成熟市場といわれる国内プリンター市場だが、依然として需要は堅調に推移している。プリンターの集約化が進む一方、業種・業務への特化や働き方改革に関連したソリューションとしての提案も活発になっている。新たな需要をつくり出すため、各メーカーはどのように取り組もうとしているのか。座談会では2018年の市場の振り返りと、2019年に注力する分野・業種、製品・販売戦略について、キヤノンマーケティングジャパン、エプソン販売、富士ゼロックス、リコージャパンの担当者に聞いた。
(司会・進行:週刊BCN 記者 山下彰子)
 

(左から)
リコージャパン 経営企画事業本部 オフィスプリンティング事業センター 販売計画室 室長
石丸 宏氏

ビジネス向けの複合機(MFP)とプリンターの販売企画、マーケティングを担当

キヤノンマーケティングジャパン マーケティング統括部門 プリンティング企画本部 ページプリンタ企画部 部長
政岡洋昌氏

国内のページプリンターのマーケティングを担当

エプソン販売 スマートチャージ SBU スマートチャージ販売推進部 部長
北村光一氏

「エプソンのスマートチャージ」製品のほか、レーザーを含むビジネスプリンター全般の代表として参加

富士ゼロックス エンタープライズドキュメントソリューション事業本部 EDS営業部 国内営業グループ グループ長
古賀 優氏

主に、国内向けのA3オフィスプリンターと複合機の商品企画を担当

市場全体は微減だが
主要メーカーは堅調に推移

――まずは18年を振り返り、市場感や取り組んだ施策とその成果について教えてください。

石丸(リコージャパン) プリンター事業全体としては伸長しました。個々の製品では、ビジネスインクジェットプリンターやA4モノクロプリンターは期待ほどではありませんでしたが、カラー製品全般が大きく伸び、A3モノクロプリンターも好調でした。当社は広域の保守サービスを提供しており、それが強みの一つになっていますが、大手のお客様を中心にカラー製品の入れ替え需要をうまく獲得できたことに加え、官公庁関係でモノクロ製品を中心に販売が伸びたことが好調を支えました。
 


 業種別の施策では、継続して医療系に注力していることと、昨年5月にカシオ計算機グループから譲渡されたPOP事業が加わったことで、新しいお客様にアプローチできるようなりました。プリンターだけでなくアプリケーションを絡めた販売に取り組みました。

古賀(富士ゼロックス) 18年より前から進めている施策ですが、働き方改革を中心としたテーマでお客様に提案をしています。

 働き方改革への取り組みは大きく二極化しています。大手企業は17年以前から働き方改革と絡めたオフィスにおける出力、スキャナー、IT機器への投資に理解や関心を持たれていますが、中堅以下の規模のお客様は、まだまだというのが実情でした。それが18年になって関心が高まり、就業規則を変えるだけでなく、ITの活用が欠かせないという認識になってきました。出力についても業務量に着目した、お客様のお困りごとに役立つ提案がかなり響いたと手応えを感じています。
 

 業種へのアプローチについては、自治体の情報セキュリティー強靱化のためのネットワーク分離に関連し、プリントの出力をどのように分けるべきかという要望が高まっていて、その対応について提案しています。また、医療、教育分野のお客様はさまざまな課題をお持ちになっているので、ドキュメントに対する関心は高いと感じています。

政岡(キヤノンMJ) 市場について、レーザープリンターは当社予測では微減と見ています。その多くはオフィス、OA用途ですが、以前から続くMFP化や集約の動きが影響しています。製品の耐久性が高まり、入れ替えサイクルが長期化したことも関係しています。また、全国的にPCの入れ替え需要が続く中で、予算がそちらに回っているようです。
 

 当社は、またまだ伸ばせる業種・業務はあると考えており、昨年はそこにアプローチを続けたことで、実績はほぼ維持することができました。インクジェットプリンターは、年賀状需要が減少している影響を受けて家庭向けは減少したものの、ビジネスインクジェットは堅調に推移しています。

