既存の販社との協調強化がカギ
──ビジネス領域の拡大が進行中というわけですが、販路を増やすなどの強化策をどう考えておられますか。
スチーブンソン 販路の拡大は必要だとは思いますが、基本的には既存の販売パートナーと協調関係を深めていくほうが、当社が描いている構想をより早く実現できます。というのも、販売パートナーの多くは新しいビジネス領域に進もうとしているからです。そのような販売パートナーと密にコミュニケーションを図ることが、新しい領域での成功につながります。
新しいパートナーシップの観点でいえば、SIerよりも、むしろメーカーとのアライアンスが進むとみています。その一つとして、現在、日本HP(日本ヒューレット・パッカード)さんとアライアンスを組んでおり、当社が提供している業務アプリケーションにコミュニケーション機能を追加するためのソフトウェア開発環境「ACE」と、日本HPさんのアプリケーション統合製品などの連携を進めています。これは、ワールドワイドで展開しているアライアンスなのですが、日本に限っていえば、この連携製品をお互いの販売パートナーに売ってもらうという仕組みを構築する予定です。例えば、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)さんは、当社と日本HPさん両方の販売パートナーで、この考えに賛同してくれています。
──市場環境について、どう捉えていますか。
スチーブンソン コールセンター市場に関しては、着実に成長しています。とくに金融業でコールセンターに対する投資が戻っています。まだまだ先行きが不透明といわれている市況感のなかで、明るい兆しが出ているといえるでしょう。これは、コールセンターを「成長するために活用する」といった考えが多くの企業で顕著に現れているからです。そういった点でも、コールセンターは手堅くビジネスを展開したい。UCは、これからの成長市場ですので伸びることは間違いないと思っています。
──クラウドに関しては?
スチーブンソン 同じ質問をよくされますが、個人的にはクラウドは決して「オールマイティ」ではないと思っています。日本で広めるうえで、決定的な弱点となっているのが、「カスタマイズできない」ということです。ただ、無視するわけにはいかない。とくに、販売パートナーがクラウドを提供するケースが出ている。そこで、あくまでも当社は販売パートナーがビジネスを拡大していくうえで、「縁の下の力持ち」として販売パートナーのDC内におけるネットワークインフラの最適化などに寄与していきます。
──業績については、どのような見通しですか。
スチーブンソン 直近の四半期(10年7~9月)は前年同期比30%増でした。通期も、引き続いて伸びを見込んでいます。社長に就任した当時、「売り上げを3年間で今の3倍に引き上げる」という目標を掲げました。このままいけば、その目標を十分に達成できます。
・こだわりの鞄 TUMIのバッグ。「耐久性にすぐれている点が気に入った」という。5年間、愛用している。鞄の中身は、PCやスマートフォン、通話用イヤホンなどデジタル機器がメインで、「紙の資料などは極力持たない」とか。「名刺は入っているけどね」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
以前、スチーブンソン氏が日本アバイア以外のベンダーにいた時に、何度か取材したことがあった。日本アバイアで取材したのは、今回が2回目。1回目は就任当初で、あまり多くは語ってくれなかった記憶がある。ただ、今回は方向性がみえているからか、さまざまなことを語ってくれた。日本語が堪能で、数多くの外資系メーカーの日本法人で活躍してきた。日本アバイアについては、「久々にIT業界で成長のポテンシャルがある企業と実感した」という。社長就任前から感じていたそうだ。
同社は、基本的にハードメーカーであるものの、プラットフォームなどソフトに重きを置いている。そういった点では、ハードとソフト両方のノウハウをもつスチーブンソン氏が社長を務めているのに納得がいく。「確か就任当初に、売上規模を3年後に今の3倍に引き上げるって伝えましたよね。今も変わりません」。自信たっぷりのオーラが感じられる。(郁)
プロフィール
ロバート・スチーブンソン
(ロバート・スチーブンソン)米国マサチューセッツ州ボストン出身。BEAシステムズの社長として、複数の日本企業との戦略的提携を果たしたほか、EMCジャパンでパートナーセールス部門担当常務取締役としてチャネル・セールスやソフトウェア事業の指揮を執る。その後、デルのラージ・エンタープライズ事業部戦略担当ゼネラルマネージャーとして、ソリューション販売の組織に転換することに寄与。2010年4月26日、日本アバイアの代表取締役社長に就任。
会社紹介
米アバイアは昨年末、ネットワーク機器メーカーであるノーテルのエンタープライズ事業を買収。これによりUC関連の製品・サービスをさらに強化することになった。SIPサーバーなどコールセンター向けに製品・サービスを提供することに関しては、国内市場でトップシェアを確保しており、この市場での確固たる地位を維持していきつつ、今後はUC分野でのシェア拡大を図っていく。