「Microsoft Windows Server 2012」は、さまざまな点で機能が強化された最新サーバーOSだ。NECは、高可用性仮想化ソフト「Hyper-V」に注目し、自社開発の高可用性HAクラスタリングソフト「CLUSTERPRO」と組み合わせることで、システムに障害が発生した時、システムを止めることなく業務の切り替えを行えるようにした。進化した「CLUSTERPRO」について、第一ITソフトウェア事業部主任の冨士枝 剛氏に話を聞いた。
機能やサポート強化で支持を獲得

第一ITソフトウェア事業部
主任
冨士枝 剛氏 NECが提供する「CLUSTERPRO」は、サーバーの可用性を高めるHAクラスタリングソフトだ。ハードウェアとソフトウェアの利用状況を常時監視し、障害の予兆を検知することで、障害が発生する前に健全なサーバーに業務を引き継ぎ、ビジネス機会の損失を防ぐ。金融業や流通業など、ミッションクリティカルなシステムに導入されているほか、生産・受発注システムなどの業務システムにも採用された実績が数多くある。導入目的も多様化しており、障害対策だけでなく、計画的な保守や広域災害による業務停止を防止するために導入されるケースも増えてきた。
第一ITソフトウェア事業部の冨士枝 剛主任は、「『CLUSTERPRO』は、1996年の発売以来、システムのダウンタイムを最小化することに注力して開発してきた。ユーザーの声や市場のニーズに応え、仮想化対応や遠隔地間のクラスタリングなどの機能追加・強化も行っている。サポート体制も強化しており、安心して運用することができる環境を整えてきた」と説明し、自信を示している。
ユーザー企業は、これらのNECの製品開発における姿勢と取り組みを高く評価している。その結果、「CLUSTERPRO」はクラスタリングソフトで国内トップシェア(IDC Japan、2012年7月「国内システムソフトウェア市場2011年の分析と2012年~2016年の予測」)を獲得している。
仮想化進み提案しやすい環境に
「CLUSTERPRO」が多くのユーザーに支持されているポイントとして、クラスタ構成を柔軟に選択できる点が挙げられる。通常、HAクラスタリングソフトは、サーバーが切り替わっても業務を継続するために共有ディスクを利用する。しかし、この構成では、共有ディスクを利用するほどデータをもっていないシステムや、省スペースで可用性を高めたいというニーズには適していないシステムになってしまう。
「CLUSTERPRO」では、共有ディスク型のほか、共有ディスクを利用せずにサーバーの内蔵ディスクをミラーリングすることで業務データを引き継ぐデータミラー型のクラスタ構成も利用することが可能だ。この構成では必要な機器が少なくて済み、低コスト・省スペースでクラスタシステムを構築できる。
また、「CLUSTERPRO」は、「Microsoft Windows Server 2012」に搭載されているHyper-Vの「ライブマイグレーション機能」と組み合わせることで、障害時に無停止で業務の切り替えを実現できる。「ライブマイグレーションを使えば障害対策に利用できると誤解されることが多いが、システムが正常に動作することが前提となるライブマイグレーションは、障害が発生してからでは正常に動作しない」と冨士枝主任は問題点を指摘する。つまり、仮想環境の障害対策を実施する際も、「CLUSTERPRO」は欠かせないツールなのだ。
Hyper-Vは、仮想マシンに割り当てられるITリソースが大幅に向上しており、これまで仮想化したくてもできなかったデータベースサーバーなどを仮想化しやすくなった。そのため、仮想環境への移行がさらに促進されることが予想される。
このような環境が整うことで、仮想環境における高可用性も実現する「CLUSTERPRO」を必要とするシステムは増加し、販売店にとって提案しやすい環境が整うだろう。同社の「CLUSTERPRO」関連のビジネスが伸びるのは必至で、パートナーのビジネスチャンスも増えるはずだ。

ライブマイグレーション連携により業務無停止での切り替えを実現(写真/津島隆雄)