市場環境は不透明、元社長との確執など、決して順風満帆な環境でバトンを受けたわけではない。しかしながら、山本正已社長の表情には自信が溢れている。2010年度は前年度比2倍の営業利益確保を目指し、11年度には海外売上比率40%の確保に挑む。キーワードは「攻めと挑戦」。構造改革の成果が出始め財務体質は改善したと断言。攻め続ける覚悟だ。
09年度比2倍の営業利益確保に向けて
──2010年度(2011年3月期)の営業利益目標は、09年に比べて約2倍の1850億円。挑戦的ですが、達成に向けた感触を教えてください。
山本 上期(10年4~9月)は計画値を上回り、ある程度満足できる成績でした。ただ、想像以上の円高、米国の消費低迷、欧州も回復しておらず、日本は家電エコポイントやエコカー減税などで前半は盛り上がりましたが、後半は元気がない。経済を取り巻く環境が世界的に不透明で、上期の勢いが感じられなくなっています。1~3月の3か月が正念場ですね。
──混迷の時期、社長に就いてから約半年の間に何を大切に経営されてきましたか。
山本 大きくは二つです。そのうちの一つは、歴代の社長が推進してきた構造改革の手を緩めることなく、強いビジネス構造をつくること。売り上げは飛躍的に伸びなくても、利益が出せる体質づくりです。そしてもう一つが新たなビジネスの創出です。
──新たなビジネスの創出で言えば、クラウドは欠かせないキーワードになりますね。
山本 水道の蛇口をひねれば水が出るように、ICT(情報通信技術)はいつでもどこでも利用でき、使った分だけ料金を支払う方法が今後ますます増えてくる。それを実現するのがクラウドです。確かに、今後のICT産業にとって欠かせない要素になります。
──それでも、「クラウドで儲かった」という声はなかなか聞きません。クラウドはビジネスとして成り立っていますか。
山本 もちろん。他社は具体的な事例がないようにみえますが、富士通はプライベートクラウドの構築・運用事例が具体的にいくつも出てきました。SaaSも形になり始めています。競合他社を圧倒的にリードしていると思いますよ。
──富士通のパートナーにとっては、クラウドがどんなメリットをもたらすのでしょうか。
山本 今後を考えれば、ICTビジネスでクラウドは欠かせない。そんななかで、クラウドを一から始めようとすれば、投資も必要になります。パートナーには富士通のクラウド環境を提供しますので、大幅な投資の必要はない。効率的にクラウドビジネスを立ち上げることができるのです。ですから、パートナーのみなさんには、クラウドのインフラは心配せずに、自社のユーザーにクラウドで何が提供できるかを考えてもらうだけでいいのです。
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