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日本マイクロソフト 「クラウド スターターパック」でISV支援を強化 ともにビジネスを拡大するパートナーシップ構築へ

2016/05/19 19:55

週刊BCN 2016年05月16日vol.1628掲載

 日本マイクロソフトは、国内ソフトウェアベンダー(ISV)が提供している既存アプリケーションを、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(Azure)」上でのクラウド化を支援するクラウド スターターパックの提供を4月11日に開始した。アプリケーション移行支援や技術的トレーニングに加えて、クラウド化によるビジネスモデル確立の支援など、包括的なサービスを一体で提供する。また、アプリケーションを販売するためのマーケットプレイスやデジタルカタログサイトも用意する。日本マイクロソフトではISVとのパートナーシップをさらに深める方針だ。

「ビジネス支援」が大きな強み
ISVが儲かる仕組みを提案

海外のユーザーを獲得する可能性がある
「Azure Marketplace」

奥主 洋
デベロッパーエバンジェリズム統括本部
ISVビジネス推進本部
本部長

 日本マイクロソフトがクラウド スターターパックで提供する支援内容は、オンサイトによるAzure技術トレーニング(3日間)をはじめ、アプリケーション移行、Azureのボリュームライセンス契約、ISVソリューションの販売プロモーションなどだ。この支援を受けるための価格は320万円(税別)。5月31日までに申し込めば200万円で提供するキャンペーンも実施している。

 デベロッパーエバンジェリズム統括本部でISVとのパートナーシップ深耕を担当する奥主洋・ISVビジネス推進本部本部長は、「ユーザー企業が望むソフトウェアをクラウド化することが大前提。そのため、IP(知的財産権)のコンテンツをもっているISVが対象となる。そのISVに対して技術支援だけでなく、マーケティングを含めたビジネス支援を行う点が大きな特徴となる」と説明する。

 ISVはアプリケーション移行支援で、検証項目などの作成やQ&Aによる技術支援と、クラウド化に必要なビジネスコスト・期間・タスク・体制などのシミュレーション支援のどちらかを選択することができる。技術支援だけに特化しなかったのは、クラウド化への壁が高いとの見方があるなか、できない理由が技術面だけというわけではないからだ。

ISVと販売パートナー/ユーザー企業をつなぐ
「パートナー ソリューション デジタル カタログ」

 「かつてはオンプレミス型システムに対してパッケージを提供。その後、ダウンロード販売というビジネスモデルが出てきて、今はクラウドでのサービス提供が主流になりつつある。そのなかで、『クラウド化によって、どのようにビジネスを成立させればいいのか』というISVからの声を聞く。クラウドプラットフォームベンダーとして、当社がきちんと儲ける方法を提案することが重要だと判断した」と奥主本部長は強調する。

ISVと販売パートナー/ユーザー企業をつなぐ
「パートナー ソリューション デジタル カタログ」

 なお、技術支援については日本マイクロソフトからトレーニングを受けた認定パートナーが実施。技術面でクラウド化に踏み出せなかったISVを手厚く支援する体制も整えている。

セキュリティと強固なDCがメリット
4ケタの対応アプリが揃う可能性も

 Azureによるクラウド化を進めるメリットについては、まずクリティカルな業務システムの運用に耐え得るデータセンター(DC)を、東日本と西日本に整備していることが挙げられる。奥主本部長は、「国内で、しかも2か所で運用している体力は他社との差異化につながる。ISVにとっては、安心・安全なクラウド環境が利用できるということ」としている。

 また、日本マイクロソフトがAzureを展開していくなかで、最も注力しているのがセキュリティだ。直近では、注目を集めたマイナンバー関連のクラウドサービスをAzureを通じて提供している例も出てきている。「機能面では数百レベルで開発してきたが、それは他社も同じこと。今は、そこでの勝負ではないと捉えている。企業が目指すセキュリティレベルの基準に十分に達している環境が強み」と奥主本部長はアピールする。

