直販、大手向け事業も継続
──全パートナーに通用する支援策はないのが当然と思いますが、もう少し具体的なプランを例示してください。
古川 一つは弾出しです。パートナーが売りやすい商品を開発し、それを提供することに尽きる。今回の戦略の一環として、富士通から中堅企業向けERP「GLOVIA smart」の企画・開発部隊約130人をFJMに移管しました。つまり、メーカーとしての顔をもつことになったのです。ユーザーの要望に沿って「GLOVIA smart」を進化させ、パートナーが売りやすい弾に仕立てます。また、パートナーがもつソリューションを「GLOVIA smart」に組み込んで販売することも考えています。
そして、もう一つが、当社のコンサル営業部隊の提供です。FJBは、顧客の課題を聞いて、それに合わせた提案を手がけることができるコンサルタント型営業スタッフの養成に数年前から力を注いでいます。「黒帯」や「白帯」といった形でランクを付け、それなりの人数が揃っています。このチームのスタッフを、パートナー企業の営業現場に同行させて、ともに提案することも考えています。
──パートナー支援を手がけるとなると、従来の直販はどうなりますか。FJBは大手企業のユーザーを多く抱えていますが、これについては?
古川 直販は手がけます。大手企業のユーザーも捨てません。
──となれば、パートナー企業と市場でバッティングする可能性があります。
古川 直販をやめない理由をまず説明させてください。ユーザーの要望や課題を知らずにパートナー向けの支援プランを立案しても、マッチしないでしょう。やはりユーザーの声は、直接聞かなければなりません。ユーザーとの接点をもつ意味で、直販は非常に重要なんです。「直販はやりません。パートナー支援に徹します」というのは、メッセージとしては分かりやすいかもしれません。ですが、それでは実のある支援プランは提供できない。
では、パートナーのほうから提案している企業に、FJMが営業をかけた場合はどうするか。その場合は、FJMは完全に後方支援に回ります。「本当にそうなのか?」と思われるかもしれませんが、これは直販部隊にも再三再四、話しています。一つひとつ実例を積み重ねて、パートナーの信用を獲得していくつもりです。
それに、パートナーとぶつかるケースが多いかというと、実際はそんなにないのでは、と思っています。中堅企業市場で、富士通とFJB、そして富士通パートナーの合計シェアは、実は全体の10%ほどなんです。90%は富士通陣営以外のITベンダーが獲っている。この状況を考えれば、バッティングするケースはあまりないとみています。
──大手企業を捨てない理由は? 同じような戦略を採るNECネクサソリューションズは、中堅に集中するため、大手企業向け事業部隊をNECに移管しています。
古川 大手企業を切り離す選択肢もありました。ただ、先進的な技術の導入プロジェクトをいち早く経験できるのは、やはり中堅よりも大手企業向けビジネスです。先端事例の経験を積んでおけば、中堅企業向けビジネスに後々に生かすことができる。だから、残したんです。富士通からのまた聞きでは、限界がありますから。
──FJMはどんな機能をもつ企業になるのか。改めて教えてください。
古川 三つの機能に大別できます。一つは企業規模を問わずソリューションをユーザー企業に届ける直販機能、二つ目が中堅企業向けビジネスをパートナーとともに推進するパートナー支援機能、そして最後が「GLOVIA smart」を中心とした商品企画・開発機能です。この三つの機能で組織を分け、富士通グループの中堅企業向けビジネスを引っ張る存在として、10月1日から新たなスタートを切ります。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「富士通マーケティング」という社名が発表された時、記者は少し面食らった。FJBのイメージと、中堅企業向けビジネスの強化戦略、そして進む方向性から、「マーケティング」という言葉が結び付かなかったからだ。業界の反応を探るため、Twitterでその一報を流したら、やはり違和感を感じているフォロワーが目立った。
古川社長は、新社名に込めた思いをこう語っていた。「市場調査会社や販売会社のようなイメージをもたれてしまうとか、確かに異論はあった。ただ、市場を知ってユーザーの要望に耳を傾け、それに合わせた商品を企画・開発し、ユーザーに届ける。このビジネスの基本を表す言葉は『マーケティング』以外にないと考えた」そうだ。
議論を重ね、紆余曲折を経た末に生まれるFJM。その新社名が定着し、違和感を感じなくなった時、富士通グループのSMBビジネスは面白くなっているはずだ。(鈎)
プロフィール
古川 章
1950年1月31日生まれ。1973年3月、早稲田大学第一文学部卒業後、同年4月に富士通入社。06年6月、経営執行役(兼)金融ソリューションビジネスグループバンキングソリューション、農林水産担当。08年6月、経営執行役(兼)地域ビジネスグループ副グループ長(兼)関東甲信越営業本部長。09年6月、執行役員常務(兼)地域ビジネスグループ長(兼)中堅ビジネス改革推進室副室長。10年4月1日、富士通ビジネスシステム(FJB)の代表取締役社長に就任。
会社紹介
1947年4月23日の設立。資本金は122億2000万円で従業員数は連結で約3400人。富士通グループの中核システムインテグレータ(SIer)として成長し、99年に東証1部に上場した。富士通との連携を強めるため、昨夏に上場を廃止して富士通の完全子会社に。富士通が掲げた事業戦略に基づき、2010年10月1日に「株式会社富士通マーケティング」として再スタートを切る。