ITホールディングスグループのTIS中国現地法人である天津TIS海泰インフォメーションシステムサービス(天津TIS海泰)は、地場の金融大型案件で初受注のめどをつけた。今年4月、同業他社に先駆けて自社データセンター(DC、用語の説明は16面)を天津市内で全面開業させてから半年あまり。これを受けて当初計画を前倒ししてのDC設備の拡張準備を進める。現地法人を率いる丸井崇総経理にうかがった。
前倒しでDC設備の拡張を進める
──今年4月、中国・天津に約1200ラックの自社DCを、主要日系SIerとして初めて全面開業させたわけですが、現時点でどのくらい埋まっていますか。
丸井 全面開業して1年間で第一期施工分の200ラックの販売を予定していましたが、予想より半年早く完売できるめどが立ちました。11年4月に向けて、第二期施工分として200ラックの追加を早々に決める段階に入っています。
天津DCは、建物はすでに竣工していますが、内部のラックや電源などの機材については、200ラック=約500m2ずつ6期に分けて施工する計画です。全面開業から5~6年で1200ラックすべてを稼働させる計算ですね。初期の200ラック完売のめどが立ったことは、当社グループの中国ビジネスにとって、幸先のいいスタートといえます。
──どういうふうにして販売したのですか。
丸井 具体的な顧客名はいえませんが、日系大手製造業のコンシューマ向けウェブサービス、欧米系製造業の業務システム、そして、中国地場の中堅保険会社などです。ほかにも案件はありますが、すでに受注している、あるいは受注確度がきわめて高い大型の案件を含めて、日・欧・米・中とバランスよく営業できたと自負しています。
日系企業はTISグループで獲得した案件ですが、中国地場と欧米外資の企業はビジネスパートナーと組んだ案件です。TISグループは、ご存じの通り、クレジットカードをはじめとする金融業に強いSIerですので、中国地場で同分野の案件を手にできたことは、今後のビジネス拡大にとって強い追い風になります。
──中国からみれば“外資”である日系SIerが、他の外資に先駆けてDCを開設できたという事実だけでも驚きなのに、中国地場の金融案件を獲れたとなれば、これは快挙ですね。
丸井 常に変化するのが中国でのビジネスですので、まだ気は許せません。ほぼ受注が決まったといっても、実際に当社DCのなかに入っていただき、売り上げが安定して立つようになるまでは、確定的なことは何もいえないと胆に銘じています。
──開業からこれまでのビジネスのなかで、最も苦労したことは何ですか。
丸井 それはもう、地場の金融案件の獲得です。当社天津TIS海泰は、中国全土に大規模な営業部隊を抱えているわけではないので、原則として中国地場SIerなどのビジネスパートナーの力を借りたり、ITホールディングスグループの営業力を活用しています。金融案件についても、ビジネスパートナーを通じてアプローチしていたものです。
今回の顧客についていえば、顧客が情報システムを運用するにあたり、どの方法が最も合理的かというアセスメントを行い、そのうえで当社DCの活用がどれほどのメリットがあるのかを浮き彫りにしました。アセスメントの結果を踏まえて、本格受注に結びつけるアプローチです。
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