販売を推進していく」(伊藤マネージャー)という。

 いま、パブリッククラウドの利用者は増加傾向にある。しかし、ビジネス利用では、業務の非効率化につながるレスポンス処理速度の遅さが問題視され始め、ユーザー企業に二の足を踏ませることにもなりかねないと懸念されている。リバーベッドが新たに投入した製品・サービスは、こうした阻害要因を解消し、パブリッククラウドの成長を後押しする。


 クラウド・サービスを提供する側からみれば、「Cloud Steelhead」は、「Amazon EC2」上のパブリッククラウドで新たなサービスを展開したいSIerやクラウド事業者、そしてエンドユーザーにと幅広い層に訴求できる次世代の商材となりそうだ。
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外部リンク

リバーベッドテクノロジー=http://www.riverbed.com/jp/