 WindowsベースのアプリケーションだけでなくLinuxやJavaなどもサポートし、多くのISVが既存資産を生かしてクラウド化できる点もメリットだ。さらに、Active DirectoryによるID、アクセス管理で、「Office 365」など他のクラウドサービスとのシングルサインオンが実現できるほか、「Azure IoT Suite」などAzure上のさまざまなサービスを活用することもできる。ISVが自社アプリケーションに付加価値を上乗せしたソリューションを簡単に構築できるということだ。

 このようなメリットを武器に、クラウド スターターパックを利用するISVを獲得していくわけだが、「すでに動き出したISVがいる」と、奥主本部長は利用が始まっていることを示唆する。日本マイクロソフトでは、提供開始後1年間で200種類のアプリケーションを揃える見込みだが、幸先のいいスタートを切っていることから「見込み以上、いや、もしかすると4ケタのアプリケーションを用意できる可能性も秘めている」(奥主本部長)と自信をみせる。

マーケットプレイスで海外販売が可能に
カタログサイトでISVが販社を獲得できる

 4ケタのクラウド対応支援が実現できると踏んでいるのは、日本マイクロソフトが「Azure Marketplace」というアプリケーションを販売するマーケットプレイスをもっていることにもよる。

 Azure Marketplaceでは、各アプリケーションを「Virtual Machines」「Webアプリケーション」「データサービス」など、さまざまなジャンルに分けて販売。アプリケーション数は、Virtual Machinesだけで650種類以上が用意されており、全部で4ケタ近いラインアップが揃う。日本を含めて、これまでもワールドワイドでクラウド化の支援に取り組んできており、クラウド スターターパックでは販売プロモーションの一環として、「Azure Marketplaceでの販売を促している」(奥主本部長)という。ISVに対する販売促進の強化とグローバル展開のサポート拡充につなげるという。

 また、日本だけのプロモーション強化策として「パートナー ソリューション デジタル カタログ」サイトへの掲載による各ISVの製品訴求強化にも取り組んでいる。パートナー ソリューション デジタル カタログは、ISV各社の製品やソリューションの詳細をカタログベースで確認できるサイトで、話題のソリューションやキーワード、業種などで検索することができる。

 奥主本部長は、「ユーザー企業だけでなく、SIerやディストリビュータなども利用が可能。ISVにとっては、販売パートナーを獲得することにもつながる」としている。クラウド スターターパックでは、販売プロモーションの強化策として、パートナー ソリューション デジタル カタログの利用も促している。

ISVとの協業はグローバルでの取り組み
パートナーとともにクラウド拡大を図る

 2014年2月、CEOにサティア・ナデラ氏が就任し、米マイクロソフトは「クラウド・ファースト」の時代に突入している。その流れのなかで、パートナーとともに「エコシステム」を構築する方向へと進んでいる。

 日本マイクロソフトでも、クラウド関連ビジネスの拡大に向けてパートナーとの協業強化を急速に進めており、その重点施策として「ISVのクラウド化」に取り組む方針を発表。奥主本部長は、「マイクロソフトの製品・サービスだけで完結はしない。ユーザー企業によるクラウドへのシフトを支援するためには、パートナーとのエコシステムを拡大することが不可欠」としている。クラウド スターターパックは、パートナーとなり得るISVの裾野を広げながらパートナーシップをさらに深めて、Azureのユーザー企業を増やすという狙いがある。ダイレクトにビジネスを手がけるクラウドサービス事業者が多いなか、日本マイクロソフトはパートナーを重要視するという他社とは一線を画した戦略で、国内クラウド市場で主導権を握る方針だ。

本記事でご紹介の『クラウド スターターパック』には下のWebサイトから直接お申込みいただけます。
Microsoft Azure 「クラウド スターターパック」早期申し込みキャンペーン
https://www.microsoft.com/japan/msbc/Express/campaign/azure_starterpack/default.aspx
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外部リンク

日本マイクロソフト=https://www.microsoft.com/