日立ソリューションズは、日立製作所グループで情報・通信システム事業の成長エンジンの役割を担う。低成長が続く国内情報サービス市場にとどまることなく、世界市場におけるSIやソフト・サービス分野の競争力を向上。日立製作所は、情報・通信システムセグメントの海外売上高比率を直近の約22%から35%へと拡大する目標を掲げており、日立ソリューションズは情報サービスビジネスで最前線に立つ。
SI・サービスの中核的会社に
──日立ソリューションズが発足して2か月がたちました。統合は順調に進んでいますか。
林 計画通りに進んでいます。旧日立ソフトウェアエンジニアリングと旧日立システムアンドサービスで、事業所が異なっていましたから、今はそれらを同床化、つまり勤務地の再編を進めています。年内には引っ越し作業を終え、年度内には情報システムを統合し、2011年4月からは名実ともに一つの会社として成長させます。
──統合による規模のメリットを生かせるのは、これからだと思いますが、まずは直近の業績を教えていただけますか。
林 旧2社の単純合算ベースでの上期(2010年4~9月期)連結売上高は、前年同期比で減収、利益面ではやや減少と振るいませんでした。旧2社のうち、日立製作所と連携したビジネスの売り上げ構成比がざっくり半分ほどあって、この領域が厳しかった。
製作所グループ以外に向けたビジネスも楽観はできないものの、今下期の半期ベースでは経営統合の効果を生かして増収増益を成し遂げたい。統合後で初めての通期となる来年度(12年3月期)は、年間を通じて増収増益を達成していきます。
──日立製作所の情報・通信システムセグメントでは、2015年度に海外売上高比率を直近の約22%から35%、実数で8000億円規模へ拡大する方針を掲げています。グローバル進出は、日立ソリューションズを発足させた目的の一つだとうかがっています。
林 国内の情報サービス市場が成熟した今、グローバルを目指すのは自然な流れです。ただ、製作所の情報・通信セグメントの海外ビジネスの中身をみると、ストレージとATM(現金自動預金支払機)をはじめとするハードウェア商材が多くを占める。つまり、付加価値を高めるSIやソフト・サービスといった情報サービスの比率が低い。この領域を伸ばさない限り、いつまでもハード販売主体の“箱売り”に甘んじたままです。
当社は、日立グループにおけるSIやソフト・サービスを担う中核的な事業会社だと自負しており、グローバルの情報サービス領域でも成長エンジンになることが求められています。当社は直近の連結売上高の単純合算ベースで2608億円と、国内SIerでもトップグループの規模となり、海外進出の力がより増してきました。
──重電グループの強みを生かし、街全体をインテリジェント化するスマートシティの取り組み強化を日立製作所は示しています。中国など成長めざましい地域への進出を念頭に置いているようですが、御社ではどのように対応されますか。
林 これまで旧日立ソフトが電子黒板やストレージ関連ソフトを主に欧米で販売し、旧日立システムが北京と上海に70人ほどのSEを配置してきました。直近の海外におけるビジネス規模としては、両社合算値でも売り上げ全体の数%を占める程度ですが、それでも着実に実績を伸ばしています。将来的にはこれを20%程度に高めるのが当面の目標です。
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