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天津提愛斯海泰信息系統有限公司 「JP1」を活用し中国でデータセンタービジネスを展開 高品質な運用監視を日系企業に

2011/11/02 19:55

週刊BCN 2011年10月31日vol.1405掲載

 金融業界向けのシステムを得意とする国内大手SIerのTISが、天津市の投資会社・海泰集団と合併して設立した天津提愛斯海泰信息系統有限公司(天津TIS海泰)。天津TIS海泰のように、中国全土で建物の設計段階から関わった自前のデータセンター(以降、DC)をもっている日系企業はまだ少ないのが現状だ。同社では「『ジャパンクオリティ』を『チャイナスタンダード』で提供する」というコンセプトのもと、日立製作所の統合システム運用管理製品「JP1」を採用。日本のDC運営ノウハウを生かした、きめ細かい運用監視サービスで、中国市場に進出する日系企業をサポートしている。

「日本品質」を中国で
自社保有のDCを天津市で開業

丸井崇 董事 総経理
小柳隆司 専業服務部副総監
肥田圭介 首席技術官
専業服務部総監
 天津TIS海泰は、2010年4月に「天津濱海高新インターネットデータセンター(濱海高新IDC)」を全面開業し、中国国内でアウトソーシング事業を展開している。同社には今、そのサービス品質の高さから、日系企業からの関心も高まっている。

 中国全土をみても、天津TIS海泰のように自前のDCをもっている日系企業はまだ少ない。日本のDC運営思想に基づいてセキュリティ体制を構築しているだけでなく、中国の複数キャリアとのアライアンスによって、信頼性の高いキャリアフリーのネットワークを提供できることを強みとしている。第一期施工分の200ラックはほぼ完売し、開業当時から目標として掲げている1200ラックの販売に向けて、好調な推移をみせている。

 天津TIS海泰の丸井崇董事 総経理は「高品質な運用監視を中国の現地価格で利用できることが日系企業のお客様にとって最大のメリットになります。高度な運用監視ノウハウは、現地のDC事業者が視察に訪れるほど注目を集めています」と語る。

 親会社である日本国内大手SIerのTISは、金融向けシステムを得意とし、40年以上のアウトソーシング経験をもち、日本国内では9か所のDCを運営している。日本のDC運用思想を組み込んだ天津濱海高新IDCは、日本と同等の高セキュリティ・高品質なサービスを提供することができる。この運用監視を支えているのが、日立製作所の統合システム運用管理製品「JP1」である。「JP1」には、TISの日本におけるDC運用ノウハウが凝縮されている。「日立製作所様の海外での実績や、中国における『JP1』のサポート体制が確立されていたことも、製品選定のポイントとなりました」(丸井董事 総経理)と評価する。

 天津TIS海泰は、「JP1」をDC運用基盤として導入するにあたり、これまで培った運用監視の考え方を組み込ながら設計・構築を行った。その際「JP1」に種々のカスタマイズを実施している。天津TIS海泰の小柳隆司副総監は「DCでは一つのツールを活用して、複数顧客の個別運用監視を統合的に行っていく必要がありました」とシステムの要件を説明する。そのため、「JP1」をカスタマイズして、オペレータの監視画面で顧客にユニークIDを付与する機能を追加した。

 また、多くの顧客から「サーバー入れ替え時やメンテナンス時に出るエラーメッセージを抑止してもらいたい」という要望が挙がっていた。そこで、不要なエラーメッセージをシステムに事前登録することで、自動静観する機能を組み込んだ。

 さらに「JP1」が標準で提供している、メッセージ画面から視覚的にステータスを識別できる機能に手を加えた。正常なステータスの場合はメッセージ画面にそれを表示しないように変更するとともに、オペレータがエラー対応を終えたタイミングでも、メッセージを画面上から消去する仕組みに変更したのだ。画面上からエラーメッセージを消しても過去ログとして記録が保持されているため、後で参照することができる。

 また、ネットワークでは、マルチキャリア環境でキャリアの切り替えを自動的に行えるBGP*接続を採用。万一障害が発生した場合にも、他のキャリアネットワークに接続することが可能となっている。アジア最大の通信事業者であるパックネットとの提携により、国際回線接続も実現。信頼性高いネットワークサービスにより、グローバル企業の拠点としても天津濱海高新IDCを利用できる。

 システムの工夫に加えて、オペレータの運用手順書を整備し、現地で人材を採用して、運用オペレータに育成することで、きめ細かくも効率のよい運用管理体制も実現している。

クラウドサービス開始で事業強化
「JP1」の仮想化対応強化に期待

 天津TIS海泰は、今後、ハウジングだけでなく、クラウドサービス販売の両輪を回すことで、DC事業の拡大を狙う。2011年3月、天津TIS海泰は中国の大手コンピュータメーカーである曙光と提携して、PaaS/IaaSサービスである「翔雲(シャンユン)」を新たに開始した。

 ハウジングはいわば「不動産」を販売しているのと同じなので、他の地域の企業へ拡販しようにも、距離の問題が障壁となっていた。クラウドサービスを展開することで、場所の概念は気にせず、幅広い地域に販売のすそ野を広げていくことができる。運用監視の費用も料金に含まれているため、信頼性の高いサービスを享受できる点で日系企業が利用する価値は大きい。

 天津TIS海泰専業服務部の肥田圭介総監 首席技術官は「クラウドサービスは、お客様のご要望にあわせてリソースの変更を行えることが利点の一つです。今後は、リソースの監視状況をリアルタイムに把握できるようにすることで、お客様からもやりたいことを速やかに反映できる、競争力あるサービスの展開を視野に入れています」。

 そうした点を踏まえて、天津TIS海泰が「JP1」に要望することは、仮想環境への対応強化だ。「仮想環境は中国でも非常によく使われています。お客様からお預かりするシステムも、仮想技術を活用していることが多いので、仮想環境に適した監視での『JP1』の強化に期待しています』(丸井崇董事 総経理)。

 今、中国市場でも高度なセキュリティやSLA*契約に対するニーズは高いが、一方で、それに応えるだけの設備や運用体制をもっているDCは少ない。そのため、顧客から天津TIS海泰に問い合わせがくるケースが増えている。「JP1」の性能と、日本で培ったDC運用ノウハウを最大限に生かした天津TIS海泰の天津濱海高新IDCならば、日系企業も安心してサービスを任せられる。


*BGP:Border Gateway Protocol
*SLA:Service Level Agreement

●お問い合わせ先

HMCC(日立オープンミドルウェア問い合わせセンター)
0120-55-0504
利用時間 9:00~12:00、13:00~17:00(土・日・祝日・弊社休日を除く)
携帯電話、PHS、一部のIP電話など上記フリーダイヤルがご利用いただけない場合 TEL(03)5439-2733
■ 情報提供サイト 
http://www.hitachi.co.jp/soft/jp1/
・天津提愛斯海泰信息系統有限公司



 天津TIS海泰は、国内大手SIerのTISと、天津市の投資会社である天津海泰控股集団の合弁企業として2008年2月に設立。2010年4月に全面開業し、中国市場向けにITアウトソーシング事業を展開している。顧客の構成比は中国現地企業が5割、外資系企業が3割、日系企業が2割。
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情報提供サイト=http://www.hitachi.co.jp/soft/jp1/