 当社は、レーザープリンター30機種をラインアップし、インクジェットプリンターもラインアップを充実させて、あらゆるニーズに対応することを戦略に据えています。昨年9月には、「iNSPiC」というスマートフォン専用ミニフォトプリンターを発売しました。若年層や女性のニーズにお応えするなど、チャレンジングな取り組みも行っています。

北村(エプソン販売) 市場についてですが、レーザープリンターはわずかですが伸びていると見ています。ビジネスインクジェットプリンターは各社が新製品を投入しており、全体的に市場は活発だと考えています。
 

 当社については、レーザープリンターは他社さんのように大口案件ではありませんが、小口の案件をしっかりと維持しながら、インクジェットプリンターをアドオンし、ビジネスプリンター全体として成長することができた1年でした。

 施策については、既存のお客様をしっかり確保した上で、新規のお客様を獲得していくという方針は従来と同じです。具体的には、新製品の投入、案件の創出および受注活動、環境訴求の3点を重点に置いて取り組んできました。
A4モノクロレーザープリンター
LBP312i
シーンに合わせて高速プリント。高い生産性のA4モノクロコンパクトモデル
標準価格:7万9800円(税別)

・モノクロ 43枚/分*1
・モノクロ 3.2円*2
・幅409mmの省スペース設計
*1:A4片面連続印刷時
*2:ISO/IEC19752に基づき、A4普通紙に片面連続印刷した場合
 
オンラインサポートサービス
「NETEYE(ネットアイ)」

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業種・業務に特化した
特徴的な新製品を投入

――新製品に関するお話が出ましたが、18年に投入された新製品と戦略を教えてください。また、主力・中核製品についてもご紹介いただけますか。

北村 お話しした三つの施策のうち、新製品については定額従量料金で利用できる「エプソンのスマートチャージ」で、設置面積が従来機比の約64%という非常にコンパクトなA4モデルを9月に投入しました。これにより、従来だとスペースの制約で設置できなかったお客様にもお届けすることができるようになりました。

 また、エコタンク搭載モデルでも8月に新製品を投入したほか、新しいジャンルとしてビジネスインクジェットプリンターLモデル「PX-M886FL」も投入しました。この製品は、CPP(ページ単価)を非常に安価に抑えることができるので、印刷コストを気にされるお客様に好評です。

 エコタンク搭載モデルはモノクロモデルも展開しており、モノクロレーザープリンターを使用されているお客様の乗り換えを訴求できたと思います。

 2点目の案件の創出・受注活動では、文教、医療、小売りをターゲットにアプローチしました。例えば、「エプソンのスマートチャージ」による従来の複合機や大量印刷用の軽印刷機からの置き換えの集約提案が受け入れられました。その中心が毎分100枚の出力が可能な「LX-10000Fシリーズ」です。

 ビジネスインクジェットプリンターではレーザープリンターの置き換えに狙いを定めて積極的にアプローチしました。店頭でもビジネスインクジェットプリンターとレーザープリンターを並列展示する工夫をしてお客様にメリットを訴求する取り組みを行いました。

 環境訴求では、当社としてSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みと連動し、製品についても昨年から環境訴求を打ち出しています。インクジェットは低消費電力で、インク交換が少ないため、廃棄物を削減できるメリットがあります。「LX-10000F・LX-7000Fシリーズ」は平成30年度の省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しています。企業としてのSDGsへの取り組みと絡めて、環境性能の訴求を積極的にプロモーションしていきます。

政岡 先ほどお話したように、LBPはA3・A4のカラープリンターとモノクロプリンター合わせて30機種をラインアップしています。

 A3カラープリンターは、アプリケーションプラットフォーム「MEAP」の活用でソリューション展開できることが特徴です。主力製品は「LBP843Ci」ですが、売れ筋としては「LBP841C」があります。

 A4カラープリンターは、7機種をラインアップし、高耐久とコンパクトさを特徴とした製品設計になっています。売れ筋は「LBP7010C」です。

 A3モノクロプリンターは6機種をラインアップし、スピードを重視した製品構成になっており、43PPMまでの製品をそろえています。また、MEAPの搭載で、セキュリティーも訴求できるようになっています。

