富士通グループの1社で運用・保守サービスに強い富士通エフサスにとって、今年度(2011年3月期)は攻めの年となる。不況は運用・保守サービス事業にも例外なく押し寄せ、富士通エフサスの昨年度業績は減収減益に終わった。ただ、その間にムダ取りを進め、業務プロセスを改善。新たな成長分野に狙いを定めて準備を進めていた。主力の保守サービスは中長期的にみて成長は見込めない。そんななか、1年前にトップに就いたサポートビジネスのプロは、何に活路を見出したのか。
104の「ムダ取りプロジェクト」
──情報システムの運用と保守サービスは、システムインテグレーション(SI)に比べ、不況の影響が遅れる傾向があります。昨年度の業績はいかがでしたか?
関根 ご多分に漏れず、当社も不況の影響を受け、昨年度(2010年3月期)は減収減益でした。ご指摘の通り、運用や保守サービスは、情報システムのライフサイクルの後工程ですから、SI商談があって、その後にニーズが出てくるもの。景気変動の影響を受けるのは、機器導入から半年ほど経ったあたりからです。
09年度の下期から、本格的にユーザー企業のIT投資抑制の影響を受け、売り上げが伸びにくくなりました。「インフラインテグレーション」「運用サービス」「メンテナンス」のセグメントすべてで悪影響を受けて、伸びたのは運用サービスが前年を数ポイント上回った程度。厳しい年でした。
──今でこそ、SIや運用サービスが育っていますが、富士通エフサスはもともと保守サービス(メンテナンス)が得意な会社で、主力は保守サービスですよね。保守サービスは、料金が「ハードの価格×一定の割合」で決まる特殊な仕組みです。ハードの価格が年々下がり続けているだけに、景気変動に関係なく、保守サービスは厳しい環境ではないですか?
関根 保守サービス事業は、年率8%の比率で下がっていくとみています。昨年度もだいたいこの数字で低下し、今後もしばらくはこの比率で落ちていくでしょう。ただ、だからといって富士通エフサスが成長できないわけではありません。保守サービスの減退は、5~10年前から傾向が出ており、事業計画には織り込み済み。だから、保守サービスだけでなく、情報システムのインフラ系SIや運用サービスを強化し、今のセグメントである三本柱で事業を展開しているのです。
──だとすると、今後のキーポイントは「インフラインテグレーション」と「運用サービス」にあるわけですね。社長に就任された昨年6月以降、現在まで進めてきた施策を聞かせてください。
関根 二つの事業セグメントに限った話ではありませんが、業務の“ムダ取り運動”に力を入れてきました。昨年度は、ピーク時に比べて仕事が減ることが予測できたので、筋肉質の企業体質を築くためのよい機会と捉えました。サービス品質の向上と顧客対応スピードの強化、コスト削減をテーマに、「ワークアウト活動」と題して合計104のムダ取りプロジェクトを動かしました。
成果が出るのは今年度ですが、顧客対応スピードは相当高まったと思いますよ。これまで外注していた仕事を内製化することで、外部仕入額を5%削減し、財務体質も強化することができました。新しい挑戦に挑むための企業基盤の強化に力を入れてきたのです。
──売り上げを伸ばすための施策としては、どんな手を打っておられますか。
関根 内部の組織強化だけでは、成長するには限界があります。新たな売り上げをつくる必要がある。そこで、戦略ビジネスを三つ定め、そのための組織を今年度期首にそれぞれ設けました。それが、「クラウド」「環境」、そして「マルチベンダー対応」です。各分野で「ビジネス推進室」を設立し、100人ずつの人員で組織しました。
保守事業は年率8%で下がるでしょう。
でも、成長できないわけではない。今年は三つの重点事業で攻めます。
まずは仮想化。年度中に300件は獲りたい。
[次のページ]