ハイエンドに強いストレージメーカーのEMC。そんなイメージを払拭しようと、EMCジャパンがチャレンジしている。企業買収を通じて得た製品・サービスと、群雄割拠といわれるミッドレンジ(中堅企業)以下のマーケットに向けて投入した新製品の拡販を進めている。副社長からトップに昇格した山野修氏は、2011年度を「新たなステージに上がる年」と位置づけ、新たなEMCジャパンをつくろうとしている。
データが増えればストレージも伸びる
──米本社の昨年度(2010年12月期)の純利益(GAAPベース)は過去最高でした。通期で前年度比75%増、第4四半期は61%増と驚異的です。データが増えれば、ストレージは必須となるだけに、不況知らずですね。
山野 昨年の前半までは苦労しましたよ。ただ、後半からは急回復したといっていいでしょう。サーバーやアプリケーションは、極力投資を抑えて、既存システムを我慢してそのまま使うという選択肢があります。ですが、ストレージはそのようにはいかないケースが多い。
ユーザー企業の情報システムは、たとえ不況であっても日々データを生成していますから、投資を抑えれば貴重なデータを保存する場所がなくなってしまいます。ユーザーはストレージに対する投資をまず考えてくれます。だから、ストレージは他のIT機器よりも急速に回復し、もち直す時期も早いのかもしれません。恵まれた環境ではあります。
──なかでも好調な分野はどこでしたか?
山野 「データドメイン」と「アバマー」というバックアップ関連製品はかなり好調で、前年と比べれば2倍以上の実績を残しています。日本のユーザーはバックアップに苦労しているケースが結構多いんです。データの重複を除外する先進技術を搭載した両製品は非常に高い評価を受けていますね。
──社長就任は今年の1月1日ですが、その6か月前に副社長に就いておられました。満を持してのトップとみています。
山野 私が1999年に社長に就いたRSAセキュリティは、06年にEMCジャパンの傘下に入っています。その当時、会社は別(11年1月1日付で合併)でしたが、その頃からEMCジャパンに毎週来て、非常勤役員のようなかたちでEMCジャパンの経営に携わっていましたからね。スムーズなかたちで経営陣に入ることができていると感じています。EMCジャパンもRSAセキュリティも、本社は同じ米国のボストンで、企業文化も似ています。違和感はありません。
──改めて、EMCジャパンのトップとして力を注ぐことを教えてください。
山野 三つあります。データ量が今後も増えることは間違いありません。「ビッグデータ」といいますか、超大容量のデータを効率的に管理・運用するためのソリューションを提供することが一つ目。現時点でもこの分野では唯一の存在だとは思っていますが、今以上に強いポジションを確立します。二つ目が、ストレージだけではなく、ITインフラを提供するベンダーになり、それを広く認知してもらうこと。数々の企業買収を通じて、EMCはもうストレージベンダーという枠組みでは語れない製品・サービス群を保有しています。それを広く知ってもらい、ユーザーに届けたいと思っています。そして最後が、製品の販売だけでなく、ソリューションとサービスも含めたITベンダーとしての地位を確立することです。
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