 A4モノクロプリンターは10機種をラインアップしており、主力は「LBP312i」です。コンパクト設計で病院などの設置スペースが限られる場所に提案できる製品です。

 インクジェットプリンターは25機種をラインアップしています。売れ筋は、高画質ハイスペックモデルの「TS8230」です。その他、特大容量タンクを搭載している「Gシリーズ」や、ビジネスインクジェットの「MAXIFYシリーズ」、A3コンパクト複合機「TR9530」などの販売も好調です。

古賀 オフィス向けの売れ筋製品としては、一昨年に発売したA4カラー複合機「DocuPrint CM310 z」があります。コンパクトで耐久性の高さを特徴とする製品で、昨年末に発表した機能強化したモデル「DocuPrint CM310 z II」では、業界初となるバーコードリーダーに対応しています。

 医療機関の受付窓口や、流通業の仕分け業務、申込書・アンケートなどの受け付けを行う店舗窓口などでは、さまざまな文書が扱われていますが、DocuPrint CM310 z IIはこうした場所での業務効率化を支援することができます。

 例えば、病院の受付業務では問診表や紹介状、同意書などのスキャンデータをPCに取り込み、文書の種類や患者にひも付くIDをファイル名に付けて保存することで分類、管理しています。そうした作業も、オプションの「バーコードScanキット」を使用すると、スキャン文書の保存時に自動で作業者や患者別のIDをファイル名に付けて保存できるので、容易に文書管理ができるようになります。

 A3モデルについては、40PPMの「DocuPrint C4000 d」など高速機へのニーズが高くなっています。POPやプレゼンテーション用に高画質を求めるニーズも多くなっていると感じます。

石丸 当社は全てビジネス向けで、ハイエンドからローエンドまでをラインアップしています。

 カラーレーザープリンターはA3が主力で、代表モデルは「SP C840/841シリーズ」です。特徴は、A3複合機と共通の10.1インチのカラー液晶タッチパネルを採用したことです。複合機と同様の使いやすいICカード認証ソリューションに対応したり、消耗品交換のビデオ動画や紙詰まり処理のアニメーションの表示が可能になりました。また、開発者も商談に加わることで、大手のお客様のカスタマイズニーズをしっかり取り込んでいます。

 6月には、このSP C840がベースの調剤業務用モデル「SP C840ME」を発売しました。オプションの4ビンプリントポストを装着することで患者さんごとの印刷ジョブを分け、薬袋の取り間違えを防止できるようになっています。

 A4カラープリンターでは、昨年4月に発売した「SP C352」が、コンパクトさを求められるPOP
制作や流通業のお客様に受け入れられています。A4モノクロプリンターでは、昨秋にコンパクトさが特徴の「SP 3700/2300L」と複合機の「SP 3700SF/2300SFL」を発売しました。売れ筋は上位機の「SP 4510」です。

 インクジェットプリンターでは、10月にA3機「SG 7200」を発売しました。流通業のお客様は長年同じ製品を使い続けられる方が多く、モデルチェンジで消耗品を変更しないで欲しいという要望が多いことから、当社ではあえてビックタンクモデルを出していません。

 また、カラーレーザープリンターを中心に、「M-PaC(エムパック)」というメーターチャージをビジネスモデル化したサービスを提供しており、そこにも注力しています。
高速ラインインクジェット複合機/プリンター
LX-10000Fシリーズ

100枚/分という別次元の生産性を高画質、低コスト、高い環境性能で実現
サービスプラン:機器別使用料、規定枚数までのインク、メンテナンスボックス費用、
保守サービスを含めて、月額7万円(税別)~の「オール・イン・ワンプラン」など
お客様に応じた三つのプランを用意
・カラー 100枚/分、モノクロ 100枚/分*1
・給紙枚数最大6050枚*2
・解像度600×1200dpi
・自動両面印刷
*1:A4片面連続印刷時
*2:用紙カセット1~4:最大600枚、MPトレイ:最大150枚、
大容量給紙ユニット(オプション):最大3500枚
「LX-10000F・LX-7000Fシリーズ」は
平成30年度の省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞
週刊BCN+ 読者アンケート
「プリンターメーカー座談会に関するアンケート」
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_printer_rt2019

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